日本語がわからない人と仕事をすることの困難さがわかる事例
日本女子プロ将棋協会(LPSA)が「こんな手紙をもらって、「さすが谷川会長!」と、ときめいた」みたいなことを書いていた。
LPSA「2月22日の日本将棋連盟会見と声明について弊協会の見解」
http://joshi-shogi.com/lpsa/news/kenkai_20130227.html
面白いのでちょっとそのラブレターを読んでみたのだが、3度ほど読み返してみて、結論としては、というか、感想としては、日本語が理解できない人との交渉は本当に大変だなぁ、というものになった。
参考:添付1(以下にダイジェストがあるので読む必要なし)
http://joshi-shogi.com/pdf/renmei_0216.pdf
この将棋連盟からLPSAに送られたラブレター(ただしLPSA解釈)をわかりやすくまとめてみる。
#ちょっと4の文章がわかりにくいので注意が必要だが、良く読めばわかる
1.挨拶
2.マイナビオープンの契約解除と石橋女流の対局放棄について、明確なけじめをつけ、信頼回復につとめて欲しい。
3.LPSAからの返答には失望したよ。
4.LPSAの主張は簡単にいえば
(1)LPSAプロを連盟プロと同等に扱え
(2)連盟がこれに応じないのは、LPSAの自主性、自治権を否定し、LPSAはの権限に干渉し、LPSAの活動を制限するものだ
の2点である。
5.とはいえ、連盟は連盟のプロ認定基準を今後も厳格に運用していく。
6.LPSAは渡部さんに苦痛を与えるのは良くないと言っているが、渡部さん個人に非があるとは誰も思っていない。
7.LPSAが事態の本質を理解せず、自己の主張に固執するなら、スポンサーの理解が得られず、ファンも困惑する。
8.今回の手紙は、LPSAに冷静に考えて欲しいからだ。
9.これは最後の機会である。次の2つを提案する。
(1)マイナビオープンの一方的契約解除と対局ボイコットについて、LPSAと石橋女流の両者がマイナビに謝罪し、許してもらう
(2)今後、将棋連盟と友好的関係を築く努力をし、女流棋士認定基準について連盟、棋戦主催者、ファンが納得する基準を競技する旨、表明する
10.2月20日までに謝罪がなされ、マイナビが「許す」と言った場合、渡部さんについては特例として、連盟女流3級と同等の対応をする。
11.渡部さんの資格は連盟3級と同一に扱うが、それは級位取り消しについても同じである。
ちょっと解説するなら、5で「貴協会がいかなる対応をされようとも、連盟は、今行われておりますプロ認定基準を今後も厳格に運用する所存」(原文)としているので、9(2)は「女流棋士の認定は、LPSA所属であっても、連盟の基準を満たさなければダメ」と理解できる。これは、「連盟の基準は絶対に変えない。LPSAの所属者が連盟の段位を取得したいなら、連盟の基準を満たす必要がある」と明言しているのだ。
その上で、「何はともあれ、まずはマイナビに謝れ。期限は2月20日だ」と前提条件を出しているのである。ところが、LPSAはなぜか「(新しい、LPSAに都合の良い)共通基準について協議する」ことができると勘違いしている。なんで5を読み落とすのか、日本語が不自由としか思えない。「お前のことなんか眼中にない。興味もないので、好き勝手にやってくれ」と書いたら、「まぁ、私のことが好きなのね!!」と解釈されてしまったようなものだ。
さらに面白いのが自信満々で将棋連盟に送りつけた次の文書で、
参考:添付2
http://joshi-shogi.com/pdf/kyoukai_0220.pdf
連盟は2月20日正午までにマイナビに謝罪しろと明記しているのに、「協議が軌道に乗り、信頼関係が醸造できるのなら謝る」と、2月20日に返答しているのである。そもそも「醸造」ってお前はいつから酒屋になったんだ?それを言うなら醸成だろ?と思わないでもないのだが、これは瑣末なことなのでスルーしておく。何にしても、連盟が最後通告を送ったら、なぜかスルーされて、逆に妙な条件を突きつけられてしまったのだ。これでは文書を受け取った連盟も途方に暮れたことだろう。
これで「胸膨らませ、心躍る気分で」連盟の対応を待っていたって・・・・うーーーーーん(笑)。自信満々で文書を公開しているところを見ると、自分たちの勘違いには全く気がついていないんでしょう。
LPSAに必要なのは、まず日本語がきちんと理解できる人間を理事に加えることでしょうね。もう手遅れかも知れませんが。
関連エントリー:
石橋女流のマイナビ女子オープン対局ボイコットに関して
Posted by buu2 at 21:54│
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将棋│
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元木さんはステークホルダーとこんなやり取りになったらどう対処しますか?
