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2012年11月の衆議院解散以来、いわゆるアベノミクスによる円安・株高で大儲けした人も多いだろうと思います。もし2012年中に利益確定していたら絶対に確定申告した方がいいよ、というお話です。

平成24年(2012年)分の確定申告が始まっています。通常は2月16日から3月15日の1ヶ月間ですが、今年は2月16日が土曜日なので週明け2月18日(月)から3月15日(金)が確定申告期間です。

参考:平成24年分 確定申告特集
http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tokushu/

私は社会人になってから一貫して給与所得者で、不動産売買や高額の医療費が掛かる事態にもなったことがありません。通常なら確定申告とは無縁な生活のはずなのですが、平成20年(2008年)分からずっと確定申告を続けています。

確定申告をするようになったきっかけは、FX(外貨証拠金取引)の脱税で多額の税金を徴収された経験でした。

以下は2008年に過去3年分にわたる無申告分の所得を徴収されたときの大雑把な明細です。

年度(平成) 雑所得 所得税 無申告加算税 住民税
17 1,555,806 248,300 36,000 155,400
18 837,660 150,700 22,500 83,800
19 4,724,298 969,700 167,000 472,400
合計 7,117,764 1,368,700 225,500 711,600
総計 2,305,800

雑所得はほぼ100%がFXの利益です。平成17年(2005年)から19年(2007年)は、いわゆる円キャリートレードによる円安進行の真っ只中で、2005年初頭の101円から2007年夏の124円まで、ドバイショックや中国元の切り下げなど一時的な円高局面もありながらも、ほぼ円安基調で推移しました。よほどのへそ曲がりでなければ面白いように儲かった時代なのです。ミセスワタナベなんて言葉が海外メディアに出るような時代でした。ミセスワタナベについて知らない方はこちらを参照

こんなに儲かってるんならいいじゃないか、という声も聞こえてきそうですが、話はそう単純ではありませんでした。平成17年から19年分を平成20年にまとめて徴収されたのですが、平成20年には世界の経済状況は異常事態に陥っていました。そう、リーマンショックです。

リーマンブラザーズが破綻したのは2008年9月15日のことです。当時マーケットに関わってなかった人はわからないかもですが、2008年春にも全米4位の証券会社ベアー・スターンズの破綻騒ぎがありました。この時期からサブプライムローンはやばいんじゃないかという雰囲気は立ちこめていて、私はこの時期からすでに結構な含み損を抱えていました。その最中に発生したリーマンショックで、一晩で600万を飛ばす事態にもなりました。

目の前で手取り年収を超える赤い数字が膨らんで行く恐怖は今も忘れることはできません。動悸がして吐き気が止まりませんでした。

そんな頃です。税務署から出頭通知が届いたのは。

記憶の範囲で税金を取られるまでの流れを説明します。まず最初に税務署から「所得状況のお伺い」という封書(葉書だったかも?)が届きます。ちょっと現物が手元にないのが残念ですが、確か簡単な表が印刷されていて、その表には給与所得とか有価証券売買とかの項目があらかじめ印刷されていて、金額を埋めて送り返してくれ、って感じでした。

意味がわからないので税務所に電話してみると、担当者は異常に丁寧な口調で「ただ状況を知りたいだけだ」の一点張りでした。グーグル先生に問い合わせてみると、どうもこれが届いた時点で税務署側にはネタが揃っているからしらばっくれても無駄だし、むしろ悪質だとして重加算税が課されて損するだけだ、という情報がありました。私は諦めて全て素直に計算通りに記入して返送しました。

しばらくして、と言っても1,2ヶ月は後だと思いますが、税務署から呼び出しが来ます。これ以降手続きに関係した書類はすべて保管してありました。こんな感じです。

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会社を半休取って平日の午前中に税務署に行きました。担当の税務署員は非常に淡々と持参した源泉徴収票とか取引報告書とかを確認して申告書類に記入していきます。特に怒られるということはありません。ただただ無表情に書類に金額を書き込んでいく姿は逆に不気味でした。あいつら赤い血が流れているんだろうか。

