練習方法の考察
2008年1月14日(月)
上下の距離の違いによるサークリング練習の意味の違い(その1)

一度掲載した内容だが、もう一度深く考察してみる。

新チームになって
1年生+2年生、1年生+3年生の新しいコンビで練習が始まった場合に、最も効果的な動作練習は何だろうか?

ヨットレースを動きという事から大きく捉えてみると、或る程度真っ直ぐに帆走する帆走状態と方向変換の動き(タック、ジャイブ、ベアリング、ラフィング)の組み合わせである事が分かる。或る程度真っ直ぐなコースを走る動きは一般的な帆走練習で行なうし、方向変換の動きはマーク回航練習(短いマークの場合には動作練習とも言っている)で行なっている。初心者〜中級者(上級者も含むかな)までに於いて、この動作練習を最も短時間で上達させ得る練習の一つが最小半径でのサークリング練習のように思う。

福岡経済大学や石橋チームやオリンピック強化練習を見て、数年前から九大でも少しずつ行なっているのだが、まだその練習が持つ大きな効果に気付いている学生は少ない。

最小半径でのサークリングは方向変換の動き(タック、ジャイブ、ベアリング、ラフィング)の4つの動きそのもののみで構成されている。これが最小半径でなく少し間に直線的帆走が入るような半径のサークリングでは少し効果と意味合いが異なる練習になる。

最小半径ではヘルムの切り替えが連続するので、ボディバランス(体の動き)とセイルのトリムに素早さが要求される。最小半径であるという事は極値であるとも言い換えられる。よって最も難しいが、最も短時間で大きな効果となる可能性を秘めている練習であるとも言えるのではないだろうか。

この最小直径のサークリングを微風から強風まで艇速が一定(又は加速しながら)10回程度同じ場所で完璧に行なえる艇はそれだけでかなりの腕前である事が分かる。

経験的には3〜5m/sの風で直径5〜6m程度、8m/sオーバーの風で1215m程度、2m/s以下の風では3〜4m程度のサークルになる。

この最小半径のサークリングで重要な事は次の2点です。

@     艇速を落とさないこと(タックやベアー直前でよく減速し易い)

A     舵の切り角度がほぼ一定であること(円を描くのだから当然なのだが、これが難しい)

この2点に注意して、ボディバランスとセイルの出し入れのみで艇のヘルムと速度をコントロールする訳です。

よく目にする現象とその原因とアドバイスを次に列挙します。

     思うようにベアーできない。

⇒メインシートがスムーズに出ていない。

⇒身体を外に出しながら手を頭の上まで一杯に挙げて長くシートを持ち、シートをスムーズに出す。極端だが先ずこれでブームが抵抗なくスムーズに出ることとヘルムが切り替わるのを体感する。

     ジャイブ後にメインシート引きが遅くなる。

⇒ティラーとシートの持ち替えに時間が掛かりすぎて艇の動きに付いてゆけていない。

⇒ベアーを逆手で行なう。つまりティラーを持ち替えないで行なうようにする。間違いなくジャイブ後のシート引きは早くなる。これでジャイブ後のあるべき姿を先ず把握するようにする。(サイドマークの混戦ではオリンピック選手でも場合によっては逆手で行なうこともあるらしい。)

     タックで止まり易い。

⇒タックが遅れている。動作が遅い。

⇒ラフィングの延長線上でタックするようにする。ラフィングの艇速が思うように出せなかった場合には、風位付近ではバウをボディバランスで動かすというロールタックの動きをいつでも意識して行なうようにする。順風でも波があるとこの動きが必要になる。微風時のみロールタックではない。

     下Mのラフィング時に艇が流れたり、パワーが抜けたりする。

⇒セイルトリムによってヘルムを大きくする事が出来ていないM(マーク)を見てティラーが無意識の内に動いてしまい迎角が急激に変化してしまっている。

⇒ジャイブでメインを出し過ぎるのもだめだが、出したりないのもダメ。メインを出す量を自分なりに探ってみる事。もう一つはヘルムと体の動きにティラーが引き摺られて動いてしまっている。メインシートを引く込む時にティラーがピクリとも動かないで行なえるように先ず練習する。ハイクアウトに出るときにもティラーは動かないようにする。

⇒ヒールを思うように制御(or利用)出来ていない。ラフィングで微ウェザーが必要なのに艇はフラットのままメインセイルを引き込んでくると艇の進行方向が切り替わっていないのでどうしても大きな弧を描いてしまい下Mを大きく膨らんで廻ってしまう。風の強さに合わせてメインセイルを引き込んでいって発生するウェザーヘルムの大きさの違いによってヒールも使い分けなければ思うようなイメージのラインでラフィングは出来ない。スキッパーの足腰が弱いとどうしようもない。

 

以上4点がクリアー出来るようになれば、かなりスムーズな艇の動きになる筈です。

石橋・後藤チームは半日間このサークリングを納得が行くまで2週間以上やったそうですが、単純そうな練習も求めるものが高ければ極めて大きな効果をもたらします。まあ、荒木・八木チームが少し出来た事もあるので学生でもやれば出来るでしょう。

