首相官邸  
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平成19年4月27日キャンプ・デービットにて行われた
安倍総理とブッシュ大統領による共同プレス行事(概要)

1.ブッシュ大統領の冒頭発言(概要)
 安倍総理の訪米を歓迎したい。美しい奥様をお連れいただいたことに感謝したい。昨晩、総理夫妻とはリラックスした雰囲気で夕食会を楽しむことができた。総理はよい結婚をされた。昭恵夫人の思いやりと知性に強い印象をもった。ローラは新しい友人を得たと感じたし、私もそのように感じた。ご夫婦で来ていただいて感謝している。
 総理(晋三)とは同盟の強化について、まずは二人きりで、かなり時間をかけて話した。リラックスした雰囲気であった。これは戦略的な観点からの議論であり、すなわち国家の利益を考え、世界の平和と安定の維持を考えている。日米はかつて今ほど強く結ばれた関係にあったことはない。総理とは、この日米関係を更に強化していくために今後協力していくことで一致した。今後も日米が緊密に連携していくことは、両国の国民の利益に資することも確認した。
 これから総理との昼食会に臨む。今回はキャンプ・デービッドに来ていただいた、今度は私がクロフォードにお連れしたいと考えている。
 世界の中の日米同盟とは、共通の価値観、特に自由と民主主義に基づくものである。今後も日米のパートナーシップに基づき世界の諸課題に取り組んでいきたい。六者会合についても話し合った。北朝鮮について、長い時間をかけて話し合った。日米は、北朝鮮が義務を果たすべきであることで一致した。六者会合の参加国は忍耐強いが、その忍耐力は無制限ではない。北朝鮮は2月13日の六者会合の合意を果たすべきであり、そのために他の参加国と緊密に連携していきたい。
 イランについては、ひとつの明確なメッセージをイランの政権に伝える必要があり、安保理決議に基づく措置を着実に実施していくことが必要である。イランがこのままの状況を維持するのであれば、イランは国際社会からますます孤立していくことを理解すべきである。
 日本は、第2位のイラク支援国であり、また、第3位のアフガン支援国である。これらの若い民主主義国家が、問題を抱えながら生き残っていく上で、支援は重要であり、日本の貢献に感謝したい。我々の行っていることは、何世代も先のことを考えてのものである。
 このあと、総理は中東を訪問すると伺っており、それについても話をしたいと考えている。この地域の過激主義者の存在が、この地域の一般人の平和な社会を妨げている。総理が中東を訪問する前に話をしたいし、訪問後にも総理の考えを伺いたいと考えている。
 総理とは、貿易、ドーハ・ラウンドを含む経済問題について意見交換を行った。日米間の貿易は2700億ドルにも及んでおり、これは日米両国民を利している。貿易に関する複雑な問題も存在し、総理からも提起があった。私は、良質で健康に良い米国産牛肉を是非日本人に食べていただきたいと考えている。本日の昼食会には、米国産のハンバーガーをお出しする予定である。ドーハ・ラウンドについて、日本は建設的な主張をして、ラウンドを終了させたいとの考えであると伺った。ドーハ・ラウンドの終結は、発展途上国を支援し、貧困からの脱却にも資するものである。
 また、エネルギーについても話し合った。技術を使ってエネルギー安保を強化していくとの総理の考えを伺った。さらに環境問題についても、特に日米で多くの協力が可能であり、特に二酸化炭素排出削減に効果のある原子力について協力が可能である。温室効果ガスの排出を減少させる観点からは、民生の原子力利用が必要である。原子力エネルギーは最善の代替エネルギーであり、日米原子力協力行動計画やGNEPによって、こうした技術が市場に投入されることを強く期待する。
 このあとの昼食会では、エタノールやバイオ・ディーゼルによる自動車の話をしたい。米国は今後10年で、二酸化炭素の排出を20%削減させるという目標がある。エタノール、セルロースなどの技術が市場に投入されることを期待している。
 総理とは、全体として建設的かつ同盟強化のための対話を行うことができた。