> 元木さんはステークホルダーとこんなやり取りになったらどう対処しますか?
ステークホルダーが株主という意味であれば、うちの会社は「一度株を持たれたら、それを引き剥がすのは非常に大きな労力を要する」という認識なので、投資を受ける際には慎重に調査します。あとになっておかしなことになれば、それは経営責任です。
「こうなったらどうするか」ではなく、そうならないように最善を尽くします。
すみません。別に揚げ足を取るつもりは全くないのですが、
>ステークホルダーが株主という意味であれば、うちの会社は「一度株を持たれたら、それを引き剥がすのは非常に大きな労力を要する」という認識なので、
>投資を受ける際には慎重に調査します。あとになっておかしなことになれば、それは経営責任です。
>「こうなったらどうするか」ではなく、そうならないように最善を尽くします。
LPSAに付いては、事前に「慎重に調査」はなされなかったのでしょうか?
これだけ「おかしな理解しがたい思想を持つ」集団なのですから、普通に接触していて、簡単にその片鱗が窺えると思うのですが?
> LPSAに付いては、事前に「慎重に調査」はなされなかったのでしょうか?
> これだけ「おかしな理解しがたい思想を持つ」集団なのですから、普通に接触していて、簡単にその片鱗が窺えると思うのですが?
当時は窺えませんでした。
むしろ、LPSAが途中で変わってしまったというのが僕の認識です。
鬱陶しいお天気ですね。
先週だったか連盟からの最終発表の後もお世話になっている協会所属の先生からは『事実と異なる点が有ります!。』と聞いたのですが協会HPを見てブログ主さまに再び同歩!ですね。どのように読めば連盟からの提案をあのように都合のよいとこだけ取りだす事ができたのでしょうか?。(おぼろ気に詰みまで見えるような気がしてきました。。。)
個々の先生の応援は続けたいですが。。。
> どのように読めば連盟からの提案をあのように都合のよいとこだけ取りだす事ができたのでしょうか?。
うーーーん。弁護士がついていてあれだけの誤読をやらかすとは、ちょっと信じられないのですが・・・。
そして、残念ながら、もう対局は終了していましたよね。でも、これを良い機会と捉えて、連盟との関係はすっぱりと諦め、独自の路線、独自のプロ規定、独自の免状発行、独自の棋戦で頑張っていけば良いんだと思います。
> 個々の先生の応援は続けたいですが。。。
現状で女流棋士の身分がある人は、石橋さん以外は連盟と個別に交渉すれば、棋戦には参加できる可能性があるみたいですから大きな問題はないと思います。「公益」を掲げて、将棋の普及を目指すなら、連盟の棋戦に参加する必要すらないわけですし。
このまま曲がりなりにも協会は続くとして。。。
個別交渉とは協会をでるのが前提条件になるのでしょうか?。
> このまま曲がりなりにも協会は続くとして。。。
固定費はそれほど大きくないでしょうから、存続は可能なんじゃないでしょうか?「連盟の」女流棋士資格よりも魅力的なLPSAの女流棋士資格に育てていくことができれば、発展もあるでしょう。個人的には、今のままでは非常に厳しいと思いますが。
> 個別交渉とは協会をでるのが前提条件になるのでしょうか?。
連盟としては特にそういう条件を出す意味はないんじゃないですかね?すでに連盟の女流棋士の資格を持っているなら。逆にLPSAサイドからは、「喧嘩している相手のところで指すのはどうか」というのがあるかもしれませんが、基本は条件なしなんじゃないでしょうか?どちらも、そこにこだわる意義はあまりないと思いますし。
そして、形態は異なるものの、実質的には石橋さんが第二の林葉さんのようになっていくような気がします。才能がありながらも、将棋以外の要因によって将棋界から退場する、みたいな。
多分ブログ主さまも深いところではこのまま協会が消え去ることは望まれていないかと。。。
さてさて。
