北海道暴風雪 湧別町で死亡の父親、呼吸できるよう空洞つくる
あわせて9人の命を奪った北海道の暴風雪で、湧別町では、父親が9歳の娘をかばった状態で死亡しているのが見つかった。命がけで娘を守った父親の直前の様子が明らかになってきた。
2日から3日にかけて北海道や東北を襲った暴風雪。
北見市では、新たに76歳の女性の死亡が判明し、死者はこれで9人となった。
9歳の長女を守って凍死した、湧別町でホタテやカキの養殖を営む岡田幹夫さん(53)。
岡田さんをよく知る湧別漁協の雲津幸治さんは「奥さんは、2年前に病気で亡くなって、その前に、(岡田さんの)お父さん、お母さんが亡くなって。子どもに対する愛情は、人並み以上のものがあったのではないか」と語った。
発端は、2日午後4時ごろ、岡田さんの親戚へかかってきた1本の電話だった。
岡田さんは、親戚に電話をかけ、「燃料が少なくなってきた。近くの知人宅へ避難する。先方にそう伝えておいてほしい」と頼んできたという。
最後に電話を受けた親族は「子どもはどんな服装をしていると聞いたら、ちゃんとスキーウエア着てちゃんとしていると。本人(岡田さん)のことは聞かなかったけど、本人は薄着だったらしい。その後は全然、音信不通で」と語った。
岡田さんは地吹雪の中、娘を連れて歩いて知人宅を目指した。
ところが、岡田さんと娘が見つかったのは倉庫前。
岡田さんが、娘に覆いかぶさるようにして亡くなっていた。
倉庫には鍵がかかっていたという。
2人が見つかったのは3日午前7時すぎ、車からおよそ300メートル離れた倉庫の前で、最寄りの民家まで50メートルの場所だった。
岡田さんは、娘を風から守るように、娘に覆いかぶさった状態で亡くなっていたという。
娘は、奇跡的に無事だった。
現場に駆けつけた消防隊員は「娘の顔をかばうような形で、娘の呼吸がきちっとできるように、空洞をつくっていたと聞いています」と語った。
地吹雪の中、ひと晩、娘に覆いかぶさり、娘を守った岡田さん。
近くの店で、ひな祭りのケーキを予約していたという。
最後に電話を受けた親族は「車から出るって言った時に、何で止めてやれなかったんだろうと思って。どんなことしても、車の中に残っていろと」と語った。
北海道や東北の暴風雪被害を受け、安倍首相は4日、関係閣僚会議を開いた。
安倍首相は「(各省庁は)緊張感を持って、大雪への対応に、万全を期してほしいと思います」と述べた。
除排雪を徹底し、交通網の復旧に全力を期すことなどを指示した。
現場は、海から直線で1.3kmほどにある農作業小屋の横だったが、捜索にあたった地元の消防によると、当日は海から風速30メートルもの強い風が吹きつけていて、猛烈な吹雪になっていたため、1メートル先も見えないような状態だったという。