20回+休憩1分)×5セット×左右回りで約40分〜1時間の練習でしょう。よく上手くいかないからといって途中でやめてしまう体力と意思の弱い艇がいますが、それでは意味がありません。とにかく20回は止めずに回るのです。回りながら修正してゆくのです。これは徹底してください。クルーと相談という理由で途中の休憩を長くとる艇がいますがこれもダメです。体で覚えるのですから回りながら修正してゆくべきです。20回でなく40回できる艇は40回でも構いません。大抵、スキッパーが精神的に耐えられず途中で止めてしまうようですが、この練習はクルーの動作の練習でも或る訳です。何事も徹底してやらなければ短時間では進歩しません。そして継続が必要です。九大は特に、望むべき動きまで到達していないのに何故か、焦って他の細切れで多種類の練習を入れてしまう傾向にあります。土日だけの練習のチームと高校生のように毎日乗るチームでは効果的な練習方法は当然異なる筈ですよね。5月になっても、8月になっても回航動作が中途半端にしか出来ていないので再び時間を割いて練習しなくてはならなくなります。本当は合同回航練習でタクティクスや精神面の強さやレース戦術や勝負勘を養いたい時期なのですが.....。

さて、上下Mの距離で区別すると最小直径とその3倍程度の直径、10〜15倍程度の直径径の練習が考えられますが、それぞれ意識すべきポイント(求めるもの)が異なります。

次回は最小直径の3倍程度のサークリング(回航?)について考えて見ます。

2007年11月25日(日)
微風の動作練習

■微風の動作練習

土曜日の午後は暖かそうだったので、代が変わった大岳での練習を見に行ってみた。学祭で1年生がいなくて、2,3年生で各クラス2艇ずつの出艇でした。

出艇前のミーティングで動作練習をやるという事で、サークリングとタックジャイブ練習の開始時間を幹部が当たり前のように言っていた。ここで少し、私には疑問が生じる。今日の午後の3時間の練習では、いったい何をクリアしようとしているのだろうか?どんな技術的課題に取り組もうとしていて、どのステップまでを出来るようになろうとしているのだろうか?具体的なものが一向に分からない。サークリングでもその目的(身に付けようとしている技術)によって、上下の長さは異なるだろうし、タックジャイブ練習でも艇の廻し方(舵切り)なのか、ボディバランスなのか、セイルの出し入れなのか、それとも3つの技術の総合化なのか、艇速の維持なのか、どうも掴めない。1回の練習でそんなに沢山の事は習得できないだろうから、出来るだけ目的を絞った方が合理的だと思うのだが、毎年の如く、なかなかこの点が変わらない。他者から見て分かり辛いという事は、当の本人も深く考えて、きちんと把握仕切っていない事が多い。『難しい数式を並べないと説明できないというのは、本当には理解出来ていないからである』と云うアインシュタインの言葉を思い出す。

サークリングでマークに対してのアプローチを厳しくするという事を意識して、と主将が言っていたが、現在の君達の技術レベルは既に「艇速を維持できる」という前ステップをクリアしているのだろうか。練習を見た感じでは、未だ3ステップ位前のように見えたが。

何故、動作練習の技術を理論的に徹底的に分解して、優先順に段階付けしないのだろうか?これが先ずなされて、次にこの技術を加えて、更にこの技術を加え、そして最後にこの技術が加わると、ジャイブは90%完成し、艇速の維持が簡単に行なえるようになり、減速する確率が非常に小さくなる筈である、とか。

優先順位を付ける為の切り口としては、前進力の維持・最大化(揚力、抗力)→抵抗の最小化がある。それ故に、このホームページでも『理論』で先ず揚力、抗力について記している。

もう一つの大きな問題は、幹部に望むべき動作イメージが出来ていない事なのではないのだろうか。どの位、皆で研究したのだろうか。トップレーサーは小戸に沢山いるが、映像として持っているのだろうか?又は、見て目に焼き付けたのだろうか?本当に勝ちたいチームなら、間違いなくやっている事だろうと思うのだが、何か、とても甘ちゃんのような気がする。
3年生が本船に乗っていても、イメージが無いため違いが分からないのでアドバイスは積極的には出来ないだろう。目を見開いて、違いを発見しようとか、どこで艇速が落ちていて、それは何が原因なのだろうかとか、考えようとしている幹部の姿を一度も見なかったのは非常に残念だったし、このままでは暖簾に腕押しの感じで、岩岡君の昼寝や柚木崎君の興味の無さを見ると、もうコーチングに行っても無駄かなと思ってしまいました。

ヘルシンキ工科大学から九大に留学しようとしているフィンランド人学生が体験練習に来ていましたが、彼は、ジュニア時代にはナショナルチームにいただけあって、艇を止めないサークリング技術は大変良く出来ていました。日本語も結構出来て、自分は技術的には上手くないが、いろんな練習プログラムのアドバイスでお役に立てるかもしれませんと、北欧人らしく謙虚に言っていました。



黒船でも来ないと九大は変わらないのかもしれませんね。

技術論を書こうと思ったけど、その前の段階なので.......。

2007年10月15日(月)
最小半径のサークリングはとっても効果的

新チームになって1年生+2年生、1年生+3年生の新しいコンビで練習が始まった場合に、最も効果的な動作練習は何だろうか?

