───「シー。カミュ、隠れて!」
───「うん。見つからないかなぁ…。姉ちゃん。」
───「大丈夫!内緒にしてれば…ね。」
───「内緒にしてれば?」
───「そう。秘密よ。私達だけの秘密…。」
幼い日々。他愛の無い日々。
何もかもが楽しくて、悪戯に明け暮れた。
大人達をほんの小さな罠にかけるのが、二人にとっては大冒険で。
いつも一緒だった。
少し歳の離れた姉と。
幼い自分と。
暖かい姉の腕の中に居ることが幸せだった。
なによりも。
親や友人よりも、姉と一緒に居たかった。
いつまでも。
だがいつからだろう。姉を『姉』と呼ばなくなったのは…。
Taboo Apple〜禁断林檎〜
††††††††††††††††††††††††
「カミュ、久しぶりね!会わない内に随分大きくなったのね〜。」
「…いきなり訪ねてくるとは…。私が迎えに来られなかったらどうするつもりだったのだ。」
「どうって。あなた弟なんだから姉が遊びに来たら当然迎えにくるもんでしょ?」
「私は忙しい。」
ギリシャの空港まで、突然訪ねて来た姉、を迎えに来ていたカミュは、表情一つ変えないままに、
短く返事を返した。
カミュは幼い頃、聖闘士になるべく早くから親兄弟と離れて暮らし、修行に明け暮れて来た。
永久凍土のシベリアの大地に育て上げられた強さとクールな性情。
黄金聖闘士に昇り詰める頃には、それにさらに磨きがかかり、現在のカミュがある。
今や誰しもが認める、氷の魔術師の名に相応しい男となった。
と暮らせた少しの間は、まだカミュは幼子だった。
小さな手をに引かれて付いて行ったものだ。
姉と一緒にいる事が楽しくて幸せで、幼いながらにが眩しく見えていた。
だが、親兄弟と離れてからは、そういう感情を捨て去った。
考えている暇も、思い出している暇もなかった。
得に、姉・のことは。
カミュのあまりに素っ気無い態度に固まっているの手から、何も言わずにカミュは荷物を取った。
「…ちょ…。カミュ?全く…大人になったと思ったら、冷たいわねー。もっと何かかける言葉とかないの?」
呆れて腰に手をあててぼやくを一瞥して、スタスタと空港ロビーを歩いて行くカミュ。
その後をぶつぶつ言いながら急いで付いて行く。
幼い頃と逆になった。
昔は弟であるカミュが姉のの後を付いて歩いていたのに。
歩く歩幅もの方が大きくて、は普通に歩いているつもりでもカミュにとってはちょっと早くて、
駆け足まじりで歩いたものだった。
チラリと後ろを振り返ると、が少し離れたあたりで小走りに付いて来ている。
カミュはため息を付いて歩みを止めた。
止まったカミュの元にやっと追い付いたは、少し息を弾ませてまたぼやいた。
「もうっ!もうちょっとゆっくり歩いてくれない?大体歩幅が違うじゃないの!」
「昔はの後を走って追いかけていたのは私の方だったのにな。」
「ふふ、そうね。カミュったらいっつもひっついて来るんだもの。」
「が私を引っ張り回していたのだろう?そう記憶しているが。」
「何言ってるのよ!カミュが付いて来るから連れて行ってあげてたのよ?」
上目遣いで見上げて、笑いながら睨んでいるを見下ろすカミュ。
自分は随分背が高くなったのだなと、今さらに感じる。
幼かった頃、の顔をずっと見上げていた。
腕のずっと上にあるの顔は、いつも日に照らされて眩しかった。
繋いだ手をぎゅっと握りしめて、カミュはその手が離れないように願った。
姉の…の側に居れば、ずっとずっと幸せにちがいないと、幼いながらにそう考えていた。
カミュはまたため息を付いて、瞼を閉じた。
幼い頃に抱いた幻想のような幸福が、少しずつ脳裏に蘇る。
とっくに捨て去った感情。
忘れていた…封印した感情。
「カミュ?なに突っ立ってるのよ。早くいきましょう。」
「…ああ…。色々忙しかったのでな。少し疲れているのだ。」