2.安倍総理大臣の冒頭発言(概要)
 昨晩、夫妻で楽しいひとときを過ごしたのに続き、二人だけのやり取りとともに、全体会合でも充実した会談を行うことができた。大統領を始めとする米国の皆様の格別のおもてなしに深く感謝したい。
 今次訪米の最大の成果は、ブッシュ大統領との間で、「かけがえのない日米同盟」を確認し、この同盟を揺るぎない同盟として強化することに合意したことである。
 昨日、ベセスダ海軍病院及びアーリントン墓地に行き、イラクとアフガンの安定と復興のために亡くなられた方々のご冥福を祈り、そして負傷された方々の一日も早い回復を祈った。米国が払っている崇高な犠牲に対して敬意を表し、謝意を申し上げたい。ブッシュ大統領は、イラク復興を成し遂げる力強い決意を述べられた。私から、我が国は、イラクの安定と復興に向けての米国の努力を理解、支持し、日本としてできること行っていくことを述べた。我が国は同盟国として、一貫して米国とともにあることを伝えた。
 会談を通じて、私は、日米両国が、共通の価値観に基づき、国際社会の諸課題に共に取り組んでいく決意を新たにした。特に、ここキャンプ・デービッドの自由な雰囲気の下で、互いの政治信条について率直に語り合い、特にテタテでは互いの信条を率直に述べることができた。私からは、安倍内閣の使命として、戦後レジームからの脱却を目指す考えであることを説明した。その一環として、今次訪米の直前に、日本を巡る安全保障環境が大きく変化する中、時代に適合した安全保障の法的基盤を再構築するための有識者懇談会を立ち上げたことについて説明した。また、経済についても、日本の成長が米国はもちろん、世界経済に大きな影響を与えるとの観点から、構造改革を断行する決意を伝達した。大統領からは、こうした我が国の変化の方向性について、力強い支持の表明があった。
 我々は、日米同盟に立脚して北朝鮮の核問題などの東アジアの諸課題に対処することで一致し、このかけがえのない日米同盟の一層の強化のため、安保、経済、文化交流等の幅広い分野における協力を強化していくことで一致した。今回、こうしたあらゆる分野で具体的協力の強化を定めた文書がまとまったことは良かったと思っている。
 北朝鮮の核問題については、特に時間をかけて議論した。我々は、六者会合を通じて北朝鮮の核兵器・核計画の完全な廃棄を実現させていくことで、より平和で安定した朝鮮半島が実現するために共に努力していくことで一致した。そして、拉致問題について、大統領には、昨年の横田早紀江さんとお会いしたときに受けた大変強い印象は今も心に残っているとのことであった。米国に出発前に、横田さんから、めぐみさんが拉致されてからもっとも感動的な日は、ブッシュ大統領との面会の日であったことをブッシュ大統領に伝えてほしいといわれており、そのことを大統領にお伝えした。日本国政府に対する変わらぬ支持を確約したい旨あらためて表明していただいた。我々は、六者会合をめぐる現状や拉致問題に対する北朝鮮の姿勢は遺憾であり、事態の進展のため日米連携を更に強化することに一致した。
 気候変動問題については先ほど大統領からあったとおり、重要な進展があったといってよいと考える。大統領との間で共同声明をとりまとめたことを指摘したい。日米両国が大気中の温室効果ガス濃度の安定化という究極的な目的に向け前進するための方途について共に検討し、対話を強化していくことを、首脳レベルで合意したことはすばらしい。環境問題、温室効果ガス対策において、大きな前進である。
 私は、日米同盟を誇りに思う。今後とも米国と緊密に連携しつつ、アジア、そして国際社会において、我が国としての責任を果たしていくこととなる。

3.質疑応答(概要)
(1)((ブッシュ大統領に対し)アメリカの対北朝鮮政策は柔軟化したのではないかと言われている、北朝鮮は2月13日の合意を実施する期限を守らなかったが、核施設の停止をどのくらい待つつもりか。また(安倍総理に対し)アメリカが北朝鮮に対する姿勢を軟化させているのではないかとの懸念はないか、との問いに対し、)

