アルジェリア事件:テロ被害、各国の補償に格差
毎日新聞 2013年02月04日 15時00分
日本人など多くの外国人が殺害されたアルジェリア人質事件では民間人を巻き込んだイスラム武装勢力のテロに対し各国政府が非難の歩調を合わせるが、被害者の救済制度にはばらつきがある。国外でのテロへの補償の考え方に違いがあるためだ。米英仏は国外でのテロ被害に公的な経済支援制度を整備しているが、日本では海外の事件は犯罪被害者給付制度の対象外。識者からは公的補償の整備を求める声が上がる。【川名壮志、加藤隆寛】
◇日本、国外は対象外
アルジェリアの事件で死亡が確認されたのは日本10人、フィリピン8人、英国、米国各3人、フランス1人など。ただし被害者救済制度はまちまちだ。
◇米は9・11契機
このうち米国は01年の米同時多発テロ後、米連邦捜査局(FBI)が日本の地下鉄サリン事件(95年)を含む海外テロを分析。発生場所を問わず、国外でも経済支援できるよう法整備した。被害者家族の現地への渡航費や宿泊費、葬儀代など短期的な支出に加え、医療費などについても補償する。
英国も、テロのグローバル化に伴い被害者救済法を整備。昨年から国外テロも補償対象に加えた。フランスはテロに限らず一般犯罪でも国外事件の被害者に補償するなど支援に積極的だ。
◇労災適用は限定的
しかし、日本の犯罪被害者給付制度は適用対象を国内の事件に限定し、フィリピンも同様とされる。
ただし、日本では国が義務づける労災保険は海外出張も適用対象で、特別規定に基づき会社が申請していれば海外勤務でも補償を受けることが可能だ。今回の事件で社員らが巻き込まれたプラント大手「日揮」(横浜市)はこの申請の有無を「ノーコメント」とするが、関係者は「被害者には相応の経済支援がなされる」と明かす。とはいえ、特別規定に基づく申請は海外居住者約75万人(永住者を除く)のうち13万人にとどまるとされる上、家族や旅行者には公的補償は及ばない。
人質事件では安倍晋三首相が最大限の配慮をするとして遺体を政治判断で政府専用機で搬送した。08年にアフガニスタンで殺害された非政府組織ペシャワール会の伊藤和也さん(当時31歳)のケースではこうした支援はなく、遺体搬送費は年間20万円以上支払った民間の海外旅行保険でまかなわれたという。