2000年12月6日
株式会社良品計画

弊社ソファに関する「日経トレンディ」の訂正文

2000年9月4日発売「日経トレンディ」10月号「低価格ブランド品質調査」にて掲載されました弊社「無印良品」ソファへの評価(70_71頁)について、弊社は「日経トレンディ」を発行する日経ホーム出版社・日経トレンディ編集部に対しまして、申し入れを行いました。以下、日経トレンディ側のご了承が得られましたので、訂正文の掲載までの経緯の一部を報告させていただきます。

1.構造部材について

<日経トレンディ掲載事項>

「部材の組み方など基本構造は良い。値段を下げるため、安い木材を使っているようだ」
(藤元氏)

<掲載内容に対する弊社の見解>

安い木材を使っているようだとの間接的表現について根拠の提示が無い。何を基準に言っているのか確認したい、確かにメランティー材は高級材ではないが高級なイタリア製ソファですらスプルース、チップボード、ファイバーボード、パイン材などで、当社のメランティー材単一種指定、人工乾燥(含水率14%未満)の無垢材や合板を「安い木材」とする根拠が知りたい。

<上記弊社見解に対する藤元氏からの回答>

「『安い』と安易に表現してしまったことについてはお詫び申し上げます。無垢材の強度を損なわないために荒削りのまま使用しているとは分かりませんでした。私どもでは構造材はしっかりと厚みを確保し、切込みを施した上で、噛み合わせる「ほぞ組み」によってソファを作っています。そのような私どものやりかたが正しいのかどうかわかりませんが、そうしたやり方と比較しました。」

<藤元氏の回答を受けて>

「安い」との表現についての謝罪及び、比較評価の基準(個人的な価値観)を表記いただいた氏の回答については納得できる。藤元氏の謝罪と、評価の基準が記事内容の中で表現できていない部分について日経トレンディ側の見解を要求したい。

<日経トレンディからの回答>

「木部フレームについて、部材が粗削りのまま使用されていること、部材の長さがまちまちであることなどから藤元氏、編集部ともに端材を利用していると判断しました。確認作業を怠ったまま、藤元氏のコメントを掲載いたしましたことについてはお詫び申し上げます。


2.クッション材について

<日経トレンディ掲載事項>

「座面、背もたれともにやわらかすぎる。体が沈む。」(笠松氏)
「安価なウレタンは弾力性に乏しく、へたりが早い」(藤元氏)

<掲載内容に対する弊社の見解>

全く納得できない内容である。ウレタンの評価を確認する上で、硬軟度のみで安易に評価している。座り心地の良し悪しなど担当者の主観的批評に文句はないが、安価と論じる点には根拠提示が無く、評論家的であり専門家とは言えないのではないか。一般常識として、ウレタン部品はソファの構成部材として重要な部材であり、当然、当社も配慮している。現状32kgの高比重ウレタンを座面に、22kgウレタンを背面に使用しており、マレーシアの初期生産時は座面24kg・背面22kgであり、アップグレードしている。昨年実施した仕様の見直しではモニタリングを実施した結果、柔らかい座り心地を求める意見が多かったため、柔らかいウレタンを採用した。背面ウレタンの軟化で本体の木部フレームへの背当たりを防ぐため、ウレタンの厚みを25mm増やして現行の柔らかい座り心地を実現した。(20kgの砂袋を4000回繰り返し落下させる試験を実施)

売価を抑えるために、見えない部分でコストを削減しているとの表現は全く不本意であり、スペックダウンは一切行っていない。コストダウンできる要因としては、1)発注数量の増大における材料調達コストの軽減、2)生産性の向上、3)協力関係によるプロフィット単価の低減、が挙げられる。

ウレタン比重の測定に関しては、ウレタンを規定サイズに切断して重量を測定するだけで判るので、是非試していただきたい項目であった。専門家であるならば、それ位の検査をしてからコメントを出すべきであろう。また、これも一般常識であるが、「低比重で硬度が高いものが一番へたり易いウレタン」であり、「軟度が高いものがへたり難いウレタン」である。「低比重で硬度が高いもの」が変質・変形しながらへたる過程を誤解され、「柔らかいウレタンがへたる」という、表層的で先入観を感じる評価である。

また、ウレタン製品は発泡工場での管理が難しい工業製品で、マレーシアでは連続発泡機等の高性能な機材の存在の品質管理能力も評価できるレベルであり、ある程度のインフラが整備された環境だと判断し、ソファの生産地に選定している。(また、ウレタン発泡工場から納品されるウレタンはロット毎に物性データを提出させて管理している。)

<上記弊社見解に対する笠松氏からの回答>

「座った瞬間の柔らかさを重視するという考え方は分かります。しかし、実際に座ってみると体がかなり沈みます。座り心地を大切にするというのは理解できますが、あれほど体が沈むと正しい姿勢を維持することができません。ある程度の時間座っていると腰などにかなりのストレスを感じます。」

<笠松氏の回答を受けて>

記事内容(「座面、背もたれともに柔らかすぎる。体が沈む。」)から今回の回答内容の意図が一般消費者に伝わるか?

