574 本当にあった怖い名無し
祠の前に捨てたときは、死んでからもう何ヵ月も経ってたけどまだ怒りが収まらなくて、骨を足蹴にしても飽きたらず石で粉々に砕いたんだと。
娘が死んだ嫁と同じ目に会わされたと知ったらね…気持ちはわからんでもないけど。
もう誰もいない座敷牢に幽霊が出るようになった。
けどそれは牢の主のユキハルではなくて姉の春のほう。
しばらく座っていたかと思うと消え、庭の隅にある石の上にたたずんで蔵をジッと睨んでいるそうだ。
その蔵というのが、ユキハルが身売りさせられてた場所だった。春は生前、ユキハルが蔵に入っている間は石に座ってずっと彼が出てくるのを待っていたらしい。
575 本当にあった怖い名無し
そのうち旦那の夢枕にも立つようになったらしい。春が祟っている、と言って少しづつ衰弱していった。
そして蔵の戸口の前で首をかっ切って死んだ。(この蔵は戦後に壊しちゃったんだけど、叔父や親父は飛び散った赤い染みを見たそうだ)
旦那の弟が後を継ぐことになったが、怖くて仕方ない。
N家は跡を継ぐときとある儀式をするんだが、儀式をやる前に春の霊をなだめる方法を考えていると、なにやら井戸のほうで水音がする。
時刻は夜中。こんな時間に誰だろうと見に行くと、春が着物や食器を洗っている。
それはユキハルが使っていた物だった。
577 本当にあった怖い名無し
「お春…死んでからも、ヤツの世話をすることはない」
実父を祟り殺したとはいえ未だユキハルに縛られてる春が哀れでつい声をかけると、春は振り返りにっこり笑って消えた。
彼はもしや…とユキハルの砕かれた骨が散らばった土を集め、春の墓の隣に葬った。
途端に春の姿を見るものは無くなり、たまに井戸で誰もいないのに何かを洗う音がするだけになった。
「…きっと、春もユキハルを好きだったんだよ。でも姉弟で愛し合うことはできないから、入水した」
と叔父は言った。
それから、本来ならユキハルが継ぐはずだったんだろうN家は末子が継ぐように決めた。(春の機嫌をとったようなものらしいけど…)
578 本当にあった怖い名無し
で、従弟のはなしに戻るけど。
従弟はG県でリーマンしてて帰ってくる気も継ぐ気もなかったんだって。
ならそろそろ末子じゃなくて、長男が跡取りになるようにするかって親戚内で話し合ってた矢先にバイクで事故って死亡。
さらに俺の弟が轢き逃げにあって半身麻痺。
俺も風呂場とか、とにかく水場で変な影を見た。
これはマズイということで、俺が本家に飛んでって儀式したら影も見なくなった。
その日はもう遅いから本家に泊まることになった夜。外から水音がした。
俺はもう従弟が殺された?こととか、弟不随にされたこととか怖いより先に腹が立って、春とやらに文句言ってやろうと井戸に向かった。
580 本当にあった怖い名無し
そしたらいたよ。
欠けた茶碗洗ってて、目尻と頬にほくろがある。現代の感性から言ってもかわいくて、緑っぽい着物着た子が。
かわいいっていっても、やっぱり腹は立ってたんで「オイ」って不機嫌な声で呼びかけたんだ。
そしたら俺に気づいて、体の向きもきちんと変えて、申し訳なさそうに頭下げて消えた。
頭下げたってことは、やっぱり二人の事故はアイツのせいなんだろうな。
それは絶対許せないし、許してやらない。
581 本当にあった怖い名無し
でも、あの子にもなんか譲れないもんとかがあったんだろうなって思った。
んなこと考えた自分がすっげー悔しくてちょっと泣いた。
祠の前に捨てたときは、死んでからもう何ヵ月も経ってたけどまだ怒りが収まらなくて、骨を足蹴にしても飽きたらず石で粉々に砕いたんだと。
娘が死んだ嫁と同じ目に会わされたと知ったらね…気持ちはわからんでもないけど。
もう誰もいない座敷牢に幽霊が出るようになった。
けどそれは牢の主のユキハルではなくて姉の春のほう。
しばらく座っていたかと思うと消え、庭の隅にある石の上にたたずんで蔵をジッと睨んでいるそうだ。
その蔵というのが、ユキハルが身売りさせられてた場所だった。春は生前、ユキハルが蔵に入っている間は石に座ってずっと彼が出てくるのを待っていたらしい。
575 本当にあった怖い名無し
そのうち旦那の夢枕にも立つようになったらしい。春が祟っている、と言って少しづつ衰弱していった。
そして蔵の戸口の前で首をかっ切って死んだ。(この蔵は戦後に壊しちゃったんだけど、叔父や親父は飛び散った赤い染みを見たそうだ)
旦那の弟が後を継ぐことになったが、怖くて仕方ない。
N家は跡を継ぐときとある儀式をするんだが、儀式をやる前に春の霊をなだめる方法を考えていると、なにやら井戸のほうで水音がする。
時刻は夜中。こんな時間に誰だろうと見に行くと、春が着物や食器を洗っている。
それはユキハルが使っていた物だった。
577 本当にあった怖い名無し
「お春…死んでからも、ヤツの世話をすることはない」
実父を祟り殺したとはいえ未だユキハルに縛られてる春が哀れでつい声をかけると、春は振り返りにっこり笑って消えた。
彼はもしや…とユキハルの砕かれた骨が散らばった土を集め、春の墓の隣に葬った。
途端に春の姿を見るものは無くなり、たまに井戸で誰もいないのに何かを洗う音がするだけになった。
「…きっと、春もユキハルを好きだったんだよ。でも姉弟で愛し合うことはできないから、入水した」
と叔父は言った。
それから、本来ならユキハルが継ぐはずだったんだろうN家は末子が継ぐように決めた。(春の機嫌をとったようなものらしいけど…)
578 本当にあった怖い名無し
で、従弟のはなしに戻るけど。
従弟はG県でリーマンしてて帰ってくる気も継ぐ気もなかったんだって。
ならそろそろ末子じゃなくて、長男が跡取りになるようにするかって親戚内で話し合ってた矢先にバイクで事故って死亡。
さらに俺の弟が轢き逃げにあって半身麻痺。
俺も風呂場とか、とにかく水場で変な影を見た。
これはマズイということで、俺が本家に飛んでって儀式したら影も見なくなった。
その日はもう遅いから本家に泊まることになった夜。外から水音がした。
俺はもう従弟が殺された?こととか、弟不随にされたこととか怖いより先に腹が立って、春とやらに文句言ってやろうと井戸に向かった。
580 本当にあった怖い名無し
そしたらいたよ。
欠けた茶碗洗ってて、目尻と頬にほくろがある。現代の感性から言ってもかわいくて、緑っぽい着物着た子が。
かわいいっていっても、やっぱり腹は立ってたんで「オイ」って不機嫌な声で呼びかけたんだ。
そしたら俺に気づいて、体の向きもきちんと変えて、申し訳なさそうに頭下げて消えた。
頭下げたってことは、やっぱり二人の事故はアイツのせいなんだろうな。
それは絶対許せないし、許してやらない。
581 本当にあった怖い名無し
でも、あの子にもなんか譲れないもんとかがあったんだろうなって思った。
んなこと考えた自分がすっげー悔しくてちょっと泣いた。