一度掲載した内容だが、もう一度深く考察してみる。
新チームになって1年生+2年生、1年生+3年生の新しいコンビで練習が始まった場合に、最も効果的な動作練習は何だろうか?
ヨットレースを動きという事から大きく捉えてみると、或る程度真っ直ぐに帆走する帆走状態と方向変換の動き(タック、ジャイブ、ベアリング、ラフィング)の組み合わせである事が分かる。或る程度真っ直ぐなコースを走る動きは一般的な帆走練習で行なうし、方向変換の動きはマーク回航練習(短いマークの場合には動作練習とも言っている)で行なっている。初心者〜中級者(上級者も含むかな)までに於いて、この動作練習を最も短時間で上達させ得る練習の一つが最小半径でのサークリング練習のように思う。
福岡経済大学や石橋チームやオリンピック強化練習を見て、数年前から九大でも少しずつ行なっているのだが、まだその練習が持つ大きな効果に気付いている学生は少ない。
最小半径でのサークリングは方向変換の動き(タック、ジャイブ、ベアリング、ラフィング)の4つの動きそのもののみで構成されている。これが最小半径でなく少し間に直線的帆走が入るような半径のサークリングでは少し効果と意味合いが異なる練習になる。
最小半径ではヘルムの切り替えが連続するので、ボディバランス(体の動き)とセイルのトリムに素早さが要求される。最小半径であるという事は極値であるとも言い換えられる。よって最も難しいが、最も短時間で大きな効果となる可能性を秘めている練習であるとも言えるのではないだろうか。
この最小直径のサークリングを微風から強風まで艇速が一定(又は加速しながら)10回程度同じ場所で完璧に行なえる艇はそれだけでかなりの腕前である事が分かる。
経験的には3〜5m/sの風で直径5〜6m程度、8m/sオーバーの風で12〜15m程度、2m/s以下の風では3〜4m程度のサークルになる。
この最小半径のサークリングで重要な事は次の2点です。
@ 艇速を落とさないこと(タックやベアー直前でよく減速し易い)
A 舵の切り角度がほぼ一定であること(円を描くのだから当然なのだが、これが難しい)
この2点に注意して、ボディバランスとセイルの出し入れのみで艇のヘルムと速度をコントロールする訳です。
よく目にする現象とその原因とアドバイスを次に列挙します。
◆ 思うようにベアーできない。
⇒メインシートがスムーズに出ていない。
⇒身体を外に出しながら手を頭の上まで一杯に挙げて長くシートを持ち、シートをスムーズに出す。極端だが先ずこれでブームが抵抗なくスムーズに出ることとヘルムが切り替わるのを体感する。
◆ ジャイブ後にメインシート引きが遅くなる。
⇒ティラーとシートの持ち替えに時間が掛かりすぎて艇の動きに付いてゆけていない。
⇒ベアーを逆手で行なう。つまりティラーを持ち替えないで行なうようにする。間違いなくジャイブ後のシート引きは早くなる。これでジャイブ後のあるべき姿を先ず把握するようにする。(サイドマークの混戦ではオリンピック選手でも場合によっては逆手で行なうこともあるらしい。)
◆ タックで止まり易い。
⇒タックが遅れている。動作が遅い。
⇒ラフィングの延長線上でタックするようにする。ラフィングの艇速が思うように出せなかった場合には、風位付近ではバウをボディバランスで動かすというロールタックの動きをいつでも意識して行なうようにする。順風でも波があるとこの動きが必要になる。微風時のみロールタックではない。
◆ 下Mのラフィング時に艇が流れたり、パワーが抜けたりする。
⇒セイルトリムによってヘルムを大きくする事が出来ていないM(マーク)を見てティラーが無意識の内に動いてしまい迎角が急激に変化してしまっている。
⇒ジャイブでメインを出し過ぎるのもだめだが、出したりないのもダメ。メインを出す量を自分なりに探ってみる事。もう一つはヘルムと体の動きにティラーが引き摺られて動いてしまっている。メインシートを引く込む時にティラーがピクリとも動かないで行なえるように先ず練習する。ハイクアウトに出るときにもティラーは動かないようにする。
⇒ヒールを思うように制御(or利用)出来ていない。ラフィングで微ウェザーが必要なのに艇はフラットのままメインセイルを引き込んでくると艇の進行方向が切り替わっていないのでどうしても大きな弧を描いてしまい下Mを大きく膨らんで廻ってしまう。風の強さに合わせてメインセイルを引き込んでいって発生するウェザーヘルムの大きさの違いによってヒールも使い分けなければ思うようなイメージのラインでラフィングは出来ない。スキッパーの足腰が弱いとどうしようもない。
以上4点がクリアー出来るようになれば、かなりスムーズな艇の動きになる筈です。
石橋・後藤チームは半日間このサークリングを納得が行くまで2週間以上やったそうですが、単純そうな練習も求めるものが高ければ極めて大きな効果をもたらします。まあ、荒木・八木チームが少し出来た事もあるので学生でもやれば出来るでしょう。
(20回+休憩1分)×5セット×左右回りで約40分〜1時間の練習でしょう。よく上手くいかないからといって途中でやめてしまう体力と意思の弱い艇がいますが、それでは意味がありません。とにかく20回は止めずに回るのです。回りながら修正してゆくのです。これは徹底してください。クルーと相談という理由で途中の休憩を長くとる艇がいますがこれもダメです。体で覚えるのですから回りながら修正してゆくべきです。20回でなく40回できる艇は40回でも構いません。大抵、スキッパーが精神的に耐えられず途中で止めてしまうようですが、この練習はクルーの動作の練習でも或る訳です。何事も徹底してやらなければ短時間では進歩しません。そして継続が必要です。九大は特に、望むべき動きまで到達していないのに何故か、焦って他の細切れで多種類の練習を入れてしまう傾向にあります。土日だけの練習のチームと高校生のように毎日乗るチームでは効果的な練習方法は当然異なる筈ですよね。5月になっても、8月になっても回航動作が中途半端にしか出来ていないので再び時間を割いて練習しなくてはならなくなります。本当は合同回航練習でタクティクスや精神面の強さやレース戦術や勝負勘を養いたい時期なのですが.....。
さて、上下Mの距離で区別すると最小直径とその3倍程度の直径、10〜15倍程度の直径径の練習が考えられますが、それぞれ意識すべきポイント(求めるもの)が異なります。
次回は最小直径の3倍程度のサークリング(回航?)について考えて見ます。
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