(ブッシュ大統領)この難しい問題を解決する最善の方法は外交的手段である。これがアメリカの最善の選択肢である。難しい問題は北朝鮮の指導者にどのようなプロセスで核を断念させるかということである。この問題を前進させる最善の方法は、米国が単独でこれに当たるのではなく、日本を含む他の国と緊密に連携することである。それ故、他の国に交渉のテーブルにつくように求めており、六者会合というものができたのである。六者会合を通じて、同じメッセージを一致して北朝鮮に対して示していきたい。そのメッセージとは、核施設を停止することのみならず、全ての核開発プログラムと核兵器を放棄させるというものである。今、北朝鮮にその合意を実施させるというプロセスにおいて障害となっているのは、資金の問題であり、これを解決しようと努力している。資金の問題が北朝鮮に前進しないことの口実を与えないためである。北朝鮮の指導者が合意を守らないようであれば、そして資金以外の問題で、それを口実に北朝鮮が約束を守らないというようなことがあれば、我々には今、北朝鮮に対し強いメッセージを発するための構造がある。より強い制裁を行うことができ、他の国々に対し北朝鮮に明確なメッセージを発するよう説得することができる。従ってこの問題の外交的解決という我々の立場は正しいと思う。安倍総理が、世界に挑戦するよりも良い方法があるのだという明確なメッセージを送ることを強く主張しておられることに感謝したい。我々は他のパートナーとともに、どのくらい北朝鮮を待つのか決定する。しかし既に申し上げたとおり、我々の忍耐力は無限ではない。それは北朝鮮の指導者が理解することを期待したい。先日、ダルフールの問題の解決にどのくらい待つのかという質問を受けたが、北朝鮮はまだ、正しい判断を下すための時間的余裕があろう。

(安倍総理)この問題について率直な意見交換を行った。この問題の理解、方向性について私とブッシュ大統領は完全に一致している。今後も我々は完全に一致した姿勢で北朝鮮に対応していきたい。北朝鮮は約束を守っていかなければ、現在彼らが直面している食料事情や経済事情がますます困難になるというメッセージを伝えていくことが重要である。既に我々はこれまでの北朝鮮の対応を見て、同国の交渉のやり方というものを十分に理解している。今後とも日米で十分に連携して対処することを改めて確認した。

(2)((安倍総理に対し)BDA問題をめぐる米国の軟化に対し、日本国内には懸念が出ているが、安部総理は北朝鮮に対する圧力を強化してほしいという方向でブッシュ大統領に働きかけたのか。また(ブッシュ大統領に対し)テロ支援国家の指定解除の議論が出ているが、ブッシュ大統領は拉致問題の解決を指定解除の前提条件とされる予定はあるか、との問いに対し、)

(安倍総理)ブッシュ大統領との間で、この問題に対処するには対話のみならず圧力も重要であるということで完全に一致しているし、そのことを本日確認した。従って、北朝鮮が約束を守らなければ、更に圧力をかけていくということを確認した。拉致問題の重要性については米国もブッシュ大統領も十分理解していただいており、我々の考え方にご理解とご支援をいただいている、この問題に日米が連携して対処していくことを改めて確認した。

(ブッシュ大統領)我々は北朝鮮の指導者に対し何度も、払うべき代償があるということを示してきた。我々はいくつかの国のグループであり、北朝鮮が自ら約束したように全ての核兵器プログラムを検証可能な方法で放棄させるという一つの同じ目標を目指している。我々は、北朝鮮が一定の利益を得られなくすることができることを説明することができたと考えている。
 また同時に、北朝鮮の指導者に対し、前進のためにより良い方法があることを示すことが重要である。それは、柔軟な政策ではなく、賢明な政策であると考えている。北朝鮮が自ら受け入れた合意を実行するかどうか、それは北朝鮮が最終的に行う選択である。我々の目標は北朝鮮がそれをきちんと行うようにすることである。北朝鮮にはいくつかやり方があろうが、我々はそのより良い前進の方法を北朝鮮が取れるようにしてきた。
 本日の会談は、最善を期待しつつ最悪の場合に備えるものであった。我々は、北朝鮮が賢明な判断をするよう期待している。しかし仮に賢明な判断をしないのであれば、我々は既にかけている圧力をより強いものとするための戦略を持っている。もし北朝鮮がよい選択をするのであれば、我々が北朝鮮に与える対価について交渉する可能性が北朝鮮に与えられるであろう。言い換えれば、前進する方法はある。そしてこれは、プロセスの開始とされるものである。これは、北朝鮮にとって、米国との間で、これまでとは違った立場で取引ができる機会の開始を意味するのである。
 しかし、こうした前進のための方途に関する議論が、拉致問題に関する自分の強い思いを弱めるようなことがあってはならない。安倍総理は横田夫人がいかにホワイトハウスの訪問に心を動かされていたかについて話していた。私も同夫人の訪問に心を動かされた。娘への思いが何十年経っても薄れない、そして本当に苦しんでおられる母の言葉を聞いて、胸が張り裂けそうな思いであった。同夫人が持ってこられた、拉致されたお嬢さんの写真を、自分はホワイトハウスに置いている。同夫人の訪問は感動的だった。同夫人に理解してほしいのは、同夫人はホワイトハウス訪問によって拉致問題に人間的な側面を与えた、ということである。私はあの日のことを忘れないし、私は友人や日本政府と共にこの問題を人間の心で解決したいと考えている。私は単なる外交的やり方を超えた解決方法が必要だと思う。私にとってはそれは人間的なイシュー、感情的な問題となっている。

