PC遠隔操作事件 東京地検が処分保留で容疑者を釈放していた!(山口一臣)

もうひとつ、今回の事件でメディアはほとんど報じていないが、弁護団に足利事件で菅家利和さんの冤罪を晴らしたことで知られる佐藤弁護士とともに元判事の木谷明弁護士が加わったことがある。木谷弁護士は東京高裁の裁判官として東電OL殺人事件のゴビンダ裁判に関わった。一審で無罪となったゴビンダさんに対して検察側は逃亡の恐れがあるとして勾留請求をしたが、当時東京高裁の裁判官だった木谷氏が検察側の主張を退け、勾留を認めなかった。木谷氏はこの決定後に東京高裁を依願退職して弁護士になる。検察側は諦めずに何度も再請求を繰り返し、最終的に勾留が認められた。だが周知のとおり、その後、ゴビンダさんの無罪が明らかとなり、木谷裁判官による決定は法曹界から高い評価を受けている。

その佐藤&木谷の強力タッグがK容疑者を「真犯人でない」と主張する最大の根拠が、「彼にはウイルスをつくる能力がない」というものだ。一連の事件に使われた遠隔操作ウイルスはC#というプログラミング言語で書かれているが、K容疑者はこの言語が使えないと言っている。無論、罪を逃れるために嘘をついている可能性もある。そこで弁護団が勤務先の社長や同僚に当たったところ、異口同音に「彼にはC#でウイルスをつくるような能力はない」と話したという。勤務先の社長はすでに警察にも同じことを伝えているようだ。

さらに、佐藤弁護士によると、K容疑者のパソコンにはC#でのプログラム作成に必要なソフトをインストールした形跡がなくK容疑者自身「使ったこともない」と話しているとも。もし、本当にウイルスをつくる能力がないとすると決定的だ。真犯人は別にいることになる。再逮捕の容疑とされる「遠隔操作ウイルスを使って他人のパソコンから日本航空に飛行機爆発予告のメールを送りつけた」という話も、彼がC#言語やウイルスを自在に使いこなせなければ成り立たないのではないか。

もちろん、K容疑者が人前では使えないふりをしていた可能性も否定できないし、前述のとおり警察にとって有利な状況証拠もある。だが、裁判になれば検察は、勤務先の社長や同僚の証言を覆し、彼に「能力」があることを立証しなければならない。ハードルはかなり高い。警察のリーク情報に依存して報じるメディアのニュースを見ていると、捜査は順調に進んでいるかのような印象だが、実は再逮捕でさらにドロ沼にハマっているのである。

【NLオリジナル】

 

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