ヨットレースを動きという事から大きく捉えてみると、或る程度真っ直ぐに帆走する帆走状態と方向変換の動き(タック、ジャイブ、ベアリング、ラフィング)の組み合わせである事が分かる。或る程度真っ直ぐなコースを走る動きは一般的な帆走練習で行なうし、方向変換の動きはマーク回航練習(短いマークの場合には動作練習とも言っている)で行なっている。初心者〜中級者(上級者も含むかな)までに於いて、この動作練習を最も短時間で上達させ得る練習の一つが最小半径でのサークリング練習のように思う。

福岡経済大学や石橋チームやオリンピック強化練習を見て、数年前から九大でも少しずつ行なっているのだが、まだその練習が持つ大きな効果に気付いている学生は少ない。

最小半径でのサークリングは方向変換の動き(タック、ジャイブ、ベアリング、ラフィング)の4つの動きそのもののみで構成されている。これが最小半径でなく少し間に直線的帆走が入るような半径のサークリングでは少し効果と意味合いが異なる練習になる。

最小半径ではヘルムの切り替えが連続するので、ボディバランス(体の動き)とセイルのトリムに素早さが要求される。最小半径であるという事は極値であるとも言い換えられる。よって最も難しいが、最も短時間で大きな効果となる可能性を秘めている練習であるとも言えるのではないだろうか。

この最小半径のサークリングを微風から強風まで艇速が一定(又は加速しながら)10回程度同じ場所で完璧に行なえる艇はそれだけでかなりの腕前である事が分かる。

経験的には3〜5m/sの風で直径5〜6m程度、8m/sオーバーの風で1215m程度、2m/s以下の風では3〜4m程度のサークルになる。

この最小半径のサークリングで重要な事は次の2点です。

@     艇速を落とさないこと(タックやベアー直前でよく減速し易い)

A     舵の切り角度がほぼ一定であること(円を描くのだから当然なのだが、これが難しい)

この2点に注意して、ボディバランスとセイルの出し入れのみで艇のヘルムと速度をコントロールする訳です。

よく目にする現象とその原因とアドバイスを次に列挙します。

     思うようにベアーできない。

⇒メインシートがスムーズに出ていない。

⇒身体を外に出しながら手を頭の上まで挙げて長くシートを持ち、シートを放す。極端だが、先ずこれでブームが抵抗なくスムーズに出る感じとヘルムが切り替わるのを体感する。

     ジャイブ後にメインシート引きが遅くなる。

⇒ティラーとシートの持ち替えに時間が掛かりすぎて艇の動きに付いてゆけてい   ない。

⇒ベアーを逆手で行なう。つまりティラーを持ち替えないで行なうようにする。間違いなくジャイブ後のシート引きは早くなる。これでジャイブ後のあるべき姿を先ず把握するようにする。(サイドマークの混戦ではオリンピック選手でも場合によっては逆手で行なうこともあるらしい。)

     タックで止まり易い。

⇒タックが遅れている。動作が遅い。

⇒ラフィングの延長線上でタックするようにする。風位付近ではバウをボディバランスで動かすというロールタックの動きをいつでも意識して行なうようにする。順風でも波があるとこの動きが必要になる。微風時のみロールタックではない。

     ラフィング時に艇が流れたり、パワーが抜けたりする。

⇒セイルトリムによってヘルムを大きくする事が出来ていないマークを見てティラーが無意識の内に動いてしまい迎角が急激に変化してしまっている。

⇒ジャイブでメインを出し過ぎるのもだめだが、出したりないのもダメ。メインを出す量を自分なりに探ってみる事。もう一つはヘルムと体の動きにティラーが引き摺られて動いてしまっている。メインシートを引く込む時にティラーがピクリとも動かないで行なえるように先ず練習する。ハイクアウトに出るときにもティラーは動かないようにする。

 

以上4点がクリアー出来るようになれば、かなりスムーズな艇の動きになる筈です。

石橋・後藤チームは半日間このサークリングを納得が行くまで2週間以上やったそうですが、単純そうな練習も求めるものが高ければ極めて大きな効果をもたらします。まあ、荒木・八木チームが少し出来た事もあるので学生でもやれば出来るでしょう。

20回+休憩1分)×5セット×左右回りで約40分〜1時間の練習でしょう。よく上手くいかないからといって途中でやめてしまう意思の弱い艇がいますが、それでは意味がありません。とにかく20回は止めずに回るのです。回りながら修正してゆくのです。これは徹底してください。クルーと相談という理由で途中の休憩を長くとる艇がいますがこれもダメです。体で覚えるのですから回りながら修正してゆくべきです。20回でなく40回できる艇は40回でも構いません。大抵、スキッパーが精神的に耐えられず途中で止めてしまうようですが、この練習はクルーの動作の練習でも或る訳です。何事も徹底してやらなければ短時間では進歩しません。そして継続が必要です。望むべき動きまで到達していないのに何故か止めてしまう傾向がありますので気を付けて下さい。