(3)((ブッシュ大統領に対し)イラクからの米軍の撤退期限を設けた法案が上院で可決されたが、この膠着状態をどのように解決しようと考えているか、との問いに対し、)

(ブッシュ大統領)私は拒否権を発動するつもりである。何故なら議会が米軍に代わって軍に関する決定を行ったからである。議会は、我々の軍が何をすべきかについて勝手に決めている。我々は1月に決定した増派をもまだ終えていないにもかかわらず、ここで撤退に向けた動きをすれば、それはイラクのテロリストたちのみならず、我々の敵や、米軍の兵士たちにまで誤ったメッセージを送ることになるだろう。こうした問題は十分な審議を行うべきであって、追加で法案に付属させるべき問題ではない。従って私は拒否権を発動する。私の立場は一貫している。言い換えればこの問題がこのように進展してきたのは残念であるが、私は拒否権を発動するし、私は考えを変えないだろう。今後この問題をどのように前進させるかを検討するため、拒否権発動後に、上下両院の両党の指導部と話し合いたいと考えている。もし議会が撤退に向けたタイムテーブルに関し私の意思を試したいのであれば、私はそれを受け入れるつもりはない。それは我々の軍の利益になるとは思われない。仮に今受け入れれば、困難な状況の中で戦っている若い兵士らはどのように思うだろうか。私は本気で、米軍や軍の専門家に対し議会が戦争をどのように進めるべきかについて指示するのは間違っていると思う。また撤退期限の設定は、イラクにおける米軍を危険に陥れることになるだろう。そもそも法案の目的は軍に予算を与えることであって、そこに無関係の歳出を盛り込むのは間違っている。しかし問題を前進させる途を検討すべきである。兵士を板ばさみにしてはならない。我々は国防総省が予算を獲得できるよう、また現場の訓練や体制に支障を与えないよう、また米軍兵士の家族に不安を与えないようにしなければならない。

(4)((安倍総理に対し)従軍慰安婦問題について、ブッシュ大統領に説明したのか。またこの問題について改めて調査を行ったり、謝罪をするつもりはあるのか、また(ブッシュ大統領に対し)人権問題について、またアジアの歴史認識についての貴大統領のお考えをお聞かせ願いたい、との問いに対し)

(安倍総理)慰安婦の問題について昨日、議会においてもお話をした。自分は、辛酸をなめられた元慰安婦の方々に、人間として、また総理として心から同情するとともに、そうした極めて苦しい状況におかれたことについて申し訳ないという気持ちでいっぱいである、20世紀は人権侵害の多かった世紀であり、21世紀が人権侵害のない素晴らしい世紀になるよう、日本としても貢献したいと考えている、と述べた。またこのような話を本日、ブッシュ大統領にも話した。

(ブッシュ大統領)従軍慰安婦の問題は、歴史における、残念な一章である。私は安倍総理の謝罪を受け入れる。自分は、河野談話と安倍総理の数々の演説は非常に率直で、誠意があったと思う。私は安倍総理と共に日米両国を率いていくことを楽しみにしている。安倍総理は安倍総理の思うところを率直に語ってくれた。その率直さを私は評価する。我々の仕事は、過去から教訓を得て、将来に生かすということである、そしてそれは正に安倍総理がしっかりとなさっていることである。