イオンは4日、J・フロントリテイリング子会社の食品スーパー、ピーコックストア(東京・杉並)を買収すると発表した。負債を含む買収総額は300億円。成長戦略の一つである「大都市シフト」を鮮明にする狙いだ。今回の買収でイオンがグループで持つ直営食品スーパーは首都圏で実質500店を上回り、セブン&アイ・ホールディングスの約5倍になる。仕入れや物流などで規模のメリットを生かし競争力を底上げする。
イオンは4月1日付でピーコックストアの全株式を取得する。「大丸ピーコック」など店名は変える方針。ピーコックの店舗数は計82で首都圏に6割の47店、関西27店、中部8店ある。2012年2月期の売上高は1126億円で経常利益は3億円。13年2月期は価格競争の激化などで営業赤字に転落する見通しだ。
イオンは今回の買収で11~13年度の中期経営計画で掲げる大都市シフトに弾みをつける。手薄だった首都圏の営業基盤強化を狙い、イオンは00年代前半からいなげや、カスミ、ベルク、マルエツに出資。4社の合計売上高は11年度で約8900億円と首都圏の食品スーパー最大手、ヤオコー(2373億円)の4倍近いが、営業面での連携はプライベートブランド(PB=自主企画)商品の供給などにとどまる。各社への出資比率が15.01~35.5%のためだ。
そこで11年度から自前で食品スーパーを増やしている。広さ150平方メートル前後の小型店「まいばすけっと」は東京都と神奈川県で10年度末に約170店だったが、現在は330店とほぼ倍増。1月には首都圏で113店を運営する英テスコ日本法人の株式の50%を取得した。テスコは日本撤退を表明しており、イオンは実質的な直営店としてこれらの店を運営する。
子会社のマックスバリュ関東やピーコックも合わせるとイオンの首都圏の直営食品スーパーは500強。子会社などで手掛ける全国の食品スーパー(約1200店)の4割強だ。セブン&アイは子会社のイトーヨーカ堂やヨークマートなどを合わせて98店。イオンはセブン&アイを大きく上回る規模を電子マネー「ワオン」や一般メーカー品の仕入れ、物流などのコスト低減に生かす。
イオンはピーコックが強い高級食材の品ぞろえや都市部での店舗運営ノウハウも吸収。首都圏や関西圏、中部圏で都市型スーパーの出店を加速させる構えだ。
ただ国内証券アナリストは「今回の買収額はピーコックの現状の収益力からみて割高。イオン流の店舗運営手法を導入することで今後どこまで改善できるかがポイント」と話す。
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