「それはご免なさい。でも、姉の出迎えと仕事の忙しいのは別問題よ!」
「…。相変わらずの強引さだな。」
「失礼ね!そんな事ないでしょ。さ、さっさとタクシーに乗りましょう。どこ?ターミナルは…。」
の手が、空いているカミュの手に触れる。
ぎゅっとそのまま握った。
幼い日にカミュが手を離すまいとして握りしめたのと同じように、今度はが。
つぶやくように、『迷子になったら大変…こんな外国で。』と言っている。
そう。
迷子にならないように、離れないように、カミュはの手を握っていた…。
なぜ今、がここに現れたのか。
全ての感情を封印していたのに。
心の箍が軋む。
眼を逸らしても逸らしきれない。
手を繋いだまま、カミュは歩き始めた。
自分が先きに立って、を導くように進む。
一歩進むごとに一つずつ、感情にはり巡らしていた壁がボロボロと崩れて行く。
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が泊まるというホテルへと向かうタクシーのなかで、カミュは殆ど言葉を発しなかった。
が何故ギリシャに来たのかだけを聞いて、それきりだ。
『何故ギリシャに来たかって?観光の為に決まってるじゃない。…あなたが殆ど連絡をよこさないからって
いうのもあるけどね。様子見に。』
そうか、と言ったきりカミュは腕をくんでシートにもたれ掛かかり、外へと目をやった。
ウィンドウに写る隣のは、そんなカミュの冷淡な態度に呆れ顔だ。
弟っていうのはこんなものなのかしら、と言いたげに、ちょっとため息をつく。
カミュは、フランスの身内に殆ど連絡を入れない。
いつ何があるか分からない身だ。
家族といえども、聖闘士として余計な感情は邪魔であるとカミュは考えていた。
ある地点で線を引いておかなければ、いざと言う時に感情が邪魔をすることになる。
もし自分が死ぬような事になったら、その後に誰かが連絡するか、もしくは放っておかれるか。
それぐらい距離を保っていた方が聖闘士としての自分であるには都合が良かったのだ。
そうする事で、逆に家族のほうが気にかける結果になってしまったのだが。
姉のが自分の元へ現れるぐらいなら、早めに連絡を入れておくのだったとカミュは苦々しく思った。
後戻りできない濁流に押しながされる様が、カミュには見えていた。
「つきましたよ、お客さん。」
「有難う。釣りは取っておいてくれ。」
タクシーの運転手に運賃を渡して、カミュはまたの荷物を受け取った。
チェックインの手続きを済ませ、部屋へと向かう。
ホテルマンにチップを渡したのもカミュだった。
が何かしようとする前に、カミュが先きに行った。
「カミュ、そこまでしなくても私がするわよ…?」
「出迎えに来るのが当然なら、これぐらいも当然だろう?。」
「…ありがと。」
ホテルの部屋は当然ツインルーム。
ベッドが二つ並んでいて、美しくベッドメイキングされている。
が使わないであろうもう一つのベッドに、カミュは腰掛けた。
「あー。疲れた。遠いのね、ギリシャって。明日からゆっくり観光しようっと。」
「私は仕事があるから付き合えないぞ、。」
「言うと思ったわ。全く可愛げのない弟だこと。…ま、許してあげる。迎えに来てくれただけね。」
「フッ。やはりは昔から強引で我が儘だ。」
「違うわよっ。…ところでカミュ。『姉さん』とは呼ばなくなったわね。やっぱ頼り無いのかな、私。」
ようやく少し笑ったと思ったら、またカミュは口を噤んだ。
いつからか、を『姉さん』とは呼ばなくなった。
姉。自分よりも母から先きに産まれた、血を分けた実の姉弟。
家族で、身内で、誰よりも慕った。
愛すべき家族。信頼すべき身内。
それ以上でも無く、それ以下でもない存在。
───ダカラ、ネエサントハ、ヨベナイ───
