【社説】所得不平等放置すれば経済成長も止まる

 金洛年(キム・ナクニョン)東国大教授が国税庁のデータを利用し、所得分配の不平等の度合いを示すジニ係数(数値が1に近いほど不平等)を試算した結果、可処分所得のジニ係数が政府の公式統計(0.308)よりも高い0.371に達していることが分かった。チリ、メキシコ、トルコ、米国に次ぐ5番目の高さで、経済協力開発機構(OECD)の平均(0.314)をはるかに上回った。金教授の主張が事実だとすれば、韓国は主要国で最も不平等な国に分類される。

 金教授が作成した統計は、韓国の所得分配状態がOECD加盟国で中間水準にあるとする政府の公式な立場とは異なるものだ。金教授は、統計庁の家計所得調査では所得公開をためらう高所得層が脱落しており、所得分配の不平等さが実際よりも反映されていないと指摘した。

 国民の大多数は韓国の所得格差が深刻だと肌で感じている。月収100万ウォン(約8万5000円)前後の低賃金労働者が数多くいるかと思えば、年収数億ウォン(数千万円)から数十億ウォン(数億円)の高所得者も増えている。過去最高益を上げた一部大企業の成果給支給ラッシュを見つめる市民は虚脱感を味わっている。

 所得不平等を放置すれば、社会的な対立が必然的に起き、経済成長も困難になる。貧困層がまともな教育を受けられず、国家全体の人的資源が不足するようになるからだ。

 所得分配の不平等を緩和するためには、貧困層に対するセーフティーネットが現在よりも強化されなければならない。韓国は先進国に比べ、政府の福祉政策が所得再分配にさほど効果を発揮できずにいる。限られた財源で福祉の恩恵が貧困層に効率的に及ぶようにするためのシステムを構築しなければならない。

 所得不平等の一因であるサービス業の生産性の低さを改善する対策も急がれる。韓国の製造業の生産性は先進国レベルにあるのに対し、サービス業は60%程度にとどまっている。低熟練労働者が卸小売り、飲食・宿泊業などの従来型のサービス業に集中した結果、給与労働者の賃金中央値の3分の2に満たない低賃金労働者が25.9%を占め、その割合はOECD加盟国で最も高い。

 新政権は所得不平等を解消する方策として、福祉支出を増やす方法を用いるだけでなく、サービス業と中小企業の生産性を高め、教育システムを変革し、国家経済がバランスの取れた成長を達成するための大きなビジョンを描くベきだ。

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