By BRAD LEFTON
米大リーグのヤンキースに所属するイチロー外野手(39)は冬の眠れない夜、シーズンオフを過ごす日本のホテルの部屋を抜け出し、他のゲストが立ち入ることができない場所を訪れることがある。
駐車場の裏の倉庫の取っ手に鍵を差し込むと夢の世界が広がる。通常はホテルの余分な家具をしまっておくための冴えない空間だが、冬は、イチロー選手が持ち込む特注の7台のトレーニングマシンによって彼のプライベートジムになっているのだ。
この最もそれらしくない環境で、イチロー選手は最も重要なトレーニングを実施する。彼は、渡米以来12シーズン、筋肉絡みのけがで故障者リストに載ったことが1日もないのは、ここでのトレーニングのおかげだと考えている。イチロー選手は日本国内で1278本、米大リーグで2606本のヒットを叩き出しており、プロ野球人生での4000本安打にあと116本と迫っている。
イチロー選手は外野の守備中、ピッチャーの投球の合間の空いた時間に膝の屈伸や上体を前屈しつま先に触れるといった体操をしていることで知られているが、マシンを使った訓練にはことさらに熱心だ。マシンを使うことで、単純な柔軟体操以上に、野球に最も重要と考える筋肉群(肩甲骨や骨盤、関節などの周辺の筋肉)のストレッチと調整ができると話す。
日本での冬の日課のトレーニングの合間に、時期にもよるが1日に3回マシンを利用することもあると言う。マシンによるトレーニングは自分には欠かせないものだと話す。通常の筋トレだと疲れ切ってしまうが、マシンで体を動かすと血液中に酸素を送り込み血液の循環を最大限に高められると言う。
また従来の筋トレ用マシンでは特定の部位が強化されるだけだが、このマシンだと全身が同時に鍛えられると話す。
オフシーズンに居住するホテルに加え、イチロー選手はニューヨークの自宅にも、日本の実家にもこうしたマシンのセットを設置している。今年は新たに2カ所増やす。米フロリダ州タンパのヤンキースの春季トレーニングの宿舎とニューヨークのヤンキースのホーム球場だ。チームは、イチロー選手がこの両施設のトレーニングルームに自分のマシンを設置することに合意した。
イチロー選手が使用しているマシンは先進的なトレーニングを研究開発する日本企業、ワールドウィングエンタープライズが設計したものだ。同社は特許を有するマシンを備えた小規模ジムのチェーン店を全国的に展開している。ただ、個人にマシンを販売することは通常ない。ただし、極上顧客のイチロー選手は例外だ。
イチロー選手は昔から柔軟性トレーニングに力を入れてきたわけではない。日本でプレーしていたときは、所属していたオリックス・ブルーウェーブで最も体の硬い選手の1人だった。その時代には、他の大半の選手と同様、太い筋肉に憧れて、オフシーズンには特に筋トレに夢中になっていたという。
しかし、シーズンが始まって筋トレの時間が減ると、一段と自由で速いバットの振りができるようになることに気付いた。そして筋トレの結果大きくなった筋肉が振りの速度の鈍化と守備での動きの硬さに関係していると考えるようになったと言う。イチロー選手は1999年に筋トレだけというトレーニング方法に代わるものを探し始め、現在のようなマシンにたどりついた。それ以降、従来の方法でウエイトを持ち上げたことはない。
イチロー選手は柔軟性が自分の力の源だと確信していると説明する。さらに、柔軟性が自分の武器だと続けた。
さらに、トレーニングでの目標は柔軟性を高め、一連の動きを強化することで、限界を目指す。以前はそうした力は筋トレでだけ得られると考えていたが、現在ではそうしたトレーニングは必要ないと考えるようになったと説明した。こうした種類の力強さがなくても可能性を最大限に伸ばすもっといい方法があり、振りのスピードが以前よりもずっと速くなっていることは間違いない、と話した。
イチロー選手は前シーズン、ヤンキースに移籍して以来、新たな崇拝者を得た。ヤンキースのコンディション・コーディネーターのダナ・カバリー氏だ。同氏はこのオフシーズン中に同選手のマンハッタンの自宅を訪れ、そのマシンを自分の目で確かめた。
カバリー氏は、イチロー選手の全般的な運動能力と柔軟性、選手生命の長さを支えるトレーニング方法に興味を持ち、チームのトレーニングに取り入れられるところがないかと考えていた。マシンを見たとたん、それが体の可動域を広げ、柔軟性、力強さを促進するものだと分かったという。
同氏はイチロー選手がヤンキースを説得して、このマシンを球場などに設置するのを助けた。将来的には他の選手にも使い方を教えたいと考えている。取りあえず今は、イチロー選手のトレーニングから学んだことをヤンキースの選手のストレッチやトレーニングにいくつか生かそうと考えているという。
Hello
Your question to the Journal Community Your comments on articles will show your real name and not a username.Why?
Create a Journal Community profile to avoid this message in the future. (As a member you agree to use your real name when participating in the Journal Community)