「…ミュ。カミュ?ちょっと、本当にどうしたの?変な子ね…。」
「ああ…すまない。本当に疲れているようだ。」
「悪い事したわね…ああ、ちょっと待って。今お茶でも煎れるわね。少し休んで行けば?」
は部屋の備え付けのティーセットにお茶を用意し始めた。
後ろ姿を無意識に追ってしまう。
幼い頃と全く同じだった。
の行く先が、仕種が、行動が、気になる。見ていたい。
の背中はとても小さくて細くて、なんと頼り無いのだろう。
力など込めなくても、すぐにでもその自由を奪えてしまう…。
カミュは深く息を吸った。
このどうしようもない衝動を押さえ込まねばならない。
「はい、お茶が入ったわよ。せっかくだからコールドにしてみました〜。」
カミュの動揺には全く気が付いていないは、ベッドサイドボ−ドの上にグラスを置こうとした。
冷えたグラスの表面には汗が薄らと浮いていた。
「…っあ…!」
ツルリと、グラスがの指から滑り落ち、そのまま床へと落ちてしまった。
中の紅茶がの手やカミュの膝を濡らして行く。
「ご免!手が滑っちゃった…っ。」
「…いや。いい。」
慌てて屈み込み、膝をハンカチで拭こうとするの手をカミュは制する。
そしてその手を取ったまま、カミュは自分の唇をそれにそっと寄せた。
細い、たおやかな指先をゆっくりと口へと含んだ。
「……カ…ミュ…?ちょっ…」
「甘い…な。シロップの入れ過ぎだ。」
はカミュのそんな行動に驚き、慌てて手を引っ込めようとした。
だが、それを簡単に阻止されてしまう。
カミュに取られた手は、そのまま暫く彼の唇と舌に翻弄されていた。
指や手に舌を這わせながら、じっとをみつめる弟、カミュ。
熱い舌の動きに、は目眩を覚えた。
なぜ?
何をしているの!カミュ!
ああ、早くこんな事は止めさせなければ…。
そう頭では自分を急き立てるものの、の身体は固まったまま動かない。
それどころか脊髄に甘い痺れが走って行く。
長い間会わなかった、弟・カミュ。殆ど他人に近い状態だ。
見れば想像も出来ないぐらい大人の男になっていた。
長身で、引き締まった体躯の凛々しい男に。
別れた幼子の頃の弟しか記憶に無いにとっては、それは大層な驚きであり喜びでもあった。
立派に聖闘士とやらの使命を果たしているのだろう。
女性にかまけている暇などないのかもしれない。
だから…こんな事をしているのだろうか、カミュは。
姉である自分にならば少しの悪戯ぐらい、笑って『冗談だ』と言える…。
だが、指を優しく愛撫するカミュの眼は決して笑っていない。
その瞳の奥に何かが揺れている…。
それが何かを確かめる事が、には恐ろしかった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「カミュッ!止めなさい、何するの…っ?」
渾身の力で手を引っ込めようとするを逆にカミュは自分のほうに引き寄せてしまった。
の身体はふわりと浮き、気付けばカミュの両腕に抱かれていた。
それからそのまま、カミュは腰掛けていた ベッドにを抱き倒してしまった。
「……っ?!」
「…私はもう、あなたを愛せない。…姉としては…。」
苦し気に眉をしかめながら、カミュはと鼻先が触れそうな程近くまで顔を寄せ、そう呟いた。
何も言えないまま戸惑っているの柔らかな唇に、そっと自分の唇を重ねた。
逃げようとするをきつく抱き締めて、深く唇を奪う。
「……っ…んっ…う…」
の喉が動き、甘い呻き声が発せられた。
その瞬間に、カミュの感情の壁は一片残らず砕け散った。
「はぁっ…カミュ…ッ何をするの?私はあなたの…」
「あなたを姉と見ていたのは…もう随分と昔だ。」
覆い被さるカミュの胸を押し返すの両手は一まとめにされ、頭上に縫い付けられる。
の細い手首は、大きなカミュの手に押さえつけられれば動かすこともできない。
