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大気汚染の原因となる微小粒子状物質「PM2・5」による健康被害を防ぐため、濃度が高い日は外出自粛などを呼び掛ける環境省の暫定的な指針がまとまった。
注意を必要とする指針値を「1日平均で1立方メートル当たり70マイクログラム」に設定した。大多数の人の健康が保たれるとされる環境基準値の2倍に当たる。住民に対する注意喚起は基本的に都道府県が実施し、指針通りの数値で喚起するかやその方法についても地方自治体に委ねられる。
注意喚起する際の目安は午前5~7時台の1時間あたりの平均濃度が85マイクログラムを超えた時と想定した。その濃度を上回れば、1日平均濃度が70マイクログラムを超える可能性が高いことが過去のデータで判明したのが理由だ。基準を超えた場合には、自治体は住民に外出や屋内の換気を控えるよう注意喚起する。マスクや空気清浄器の効果は製品によって差があることも指摘した。
ただ、外出を控えるなどの目安とした数値は、米国の指針を参考に、1日平均の基準値を単に2倍にしたものである。米国では心臓や肺に病気がある人、お年寄りら影響を受けやすい人は、より低い濃度でも注意するよう呼び掛けており、環境省はその考え方も踏襲している。
今回、国が指針づくりを急いだのは、中国から国内に大量飛来することが懸念される有害物質への国民の不安をやわらげたいとの狙いがある。
目安の数字は一応示したものの、急ごしらえの印象はぬぐえず、都道府県との足並みはそろっていない。
汚染物質の監視体制を強めるには、測定局の設置が前提だ。県内でPM2・5を観測できるのは中部福祉保健所の1カ所だけ。増設が急務だが県の対応はまだ白紙状態だという。新年度予算案の編成を終えた直後で、財政措置のメドが立っていないためだ。
中国で大気汚染が問題化した後、中部福祉保健所設置のモニターで測定したところ、環境省が定めた国内基準値(35マイクログラム)を超えたのは1月下旬に3日あったが、残りは基準値以下だった。
環境省の基準に照らせば、県内には15カ所の測定局の整備が必要とされる。実態の的確な把握と適切な情報提供が不可欠であり、県は測定局の早期設置に向けた対応を急ぐべきだ。
今回の暫定指針策定は、中国からの越境汚染が問題化する中での対症療法にすぎない。いくら対策を講じても、汚染源を絶たなければ根本的な改善にはつながらない。
発生源を抱える中国政府には、経済一辺倒を見直し、法規制や対策技術の導入で実効性ある環境改善を求めたい。日本政府にもかつて高度経済成長期に公害を克服してきた経緯を踏まえ、中国に改善を呼び掛けると同時に、情報交換や技術・研究協力を積極的に行うべきだろう。
一方で、中国からの越境汚染と、国内での発生を明確に区別できていない実情もある。ディーゼル車の排ガス規制強化など、国内における根本的な削減対策にも全力を挙げることが求められる。