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side 瓜流P 少年時代(回想)


「うわーん。うわーん。お姉ちゃん〜」
「コラコラひろちゃん。男の子が泣かないの」
僕はお姉ちゃんの腕の中で泣いていた。
お姉ちゃんといる時間多いためか僕は母親に甘えるより、お姉ちゃんに甘えるほうがずっと安心できた。
「ひっく、えぐっ。だって学校でみんなが僕の事をいじめるんだもん。
僕は何にも悪くないのに。どうしてお父さんが悪い人だと僕まで悪い人になるの?」
「それは…」
僕はこうやっていつもお姉ちゃんを困らせた。
ちなみ苛めの理由はこうだ。
僕の父親は政治家でテレビにもいっぱいでてた。
なにより国民の為に働くことを誇りにしてた。
憧れだったし、僕は学校でも国語の時間では父親の作文を書き、図工では
父親の似顔絵を描き、みんなに父親の凄さを自慢した。サラリーマンとは違う父親を。

けれど。
つい先日父は汚職事件で捕まった。
毎日ニュースのワイドショーで流れる父親の姿。
父親の載った新聞。父親の載った週刊誌。

それから始まる学校での苛め。手のひらを返すように僕の友達は疎遠になっていく。
誰も味方なんていない。悪い事をした親の子供は子供もわるいのか。


だから泣くことで誰に気持ちをぶつける事でしか自分の心を護るしかなかった。
今思えば父親せいでお姉ちゃんだって学校でなんらかの嫌がらせをうけていたのかもしれないのに。

「じゃあもう学校行かなくていいよ。ひろくんが悲しい思いをする場所なんていかなくていい」
お姉ちゃんが僕を力強く抱きしめる。
「ひろくんを酷い目に遭わせるやつなんて居なくなればいいのに。」
お姉ちゃんは泣いていた。
驚いた。お姉ちゃんが泣いているを初めてみたからだ。
いつも僕と遊んでくれたお姉ちゃんが。僕に怒った事が一度もないお姉ちゃんが。

そして僕は次の日学校を休んだ。
そして僕が学校を休んだその日。
学校のみんなが食中毒で死んだ。
給食を食べた職員も生徒も全員。
給食に僕が聞いた事がない薬品が入っていたらしい。
今だに犯人は捕まっていない。
ただこの事件のニュースをみて
「ふん。ザマアミロ」
と言って笑ったおねえちゃんの顔は今でも鮮明に覚えている。
天 使 の よ う な お 姉 ち ゃ ん の 悪 魔 の 笑い を 。

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