無防備になったの全身をじっと包むように眺めて、カミュは目を細めた。
「姉としてを見ることはもう…私にはできない。あなたは一人の女性だ…。」
しっとりと汗ばんでいるの喉元に唇をあてる。
ビクリと跳ねるの身体にカミュは自分の体重を乗せた。
目の前で、呼吸を荒げて潤んだ目で自分を見上げているのは姉ではなく…。
ただ一人の女性である。
いつからだろう。
を姉として愛せなくなったのは。
聖闘士として親元から離れてから、姉であったをそれ以上の感情で意識するようになった。
もちろん、命をいつ落としてもおかしくない熾烈を極める日々でふと、一瞬思い出すだけ。
たったそれだけなのに、を強烈に愛する気持ちが湧き上がってくるのだ。
姉としてではなく、女性として。
どうすることもできなかった。
その気持ちはどんどん大きくなって行くが、それを心の奥底に仕舞いこむ事で自分を保ってきた。
クールで冷静な自分という人間が、上手く隠す手助けをしてくれた。
実の姉を愛するなどと、あってはならないこと。
禁断の木の実を進んで口にするようなものだ。
だが、もう後戻りは出来ない。
隠しようのない欲望が堰を切って今、溢れ出してしまった。
身をよじるの足にカミュは自分の足を絡めた。
何か言おうとするの唇に再び深く口付ける。
容赦なく舌を差し入れ、のそれを絡め取り味わった。
の抵抗の力が弱くなる。身体をよじる動きも止まった。
貪るように唇を求めるカミュにただ、その身を預けていた。
弟だが、もはや他人に近い状態の「カミュ」。
愛していた。でもそれは弟としてだ。
姉弟で、それ以上の愛情があって良いのだろうか?
身体を差し出すような愛があっても…?
「カミュ、お願い…。これ以上やめて。神の罰が下るわ、姉弟でなんて…!」
「下れば良い。私は…が欲しい…。」
「カミュ…ッあ…」
「。愛している…。もう隠しはしない。」
の手の封印を解き、カミュはやわらかな曲線を描く身体を抱き上げる。
最後まで止めるようにと呟くように言いつづけるに啄ばむように口付けながら、カミュは
禁断の木の実を枝からもぎ取った。
その実を食べてしまうと、今までの幸せが全て消えうせ、試練が襲い掛かるという。
『試練など、私がを愛する事に比べれば一体どれほどのものだというのだ。』
もいだ木の実は少し熟して甘い芳香をはなっている。
これを口にしない者がいるとしたら、そいつは愚か者だろう。
カミュはそれに、そっと噛み付いた。
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肌を桜色に染めて、カミュの愛撫に堪えるような、苦しげな声を発しては悶えていた。
年下の、弟のものとは思えない翻弄するような指の動き。
の身体のポイントを確実に読み取って行く。
そして、腰が熱く爛れるような、淫らな快感を与えて行く。
疼くように、の泉からはトロリとした密が溢れていた。
「はぁっ…あ…んっ!う…っく…。」
「。もっと…もっとあなたの声が聞きたい…。」
「や…っ。だめ…駄目よぉ…っ」
「こんなものでは、声すら出ないというのか?…。」
耳元で低く甘くささやく弟カミュは、もはや一人の「男」以外の何者でもない。
その声音にゾクリとしてしまうも、カミュと同罪だ。
禁断の木の実を知らず知らず口にしてしまったイブのように。
カミュの長い指が、の細い腰をなぞって太ももまで降りて行く。
高い声を上げたは無意識のうちに、自分から腰を浮かせてしまっていた。
クスクスと、うれしそうに低く笑うカミュの声が聞こえ、さらには身体を熱くした。
「、駄目じゃないだろう?ほら、ここはこんなにも欲しがっている…。」
「ひゃ…ぁっ!ああ…っ」
「まだココには何もしていないぞ?…淫らな人。」
指で花びらをツーッとなぞる。
