僕は漫画やアニメのような展開をどこかで期待していた。
けれど。
現実はどんなバッドエンドよりも残酷で。
僕が部屋に入ると、
チアガール達の視線が一斉に突然の来訪者の僕に集まる。
つかの間の沈黙。フリーズ。
しかしその凍りついた時間は脳が現状を把握すれば直ぐに秒針をきざむわけで。
「きゃあぁぁぁぁ!!」
再びチアガール達の悲鳴があがる。
今度は僕に向けてだが。
僕が頭の中で把握した現状というのは、
チアの女の子達が着替えの真っ最中で、
のぞみちゃんのパンツの色はクリーム色で
他の人の下着姿が眼中に入ってこなかったほど、僕の性欲を掻きたたせた――。
「誤解なんです!!本当なんです!!許してください!!」
僕がこんなに一生懸命人に懇願したのって何年振りだろうか?
だけどどんなにお願いしてもその想いは伝わりそうになくて。
土下座したくても、パイプ椅子に紐で固定されて座らされている状況ではどうしようもない。
「私達の着替えを見てただで済むと思ってるの!!これは覗きよ!立派な犯罪よ!!」
ヒステリーに声を上げるお姉さん。髪を茶髪に染め、耳にはピアス。
とてもタバコが似合いそう。ってゆうか絶対コンビニでヤンキー座りですってる。
今流行りのせみロングに軽いウェーブかけた髪形。ちょっと不良の入ったギャル系。
「悲鳴がしたから気になって入って…万が一ってこともあるじゃないですか…
けして着替えを覗こうとして侵入したわけではないんです。」
「その気は無くても覗きは覗きよ!!車で人を轢いたらその気はなくても犯罪でしょ!」
その不良のお姉さんは僕に対して怒鳴り散らす。
その後ろではのぞみちゃんがずっと泣いている。
おそらく男に自分の下着姿を見られたのは初めてなんだろう。
「とにかく学務と警察に連絡するから。」
「そ、それだけは…なんでもしますから…」
何を言っても聞いてくれないのに。何も言わずにはいられなかった。
こんなことで大学を退学になって前科持ちになったらとても生きていけないだろう。
「ちょっと待って。警察には連絡しなくていいわ。」
そんな時、眼鏡をかけた大人びた女性が声を発した。
「ええ?でも部長…。」
どうやら眼鏡女はチアの部長らしい。不良のお姉さんも態度がさっきとまったく違う。
「警察に罰してもらうより、私達で罰した方がおもしろいんじゃないかしら?
幸いここには3人しかいないんだし。」
眼鏡の女性がニヤリと不気味な笑みを浮かべる。
今にして思えば。これが大学4年間を最悪なものにさせるきっかけだったのだ――――――。
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