月組公演『ベルサイユのばら』ーオスカルとアンドレ編ーの宝塚大劇場公演では、連日多くのお客様にご観劇いただき、誠にありがとうございました。
今回私は、オスカルとアンドレ、ベルナールの3役を演じさせていただいています。これまでにも2役を演じた経験はありますが、そのときは同時進行でお稽古をしていました。しかし、今回のオスカルとアンドレは対になる役の設定で台詞もそれぞれ多いので、先にアンドレのお稽古を進めて、その後にオスカルのお稽古をしました。
まずアンドレのほうは、やはり「オスカルへの思い」がキーワードです。オスカルのちょっとした心の動きも逃さないようにきっちりと受け止めて、自分の心の動きを見せられるように、役作りしていました。例えばブイエ将軍に立ち向かっていくところや、市民を率いる場面など、いつでもどんなときでも一歩引いてオスカルを見守っていました。アンドレは、包容力という一言だけでは済まされない大きな愛をもつ素敵な男性で、それをもっともっと表現できたらいいなと思っています。
一方、オスカルは女性なので、やはり役作りが難しいです。男気があり、凛々しく、物事に立ち向かう強い部分とともに、市民や国を思う優しさをもっています。そのうえアンドレに見せる女性の部分など、バランス良く表現することが求められます。宝塚の男役にぴったりな役柄だからこその難しさを感じます。
3役目のベルナールは出演シーンは短いのですが、群衆でのシーンも多いのでうれしいです。ちゃぴ(愛希れいか)とも夫婦役として一緒にお芝居できるので、とても楽しみにしていました。
3役を演じた経験は初めてでしたので、戸惑いもありました。ですが、複数の役を演じると、作品を違う角度から見ることができて理解も深まり、思い入れも強くなります。役によって舞台での立ち位置が違ってくるのは当然ですが、同じ楽曲も違って聞こえます。それぞれの役を演じていくことで、さらに役に対する理解も深まり、色濃くなっていくのではないかと思っています。
ただ、正直言って、切り替えは結構大変です(笑)。『ロミオとジュリエット』の前までは衣装を変えれば切り替わりましたが、最近は日替わりや午前と午後で役が変わるので、意識して気持ちを完全に切り替える作業をします。『ロミオとジュリエット』のときは、ロミオが終わるとパワーを使い果たしてしまい、そこからティボルトのスイッチを入れるのがものすごく大変でした。逆にティボルトとして溜まっていたものが、ロミオのときに出て力が入ってしまったり……。自分の癖や傾向を客観的に研究しながら、試行錯誤と微調整を繰り返していました。今回の“ベルばら”は性別も違うので、より切り替えを意識して舞台に立つようにしています。お客様に両方観たい、観て良かったとおっしゃっていただけるとすごくやりがいを感じますので、それぞれ深めていけるよう、頑張りたいなと思っています。