ちなみに、窓口は敷居はあるものの周囲を見渡すくらいの隙間はあります。担当者が席を外している間に税務署の中を見回してみると他の窓口には私と同様に所得状況に疑義があるらしき人が呼び出されていて、担当者と軽く喧嘩しているおじさんとかもいたりして、なかなか趣がありました。

税務署では本税の納付額が記入された納付用紙だけが渡されます。各年度に1枚なので私の場合は3枚渡されました。無申告加算税や重加算税は日割りで発生するので、本税の納付が確認されないと計算ができません。税務署を出て会社へ向かう途中の銀行で大至急納付しました。

その後、税務署から無申告加算税の金額が入った納付用紙が郵送されてきます。税務署で概算は教えてくれていたので想定内の金額で驚きはありませんでした。これも届いた翌日には納付しました。こんな感じの計算書が同封されていました。

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さらに住民税の納付用紙が区役所から届きます。住民税は前年度の所得によって決定されるので、確定申告により所得額が増えると差分が徴収されます。これは結構盲点です。届いた納付用紙にも何の説明もないので最初意味がわからず放置してました。そうしたら督促状が届いてまた延滞税が云々と脅してくるので慌てて納付に走りました。

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2008年の年初には時価1000万円を超える資産があったのに、リーマンショックと3年分の所得税と住民税を納めた私は、年末には文字通り文無しになっていたのでした。あの時くらい仕事があって定期収入がある有難さを感じたことはありません。サラリーマン最高。

さて、この話から得られる教訓はただ一つ、収入があったら確実に納税するべきだ、ということです。FXに関して言えば、税務署はすべての収入を把握しています。私は証券会社との相対契約だから黙ってれば大丈夫だと思っていました。最初に儲けが出た2005年には言われたら払おうくらいに思っていたのですが、税務署からは何の動きもなく、やはり黙ってればばれないもんだな、と思い込んだのが間違いでした。実際にはFX事業者からすべての取引内容が国税庁に渡っていたのです。

参考:為替王 : FXの脱税、なぜ、ばれるのですか?
http://blog.livedoor.jp/kawase_oh/archives/51931110.html

本当かどうかはわかりませんが、所得税は3年で時効になるので3年間は泳がせておくということを実しやかに語っている人も見掛けました。実際に私は最初に利益が出た年から3年分をまとめて徴収されています。少しでも税収を上げるためにそういう運用がされている可能性はあると思います。単なる憶測なので真に受けないでください。

ちなみにFXは税法上かなり不利な商品です。ほとんどのFX取引は税法上雑所得に入ります。所得税は累進課税なので給与所得等と合算した所得額で税率が決定されます。国税庁HPに掲載されている速算表を見ながら説明します。

所得税の速算表
課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円超 40% 2,796,000円

(No.2260 所得税の税率|所得税|国税庁より引用)

例えば、給与所得が500万円の人がFXで200万円儲かったとしましょう。給与所得は源泉徴収なので500万円に対する税率20%で天引きされています。ここで確定申告すると所得が700万円になって税率が23%に上がります。

500万円から427,500円控除されて20%だと914,500円。700万円から636,000円控除されて23%だと1,463720円。差額549,220円が納税額になります。
※大雑把な素人の計算ですので間違ってるかも知れません。参考程度にしてください。

また、FXの損失は繰り越すことができません。税法上は完全にギャンブルと同じ扱いになっていることは知っておくとよいでしょう。

株や投資信託だと証券優遇税制の下一律10%で給与所得から切り離されて算出されます。また、3年間の損失繰り越しができます。FXは株等に較べて税法上かなり不利な投資商品であることはわかると思います。

なお、上記は一般的な証券会社での相対取引の場合です。FXでも取引所取引である『くりっく365』だと源泉徴収されるし、損益繰り越しもできるようです。これからFXを始めたいという人は、絶対に『くりっく365』で取引すべきだと思います。

参考:為替王 : FXで損した投資家が救済される制度があるってホント?
http://blog.livedoor.jp/kawase_oh/archives/51693609.html

これからどれだけ円安・株高が続くのか、大きな調整があり得るのか、神のみぞ知るというところですが、日本の税務署は蛇のように優秀です。税金は最初から大人しく払うのが一番いいよ、ということだけお伝えしておきます。

こんな当たり前のことを知るために払った授業料と思うと、とんでもない金額で目眩がします。

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