ソファを応接セットのように扱うか、横になってくつろぐなどの機能を重視するかは、設計思想の違いであり、論点としては重要だが、記事内容からは全く読み取れない。

<上記弊社見解に対する藤元氏からの回答>

「安価な・・・」と表現してしまったことについてはお詫びいたします。しかし、ソファ作りでは、クッション材は複数の素材を組み合わせて作るべきだと考えます。そうした微妙な工夫をすることで、座った瞬間でも、長時間座り続けた後でも快適と感じられるソファが作れると思っています。

<藤元氏の回答を受けて>

「安い」との表現についての謝罪があり、行き過ぎた表現だと認めていただいている。しかし、笠松氏の回答と同様に、今回の記事内容から回答の意図が一般消費者に伝わるか?評価の基となる設計上の価値観、見解、論点の違いは今回の回答のような内容が記事に反映された上で受け入れられ、また、消費者にも伝わるものであると考える。また、「へたりが早い」とのコメントに対し、回答が得られていない。

以上、両氏からの回答により、弊社は、以下に述べるウレタン製品を評価するにあたっての技術的側面の欠落と販売方法への考え方についての認識の違いを指摘する。

  1. 張替えに関するコスト要因に対する認識の欠如
  2. 当社ではクッション部分(経年劣化が不可避のウレタン部品)を交換可能な設計をしている事
  3. 別売りクッションを用意している事
  4. カバーリングシステムを採用する合理性

日経トレンディ側に、「商品を比較評価する」といった企画意図における情報不足という点と記事内容が配慮に欠けていた点について、見解を求める。

<日経トレンディからの回答>

1)クッション材(笠松氏の回答)について

「ソファの本来の目的は座ることと考えます。製品の品質を比較、調査をするという記事の趣旨から、座り心地に関し、3つのソファを比較、評価した笠松氏のコメントを掲載したことに問題があるとは考えません。」

2)クッション材(藤元氏の回答)について

 「安価なウレタンは弾力性に乏しく、へたりやすい」という藤元氏のコメントはウレタン全般に関するコメントであり、個別評価の部分に掲載したのは不適切でした。お詫び申し上げます。」


3.張り材について

<日経トレンディ掲載事項>

「カバーをかけて使うようになっているが、張り材が薄く、磨耗しやすい」(藤元氏)

<掲載内容に対する弊社の見解>

全く意味不明の表現であり、むやみに読者に対し、弊社商品の品質面に不安を与えている。張り材の仕様を以下に示すが、アンダーレイヤーの生地としては、オーバースペックとも考えられるものを使用している。当社のソファはカバーを別売りにしてご使用いただく商品であり、評価担当者の方も何を比較していいのか混乱していたのではないか。

組成:綿65% ポリエステル35%・・・JIS L 1030
引き裂き強さ:縦4.8/横3.3(kgf)
糸番手:縦20番、糸横20番糸・・・JIS L 1096
磨耗強さ:133回・・・JIS L 1096D法
糸密度:縦83本/横53本(1インチ四方)・・・JIS L 1096
収縮率:縦2.8%、横0.6%

  • 過去の輸入品で当社も綿布を使用していた時期もあったが、綿布が持つ保水力がカビ、臭気の発生に起因した事例を踏まえ、TC素材に変更した経緯がある。

<上記弊社見解に対する藤元氏の回答>

「カバーと別に購入することについては理解していました。私としては、カバーを使用しないと、薄いので磨耗してしまうでしょうとお話ししたつもりです。」

<藤元氏の回答を受けて>

本回答については、記事内での藤元氏の発言の取り扱われ方が問題であると思われる。記事内容からは、張り生地がアンダーレイヤーであることが全く読者に伝わっておらず、読者が誤った認識をもつと思われる。日経トレンディ側の見解を求めたい。

<日経トレンディからの回答>

「張り材について、コメントを掲載する上で、表現が不適切でした。」


4.総評部分について

<日経トレンディ掲載事項>

「いずれの商品も張り替えを繰り返しながら、一生使い続けていくような商品ではない」(藤元氏)

<掲載内容に対する弊社の見解>

ソファの張り替えを受ける国産メーカーがどの程度あるのか?どのような商品が張り替えを繰り返しながら一生使える商品なのか?
又、椅子張り専門の工場もしくは工房に持ち込んだ時、どの位の張り替えコストを要するのか、読者には現実が伝わらない、不誠実ではないか?
高額なソファは張り替えが出来るような表現について全く疑問、張り替え作業は張り材を剥がし、詰め物を修理して、型紙を起こし、縫製し、張り込む大変な手間と技術を要し、汗や汚れの染み込んだ詰め物に接する汚れ仕事で物流面も含めると高コストな行為である。
当社の商品でも高級なデセデ社の商品でも張り替えについては同じ事で「張り替えを繰り返し一生使い続ける」との行為と商品価値、品質とは別の問題である。張り替えが出来ない、する、しないの問題が「使い捨て商品」「粗大ゴミ化」「環境に配慮していない」につながるとは短絡的な表現である。
「環境に配慮する必要」との重大な課題に触れた記事内容において、張り替え行為でソファーと言う“物”を評価する事に疑問を感じる、メルセデスを修理しながら20年乗るユーザーもいるが国産車を丁寧に20年乗るユーザーもいるだろうし、“物”を評価しユーザーに伝える意図を持った出版物の記事としては不適切な記事である。
記事の内容に全く方向性や論点が見えず、読者に誤解を与える物ではないか。
尚、ソファに使われる素材で再利用出来る素材とはなにか、材料を安く抑えなければ再利用出来るのか、今後の開発のためにも是非教えて欲しい。

