現場にアタック
担当:岡島 知世
今日は「銭湯」のお話です。
銭湯で湯船に浸かって眺める絵の定番といえば・・・富士山。
銭湯の壁画=富士山というイメージを持っている方がほとんどだと思いますが、
実は今、東京都内の銭湯で富士山の絵が減ってきています。
銭湯事情に詳しい庶民文化研究家の町田忍さんに、
都内にある銭湯の壁画、その最新事情を聞きました。
富士山が定番だったが最近では話題性のあるものが増えてきた。
例えば東京タワーやスカイツリーなど、そういった新しいパターンが
増えてきた。
それと最近特に多くなっているのが富山の雪をかぶった立山連峰。
お客さんから見れば新鮮に見えるらしく人気。
銭湯の壁画は、大体2年ごとに描き換えられるんですが、何の絵にするかは、
基本的には各銭湯の店主の自由なので、最近では富士山から違うものに変える流れが
出てきている。
でも、東京タワーやスカイツリーなどは分かるんですが、富山県の立山連峰が最近の流行?
立山連峰・・・ 富山岐阜長野に跨る飛騨山脈のうち、黒部川より西側に連なる山々の総称。
なんですが、その立山連峰が都内の銭湯で増えているというのはちょっと不思議。
なぜ急に立山連峰が増えているのか。
富山市物産振興会の宮田一博さんに聞きました。
富山市では観光客のみなさんにどんどん来て欲しいという目的で、身近なところから
イメージしてもらえるよう銭湯の壁画に、古くからある富山の自然「立山連峰」だったり、
新しい富山のシンボル「富山ライトレール」を描いてもらうよう企画した。
銭湯の壁画で富山をPRするんですね。
ちょっと聞いたこともないPR方法なんですが・・・ちゃんとした富山市の企画。
2年前からスタートした事業の一環で「東京に住んでいる人に富山を知ってもらう」
というのが目的で、壁画のすべてに立山連峰とともに富山を走る路面電車「富山ライトレール」も
描かれていて、こちらもPRしています。
そして、富山県の補助金もあり描き換えを全面的にバックアップ!
(壁画を描き換える費用は平均で8万ほど、意外と安い。)
絵の制作も日本でも数少ない銭湯背景画絵師の方に依頼し、
立山連峰の壁画のある銭湯には「富山のおいしい水」も飲むことができます。
今まで3年間で15軒。
1年に5軒のペースで立山連峰の壁画が増えているのです。
しかし、富山市側のバックアップがしっかりしていても、銭湯側としては、
「やっぱり壁画は富士山でしょ!」というようなこだわりがあるのではないか、
富士山から立山連峰にするのに抵抗はなかったのかを聞いてみました。
実際に今年7月に壁画を立山連峰に書き換えた大田区にある
「第二日の出湯」を経営している田村純一さんのお話です。
大体いま都内のお風呂屋さんの半分くらいが『新潟』出身。
残りが『石川県』と『富山県』。
北陸3県と言いますか、95%くらいはその3県の方がお風呂屋をやっている。
それは最初に出てきた人が風呂屋を作ってそれを頼ってみんな出てきて働いて枝葉のように
別れていったのが銭湯業界。
雪国なのでみんな辛抱強い、忍耐力のある人がやってきた結果ではないか。
北陸出身の経営者ってそんなにいるとは・・・知りませんでした。
95%といわれると、ほぼ全員です。
それなら都内の銭湯の経営者からすれば、地元や故郷の景色という事で
立山連峰を受け入れやすく、応援もしてあげたい、
一方、富山市からすれば、都内でPRする場所を確保できる!と、
お互いにいい関係なわけです。
だから都内の銭湯の壁画が徐々に増えていたんです。
銭湯のお客さんの反応は、
「新鮮!」「これどこの山?」「昔のぼったよ」など皆さんすぐ気付いたようです。
富士山の壁画の場合はひとつドーンと描かれているだけなんですが、
立山連峰は横に長く描かれているので、「風呂場が広く感じられる!」などの意見もあって、
とても好評なようです。
第二日の出湯の田村さんは東京で育ったそうなんですがご両親が新潟出身。
現在都内で銭湯を経営しているのは2代目3代目となっていて東京で育った方もいるが、
元々はほぼ全員北陸3県出身。
(関西の銭湯になると富山・石川・「福井」の3県が多い。)
富山市の行っているちょっと不思議なPR作戦、このあとどのようになっていくのか、
富山市物産振興会の宮田一博さんに聞いてみました。
今後につきましては、東京の銭湯の壁画をすべて立山連峰にするという目的ではないので、
どんどん増やしていくということではないです。直近の目標は北陸新幹線の開業に向けて
富山に行ってみたいと思ってもらうこと。そこに向けて色々な取り組みを実施していく。
今すぐ富山に来てください!というよりも、北陸新幹線が開業する2014年度末に
向けて観光客増を狙っているようです。
それまでに色々な取り組みで、色々なところに顔を出し、富山のアピールをしていく、
その企画には都内の銭湯はピッタリでした。