打者の視点で、そして打撃コーチの視線で難敵・キューバを解析した。この日の中国戦を、侍ジャパンの首脳陣、選手ではただ1人、スタンドから生観戦したのが立浪和義打撃コーチ(43)だった。
「去年の秋に対戦したときよりは、各打者のスイングは鋭くなっていますよね。そして、球に逆らわず、逆方向に打ち返すことを徹底していると感じました」
キューバは国内リーグの真っ最中。仕上げていかねばならない日本にはないアドバンテージを実感した。格下の中国を、前日(3日)の日本より力強く踏みつぶしたキューバ打線の現状を、打者・立浪として目に焼き付けた。
もちろん、キューバ投手陣の分析が視察の主目的だ。先発・ベタンコートは2次ラウンド(東京ドーム)での日本戦登板の有力候補。村田スコアラーからのレクチャーも受けつつ、各球種の特徴を把握した。
「次の対戦では勝ちにいかなければいけません。同時に各打者が自分の状態を上げていくために、思い切って振ってもらいたい。東京に向けて、キューバに『日本の打者は振れているな』と印象づけるくらいにね」
投手はともかく、打者は手の内を隠す必要などない。むしろ低調が続く打線が、勢いづくきっかけにしてもらいたい。そして塁に出れば、かき回す。“キューバ野球”に慣れておくためだ。
「けん制をあれだけ続けてくる中で、ランナーはいかに走るか。打者も分かっていることとはいえ、イライラしますから。そこで崩されずに打つ。ここから先も対戦する可能性があるチームですからね」
この日の中国戦でも、けん制球の4連発、5連発は当たり前。走者はいつしかリードオフが短くなり、打者は集中力を乱される。セットポジションの静止も、日本ならボークと判定されそうな短さだ。
失敗が許される1次ラウンドの対戦で、その感覚をつかむべし−。単独での視察で、立浪コーチのキューバ攻略レシピメモは、一気に厚みを増したようだ。(渋谷真)
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