わかる:いつどこを飛ぶ? オスプレイ低空飛行訓練
2012年12月23日
当初は11月中にも始まる予定だった米軍垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの本土での低空飛行訓練は、年の瀬を迎えた今も実施が確認されていない。米国は日本政府に訓練ルートとして全国6ルートを伝えているが、飛行空域の具体的な範囲は不明で、訓練開始の事前通告も「必ずしも通知があると承知していない」(森本敏防衛相)。わからないことだらけの訓練に、自治体の不安は募っている。【福永方人】
オスプレイは4月にアフリカ・モロッコで、6月に米・フロリダ州で墜落事故を起こし、沖縄配備を控えた日米両政府は事故原因究明と日本での運用ルールを協議。9月に運用ルールに合意し、「安全宣言」を出した。
だが、10月6日の沖縄配備完了後、運用ルールに違反するように、回転翼を上に向ける垂直離着陸モードで市街地上空を飛行する姿が度々目撃され、自治体の不信を高めた。そうした中、森本防衛相は11月2日の全国知事会議で本土での低空飛行訓練が11月中に開始されると報告。だが、オスプレイの本格運用が12月にずれ込み、11月の低空飛行訓練はなかった。その後も低空飛行訓練は実施されていないとみられる。
防衛省によると、6ルートは米国が6月に公表した環境審査報告書に色分けして図示され、訓練は岩国基地(山口県岩国市)やキャンプ富士(静岡県御殿場市)などを拠点に各ルートで年間最大55回程度実施する。九州では「イエロー」ルートに熊本、大分、宮崎3県域がかかり、「パープル」ルートは鹿児島県奄美地方などを通る。
だが九州防衛局によると、空域を巡っては米側からこのルート図以上の説明はないという。福岡県行政経営企画課は「県域が『イエロー』に入っているのか九州防衛局に確認しているが、明確な回答はない」。
熊本、大分、宮崎3県は九州防衛局に市町村への説明を求め、防衛局は10〜11月に説明会を開催した。だが、訓練の時期やルートの具体的な内容については「米軍の運用なので情報がない」と繰り返した。
3県にはその後も説明はないといい、大分県生活環境部の農木寿郎(のうきとしお)危機管理監は「国は米国に対し、飛行ルートや時間の開示を要求すべきだ。不安がっている住民もおり、運用ルールは最低限守ってほしい」と訴える。宮崎県危機管理課も「これまでも米軍機が説明なしに県上空を飛ぶケースが相次いでいるが、きちんと知らせてほしい」と話す。