将棋自体が衰退産業の上に、AIの性能が人間を超えた時点で業界は決定的なトドメを刺されると思っています。確実に減っていくパイをどうやって分けるか、という状態において、「強さ」とは他の価値もあるはずで、LPSAはそれを少しずつ開拓していくんだろうな、と期待していました。でも、石橋さんは相変わらず「強さ」に固執していて、段位とか、免状とか、既存の価値の存続に執心しています。これではちょっと難しいだろうな、と思っています。その視点からは、将棋はもうすぐ職業から道楽になってしまうからです。これが麻雀とか、モノポリーとかなら話は別なんですが。
サッカー開幕まで少し時間があるので、ざっと僕の知っているところを書いてみます。
LPSAの進路がおかしくなったのは、偶然にもどうぶつしょうぎが世に知られるようになったときと同じでした。どこがどうおかしくなったのかは僕にも良くわかりません。それまでは「LPSAの外部理事になってもらえないか」という話まであったんですが、まず北尾さんがLPSAがやばい、と言い出しました。直後に藤田さんに個人的に池袋に呼び出されて、彼女の相談に乗りました。大学の後輩ということもあって色々話は聞いたんですが、要すれば「北尾さんは私たちの話に全く耳を貸さないので、元木から説得して欲しい」ということでした。僕が彼女に伝えたのは、「北尾さんも大人だし、自分の考えで判断しているはず。どうぶつしょうぎのことを考えれば北尾さんとLPSAが引き続き良好な仲であることが望ましいけれど、説得はできない。あくまでも藤田さんの意向を伝えるだけで、あとは北尾さんの判断だ」ということでした。
ただ、こういうのって、本当に色々なんです。僕が役人時代、上長があまりにも不思議な意思決定をするので全く理解不能だったことがあるんですが、あとから宗教が関係していたらしいことがわかったことがあります。お金だけではなく、色々な思惑が混じっているのが社会です。それで、「何」がLPSAの行動を規定しているのか、僕にはわからないんですが、その情報を得た北尾さんは「無理」と判断して将棋連盟に出戻ったわけです。結局、その「何か」がLPSAから分離されない限り(どちらが正しいとか、どちらに理があるとかとは無関係に)、難しいんじゃないかなぁ、と思っています。
その点、僕たちの世界は基本「カネ」なので、凄くわかりやすいんです。そして、わかりにくい世界と一緒に仕事をするのは難しいので、僕はもう二度とLPSAと組むことはないでしょう。あちらも僕とはやりたくないでしょうし(笑)。
さて、キックオフなので、この辺で。
続いて、藤田さんの意向を伝えるべく、新宿三丁目で北尾さんと話をしたんですが、北尾さんは「LPSAは騙されている。私はそれに気がついてしまった。もう今のままのLPSAには戻れない」という話でした。僕は「判断材料は多いほうが良いから、情報は提供されるべきだ。しかし、その情報をもとにした判断は個人の責任においてなされるべきだ」という考えなので、僕が持っている情報を彼女に伝え、あとは彼女の判断に任せました。そして、彼女はLPSAの総会で緊急動議を出すことを考えていると僕に伝え、実際にその通りにして、LPSAを辞めたわけです。
以後、なぜか僕は北尾さん側のスパイのように扱われ、LPSAとはまともな会議を一度も行なっていません。
僕は、北尾さんから「LPSAが誰に、どう騙されていると思っているのか」を聞いていません。ただ、総会で解任動議を出した相手が錦織弁護士と将棋工房御蔵の鵜川氏だったことから、「誰に」というのは容易に想像がつきます。「騙されている」というのは北尾さんの主観ですが、それにしても錦織氏、鵜川氏には何かしら、LPSAを利用して得られる利があるはずで、このあたりがLPSA問題を解きほぐす鍵なんだと思っています。
ある確かなルートからの情報では、錦織氏はLPSAに手弁当で協力していたそうで(今はどうなのかわかりません)、彼の「利」はなんなのかなぁ、と不思議に思っています。
先日北尾先生ところの可愛い女性社員さんたちに展示会のサクラ?をしていただいた後、北尾先生と四谷で色々お話ししたのですが内容は。。。(多分ブログ主さまも想像される内容かと思います。)
後日、名刺交換していただいた方々の再確認していてリバネスカフェのオーナーさまの名刺をいただいていたのには仰け反りました。