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ローマクラブ成長の限界(1972年)、40年後の検証 04.29.2012, last update 06.07.2012
Looking Back on the Limits to Growth by Mark Strauss
Smithsonian magazine, April 2012
http://www.smithsonianmag.com/science-nature/Looking-Back-on-the-Limits-of-Growth.html

ローマクラブの成長の限界(1972年)は画期的な報告だった。40年たった今振り返って、この報告が警告した人口過剰と環境問題への懸念は正しかったのか?
Forty years after the release of the groundbreaking study, were the concerns about overpopulation and the environment correct?

成長の限界の予測は正しかった
"The Limits to Growth" is really and still correct.

今のままの経済成長と消費が続くと、2030年までに世界経済が破綻し、人口が急激する
If we take business-as-usual scenario, global economic collapse and precipitous population decline could occur by 2030.

私たちは持続可能な軌道から外れている
We are not on a sustainable trajectory.

ローマクラブ成長の限界の予測と実際の比較のグラフ
Chart Sources: Meadows, D.H., Meadows, D.L., Randers, J. and Behrens III, W.W. (1972)
ローマクラブ成長の限界(1972年)、40年後の検証

40年前に提出されて物議を醸した(ぶつぎをかもした)論文−成長の限界(1972年)−の結論:「世界は破滅へのレールを進んでいる」は、近年の研究でやはり正しかったことが検証された。オーストラリアの物理学者グラハム・ターナー(Graham Turner)は、振り返ってみると、1970年代において最も偉大で画期的な学問的業績は「成長の限界(Limits to Growth)」であると述べている。

この論文はMITの複数の研究者が、世界的なシンクタンクであるローマクラブのために書いたものである。この研究ではコンピューターを使って、いくつかのあり得る将来のモデルを導き出している。その中で今のやり方のままのシナリオ(business-as-usual scenario)、すなわち、もし人類が、自然が与えることができる量以上のものを消費し続けるシナリオで進んでいくとするならば、2030年までに世界的な経済崩壊と人口の急激な減少が起こるかもしれないと予測している。

一方で、この論文では、もし政府が人類のフットプリントの拡大を押さえ込むことができる政策を編み出して、かつそのための技術開発に投資するならば、経済成長を持続させることができるとも述べている。著名なエコノミストたちがこの論文の方法論と結論に異議を唱えている。イェール大学のヘンリー・ウォリッチ(Henry Wallich)は積極的に議論に割って入って反対意見を述べている。ウォリッチは、経済成長をあまりに早く押さえつけてしまうと、「億単位の人々を永久的に貧乏という名の刑務所に送り込む」ことになると述べている。

ターナーは1970年から2000年までの現実のデータと、「成長の限界」の今のやり方のままのシナリオ(business-as-usual scenario)を比較している。そして、現実は「成長の限界」の予言にほぼ沿って進んでいることを見出した。ターナーは次のように言っている。「ここでは警告の半鐘の音が明らかに鳴り響き続けている」、「私たちは持続可能な軌道から外れている」

The Limits to Growth 初版本の表紙     デニス・メドウズ博士
英文のウィキペディアから    Dr. Dennis L. Meadows(国連大学の記事から)

(参考文献1)「成長の限界」−ローマ・クラブ「人類の危機」レポート− ドネラ・H・メドウズ著、大来佐武カ監訳 (1972)ダイヤモンド社
"The Limits to Growth" Donella H. Meadows, Dennis L. Meadows, Jorgen Randers, and William W. Behrens III, Universe Books(1972)
(参考文献2)「成長の限界人類の選択」 ドネラ・H・メドウズ、デニス・L・メドウズ、ヨルゲン・ランダース著、枝廣淳子訳 (2005)ダイヤモンド社
"The Limits to Growth The 30-Year Update" Donella H. Meadows, Jorgen Randers and Dennis L. Meadows, Earthscan(2004)
(国連大学の参考記事)「地球を守るため成長を制限する」
http://ourworld.unu.edu/jp/dennis-meadows-limiting-growth-to-save-the-world/

(Ominoコメント)
私は、現代文明はエネルギー文明だと考えています。もしそれが正しいとすると、現代文明の崩壊は、「環境市民派」が漠然と描いている様な「環境破壊」ではなく、今、目前に見えている「経済破綻」ではじまるのではないかと考えています。

ほとんどの国はエネルギー・資源の不足・高騰、需要不足あるいは購買力不足、生産設備の過剰に悩まされています。そして、どのような景気対策をとっても、経済成長が減速、停滞、場合によってはマイナスになっています。先進国は税収が減ってしまったにもかかわらず、国民の生活水準を維持するために国債を発行し続けています。しかし、いつまでもそんなことを続けられる訳がありません。経済破綻が起きます。経済破綻は「現代文明の崩壊」のはじまりです。もしかすると、ギリシャの経済破綻と欧州危機は、「現代文明の崩壊」の前兆なのかと気味が悪いです。

エネルギー・資源の高騰→成長の限界→経済破綻→途上国の食料不足→途上国から先進国への難民流入→社会的混乱→人口収容力の低下→人口の急減といったシナリオがつい思い浮かんでしまいます。不吉なことを書くのは危機をあおることになるので嫌なのですが、現在のメディアと政治家はあまりにノーテンキ過ぎると思います。内向きになって原発叩きや橋下維新政治ショーに夢中になるのも結構ですが、世界の動向と将来を見通すこともメディアと政治家の仕事です(追記2012/05/24、2012/06/07更新)。

「2030年には『地球2個あっても足りない』、WWFが資源消費に警告」
AFP BBNews 2012年05月17日 18:34 発信地:ジュネーブ/スイス
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2878177/8949741
<以下引用>
【5月16日 AFP】世界自然保護基金(WWF)は15日、「生きている地球レポート(Living Planet Report)」を発表し、急増する世界人口とそれに伴う過剰消費の悪循環によって将来の地球の健康状態が脅かされていると警告した。天然資源に対する需要が持続不可能なレベルまで増えつつあり、生物多様性を「途方もなく」圧迫していると述べている。
<引用終わり>
(最終更新2012年06月07日)

この記事に関連する本ホームページの記事へのリンク
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「日本の人口、過去・現在・未来(日本の総人口推移のグラフ)」

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