日本経済研究センターと米ブルッキングス研究所は28日、東京都内でシンポジウム「北東アジアの変革と国際経済、日米関係」を開いた。討論会では、米国などが進める環太平洋経済連携協定(TPP)への日本の正式参加を求める意見が相次いだ。野田佳彦首相はビデオメッセージで「日米同盟が日本の外交の基軸であるというのが揺るぎない信念だ」と述べ、日米同盟を堅持する決意を重ねて強調した。
■政策の相乗効果を
首相は中国の軍事的な台頭や北朝鮮問題などを念頭に「東アジアにおける安全保障環境は厳しさを増していく」との認識を表明。「日米の政策が相乗効果をあげられるように協力する必要がある」と訴えた。
討論会では、衆院選の争点でもあるTPPに関し、日本の正式参加を求める声が相次いだ。
ブルッキングス研究所北東アジア政策研究センターのミレヤ・ソリース氏は「TPPに日本が参加しなければ米国は大きなダメージを受け、TPP全体の成功もおぼつかなくなる」と指摘。「日本の参加は、日米同盟にとって極めて重要だ」と強調した。
谷内正太郎元外務次官は「アジアの成長の活力を取り込み、アジア回帰を進めるオバマ政権の(日本への)関心を確保するためにもTPPは必要だ」と表明。さらに「TPP推進では野田首相と自民党の安倍晋三総裁もそう違いはない」という認識を示した。
これに関連して韓国の李淑鍾・東アジア研究院長は「韓国は日本が参加すれば(協議入りの是非を)考えるという立場で、中国との自由貿易協定(FTA)を優先している」と説明した。
■内需主導の成長が課題
世界経済の先行きを巡る議論では、米中経済に関心が集まった。米連邦準備理事会(FRB)のドナルド・コーン前副議長は「これから米国の資金は消費から投資に向かう。もはや米国の消費者はグローバル経済のけん引役ではない」と指摘。「黒字国の内需が重要になる。新興国の経済成長を従来の輸出主導から内需主導に移すことが必要だ」と語った。
香港城市大の葉健民教授は中国経済について「消費は増えているが、中国国民は将来への不安から所得の半分以上を貯蓄に回している」と説明。内需拡大には社会保障の強化が不可欠とした。野村資本市場研究所の関志雄シニアフェローは「生産年齢人口の減少が中国の潜在成長率の低下要因になる」と指摘した。
■円高対策では温度差
日本の金融政策や円高についても議論が交わされた。日本経済研究センターの岩田一政理事長は円高是正に向けて「政府・日銀が共同で行動すると宣言することが極めて重要だ」と主張。政府・日銀による50兆円規模の外債購入基金の設置などを提案した。これについてコーン前副議長は「(基金は)形を変えた為替介入と言える。一方的な介入の多くは失敗しており、他国の反発も招く」と慎重な考えを示した。
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