中国全人代:7.5%成長据え置き…格差解消が課題に
毎日新聞 2013年03月05日 21時03分(最終更新 03月06日 00時24分)
【北京・井出晋平】中国で5日始まった第12期全国人民代表大会(全人代)第1回会議で、温家宝首相は今年の経済成長の目標を2年連続で7.5%前後にする方針を発表した。一時は2桁を超えた急成長に別れを告げ、安定成長を維持する姿勢を打ち出した形だが、格差の解消など課題は山積。中国政府は、構造改革を進めながら、懸念が高まる不動産バブルや輸出鈍化への対応も求められる。
「発展の成果がより多く、より公平に行き渡るようにする必要がある」。温首相は政府活動報告のなかで、格差是正などの構造改革に取り組む姿勢をこう強調した。
この日発表した「国民経済・社会発展計画案」では、昨年10%の目標を掲げて達成できなかった貿易総額の伸び率目標を8%に引き下げた。中国政府は、農村部を開発して生活水準を向上させる「都市化」などで内需拡大を図る方針で、輸出や公共投資に支えられてきた経済成長からの転換を進める構えだ。
全人代に先立ち、不動産価格抑制のための課税強化策や、所得分配制度改革のガイドラインなど格差解消に向けた政策を相次いで発表。温首相は「投機的・投資的な住宅需要を断固抑制する」と訴えた。
不動産取引の課税強化策では、中古住宅の売り手に売却益の20%を課税する方針だ。すでに規制強化をにらんで、駆け込み売買が始まっており、北京市内では「3LDK700万元(約1億円)」などの立て看板があちこちに立ち始めた。中国紙は「税金分が販売価格に上乗せされたり、供給減で中古価格が高騰する可能性がある」とバブルが誘発される懸念を伝えている。
格差是正のために打ち出した所得分配制度改革では、固定資産税や相続税の導入が盛り込まれたが、時期は明記されていない。中国では「個人の所得や資産の把握は簡単ではなく、課税を通した所得再分配は難しい」(中国大使館筋)との指摘も強く、改革には時間がかかりそうだ。
また、消費者物価指数(CPI)の上昇率目標は、昨年から0.5ポイント引き下げて3.5%に設定。先進国の金融緩和による国際商品価格の上昇も見込まれており、インフレ抑制も容易ではない。