それだけでは蜜を溢れさせ、ソコを生き物のように蠢かせた。
カミュの指に絡みつく蜜にまみれた熱い花弁。
指を上下に動かしながら、ゆっくりと奥にまで埋もれさせて行く。
チュクッ・チュクッと、粘つく水音が耳に熱い。
「あっ…は…く…ぅんん…っ。」
「中はもう…とろけてしまっているな、…。弟なのにな、私は…。」
「そう…よっ!こんな事、駄目…なのに…っ。」
「駄目でも、欲しいだろう?。私は…もう我慢できない。」
それでも蜜はとまらない。嬌声が口をついて出る。
快楽とはなんと恐ろしいものか。
いや、快楽を呼び起こしてしまう姉弟の愛の方が恐ろしいのかもしれない。
タブー。禁断。言葉の響きすら淫猥で恍惚として。
姉弟の意識に霞をかけてゆく。
カミュの牡が、ゆるりとの花びらにこすり付けられる。
蜜を絡めつけるように、淫らに円を描くように。
入り口に少し潜り込ませては、引き戻す。
「はぁっ…!カ…ミュッ。」
「熱いだろう、。あなたがこんなにしたのだ…。」
言いざまに、蕩けるのナカにもぐりこむカミュ。
あまりの熱さと狭さにカミュは低く呻いた。
欲しくてたまらなかったが今、自分のものになったのだ。
その快感と快楽は想像以上の力でカミュを襲う。
腰を押し進めるたび、引き戻すたびに、脊髄に電流が走るのだ。
チュッ・チュッと二人の接点が音を奏でる。
「ああっう…ううっ!ああん…っ」
「…私の、。もう、離しはしない…っ。」
強く深くの奥を突き上げながら、カミュは低く囁き、耳たぶを舌で弄んだ。
の細い肩。小さな背中。柔らかい腹部。
全てが愛しい。
片腕でを抱きしめながらもう片腕で二人の体重をささえて激しく責め上げる。
「はあっ!ああっ!だ…め…っ!ヤ…ァ!」
「ああ、溶けそうだ。このままだと気が狂う…。」
深い場所がの快感のポイントだと知っていたかのように、カミュは腰をの下腹部にピタリと
つけたまま上下に動かし始めた。
襲い掛かる快楽に抗えず、甘い声を上げている。
カミュの身体と、の身体。ピッタリと絡み合う。
余りにも弟の愛が強くて姉を覆い尽くす程だ。
皮肉にも同じDNAを持つ二人の身体は、互いを確実に捉えて快楽を貪りあう。
二人の身体は今や、蕩けあい混ざり合って離れられなくなった。
「…くっ…っ。」
「ああんっ!はぁっ…ああっ!」
激しい突き上げを繰り返され、の内部は強い痙攣を起こしはじめた。
カミュの牡がこすられ、強烈な射精感に襲われる。
の身体を強く抱きしめ、そのままカミュは最奥に熱い白濁を放った。
包み込むような、の温かいナカをゆっくりと犯しながら、カミュは目を閉じた。
自分は我が姉・を地上で最も愛しているのだ。
禁じられた愛だろうと、かまわない───。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ジュッ・ジュクッ
甘い花びらがこすれる音。
軋むベッドの音。
熱い呼吸の音。
切なそうな女の嬌声。
低く囁く男の声。
闇の中でそれだけがはっきりとしている。
絡み合った二人の繋ぎ目からは互いの体液が溢れだし流れ出し、シーツを濡らす。
もう何時間も、だれも止めるものは居ない。
濁流の流れる先は誰にも分からない。
───「ホラ、。もっともっとシてやろう…。」
───「ああ…はぁっ。カミュッ…こんな事…」
───「シーッ。…秘密だ。二人だけの秘密…。」
───「ひ…みつ?」
───「そう。誰も知らない…秘密を二人で作ろう、。」
昔、あなたと私でいっぱい作った小さな秘密のように。
今夜から、今度は私とあなたで『秘密』を作ろう。
最初の秘密は───
禁断の木の実(林檎)を二人が口にした事…。
終劇
†††††††††††††††††††††††
あり得ないと思うか、あり得ると思うか…。
それは貴女次第…。
by畑