福島第1原発:東電 処理後汚染水を海に放出計画
毎日新聞 2013年03月05日 21時49分(最終更新 03月05日 22時02分)
東京電力は、福島第1原発で発生した大量の汚染水について、処理後に海洋放出することを検討し始めた。敷地内で貯蔵するタンクの増設が限界に近づいているためだ。放出に当たり、東電は汚染水から放射性物質を除去するために新型の浄化装置を導入し、今月中にも試運転する計画だ。しかし、海洋放出に、地元漁業関係者は反対一色で、汚染水問題の解決にはほど遠い。【奥山智己】
1日に東京都内で開かれた原子力規制委員会の検討会。たまり続ける汚染水の対応について、東電の担当者は「新浄化装置で処理する。海洋放出をする場合、関係者の理解を得て行いたい」と説明した。5日の衆院本会議で、安倍晋三首相も「安易な海洋放出は行わない」と述べた。
福島第1原発の敷地内にある汚染水は約36万立方メートル。このうち1〜4号機の原子炉建屋に約8万立方メートル、他の建屋などに約4万立方メートルあり、残りが貯蔵タンクの約24万立方メートル(ドラム缶約118万本相当)だ。
東電は現在、セシウム吸着装置を使い、汚染水から放射性セシウムなどを除去。その後、淡水と濃縮塩水に分離し、淡水は溶融燃料の冷却に再利用し、濃縮塩水を貯蔵タンクで保管している。
建屋地下には毎日約400立方メートルの地下水が流入しているとみられるが、流入経路は特定できていない。東電は2015年9月までに貯蔵タンクを増設し、容量を計70万立方メートルにする計画だが、敷地内での増設も限界に近づいている。
さらに、貯蔵タンクの濃縮塩水や冷却に使う淡水には、セシウム以外のストロンチウムやプルトニウムなど多数の放射性物質が残る。原子力規制庁幹部は「貯蔵タンクから、一般環境中に漏れ出す危険性が常に潜んでいる」と懸念する。
そこで、「海洋放出は考えなければならない選択肢」(東電の小森明生常務)となった。放出に当たり、東電は新浄化装置「アルプス」を導入。性能も確認され、規制委の検討会も2月21日、「アルプス導入で汚染水問題の危険性を低減できる」との見解を示し、試運転を了承した。東電は近く試運転を始める予定だ。