※お安く・長く・安心にご利用いただける当社の工夫例を知っていただきたい。

(1) カバーリングシステムを採用(張り替え等の手段よりも合理的又経済的な最善な手法として発売以来一貫して採用している)

(2) 鋼製バネを採用(ウェービングテープの伸び、酸化劣化を考慮・…取替が困難な部品なのであえてそうしている)

(3) 必要最低限の部材で強度、耐久性を保持するために随所に補強部材を使用している・・この部分が継ぎ接ぎと誤解されたかもしれませんが

(4) 木部フレームには接合部に接着剤を使用し鋼性を強化、耐久性を配慮している。

(5) 重要部位にボルト/ナットを活用した接合方法を採用している。

(6) プレーナをあまり強くかけない、無垢材の厚みを確保するためにあえて粗削りままにしている、見た目は悪いが工程も省け、材を傷める危険も回避出来る。

(7) 最大限の高比重のウレタンを使用(座32kg・背22kg)

(8) クッション部分の痛みは避けきれない事を配慮、消耗部位として背クッション、座クッションの単体販売を実施している。

(9) 脚部は脱着式で、お客様の紛失と破損に備え用意している、引越し等で紛失したり破損したりした場合は、現状工場の協力により無償で供給している。

<藤元氏からの回答>

「私どもはご注文いただいたお客様に末永く使っていただきたいと考え、お客様の体に合わせて、サイズを調整するなどしています。張り替えを繰り返し使い続けていただきたいというのが私どものソファー作りに対する考え方です。張り替えにはどんなに安く見積もっても、私どもでも5万円程度はお客様から頂戴することになります。おそらく日本ではソファの張り替えは最低でもその程度の費用がかかるでしょう。そういう意味では、今回チェックさせていただいたソファについては張り替えを考えるようなお客様はいないだろうと考えました。」

<藤元氏からの回答を受けて>

当社の見解はご理解いただいていると思われますが、月産2000pcs超の量産品に対しての評価基準として納得出来るものではない。
記事の企画の根幹にかかわる部分でしょう、3社の商品を解体して一体何を比較し評価しようとしたのか?量産品とオーダーメイドの違いを表現したかったのか?いただいた回答からは読み取れない。
ご回答内に表現されている、売価と張り替え費用の現実の矛盾にも全く触れない記事内容で、氏の発言の意図が到底、消費者に伝わるものではない。
日経トレンディ側は、張り替えコストは低価格商品の場合、売価以上になるとの評価者の表現を曲解し中傷記事に仕上げた点について見解を追求する。

<日経トレンディからの回答>

総評部分(藤元氏)の回答について
「今回の記事では低価格ソファの価格と品質のバランスを比較、評価することを目的としていました。売価から考え、これらの低価格ソファが張り替えの対象となるソファとはならないことは常識的に分かることだと思います。『中傷記事に仕上げた』というつもりはありません。」


5.「日経トレンディ」12月号・訂正文について

以上の掲載内容につき、10月3日、日経トレンディ編集部側より記事内容に関する不適切な表現を確認いただき、2000年11月4日発売の「日経トレンディ」12月号194ページに以下の訂正文が掲載されました。

<訂正文>

10月号『低価格ブランド品質調査』71ページ表中、良品計画のソファについて、「安い木材」「安価なウレタンは弾力性に乏しく、へたりが早い」としたコメントは不適切でした。同製品は構造部材に単一品種指定のメランティー材、クッション材に高比重ウレタン(座面23kg、背もたれ22kg)を使用し、良品計画は、「安価・粗悪な素材ではなく、充分な強度を保持している」としています。また、「張り材が薄く、磨耗しやすい」とのコメントも不適切でした。良品計画は「カバーをかけて使うことを前提としているため、張り材については使用上の品質は充分である」としています。


弊社といたしましては、今回の「日経トレンディ」10月号に掲載されました当該記事につきまして、お客様に対し、弊社の展開する「無印良品」のソファの品質面に関する、誤解やご心配を招きましたことを非常に残念に感じております。以上でご説明させていただきました通り、弊社良品計画では、常にお客様の目線に立った「ものづくり」を行っておりますので、このようなご説明をさせていただく次第となりました。今後とも「無印良品」への変わらぬご愛顧をお願い申し上げます。

株式会社 良品計画


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