シャープ提携:液晶販売を優先 財務再建は遠く
毎日新聞 2013年03月06日 21時54分(最終更新 03月07日 00時52分)
経営再建中のシャープは6日、韓国サムスン電子との資本・業務提携を発表した。シャープが28日までに第三者割当増資(1株290円)を実施、サムスン電子の日本法人が約103億円で引き受ける。サムスンはシャープの第5位株主(出資比率約3%)となる見通し。財務改善と、液晶パネル供給先拡大が狙いだが、サムスンの出資規模は巨額赤字で毀損(きそん)したシャープの財務基盤再建には不十分。液晶テレビなどで激しいシェア争いを繰り広げてきたサムスンからの支援には、低消費電力の液晶「IGZO(イグゾー)」など最先端技術の流出を懸念する声もある。【鈴木一也、宮崎泰宏】
「シャープの命運は液晶事業の採算改善次第。(テレビ事業などで)ライバルだろうと、パネルの売り先を広げないと、再建の絵が描けない」。サムスンとの提携について、シャープの主力取引銀行幹部は6日、こう解説した。
液晶パネル製造拠点の亀山第1、第2工場(三重県亀山市)は、国内テレビの販売不振や、大口納入先の米アップルのスマートフォン(スマホ)「iPhone(アイフォーン)5」の需要低迷による受注減少で稼働率が大きく低下。採算が悪化している。
その打開策がテレビやスマホの世界販売で先頭を走るサムスンとの「ライバル関係を超えた提携」(関係筋)。サムスン向けに大型から中小型まで液晶を供給すれば、現状6割程度の亀山第2工場の稼働率が向上し「収益改善に直ちに結びつく」(シャープ幹部)。
ただ、「アップル専用」の亀山第1工場の稼働率対策は残る。特許紛争に発展するなどアップルと敵対するサムスンとの提携が今後、アップル向けビジネスに悪影響を及ぼす可能性もある。
一方、サムスンが提携を決めたのは、足元の円安・ウォン高で採算悪化が予想される中、工場への投資負担を減らしたい思惑がある。サムスンは納期や数量、価格面などでシャープ製液晶パネルを有利に調達できる契約を結んだ模様だ。
シャープはサムスンから約103億円の出資を受けるが、財務改善には不十分。シャープは、半導体最大手の米インテルなどからも出資を受けたい意向だが、仮に実現しても台湾・鴻海精密工業からの出資交渉中断で宙に浮いた増資額(約669億円)に及びそうにない。