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(48)情報提供「理解深めて」/東北電力休職中のボランティア・滝沢勇人さん
 | 被災地を訪ねて取材を重ねる滝沢さん=宮城県亘理町 |
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宮城県沿岸部の津波被災地に対する理解を深めてもらおうと、泥かきなどのボランティアをした男性が被災地ガイドブックの作成に取り組んでいる。東北電力社員の滝沢勇人さん(43)=仙台市青葉区=は、社会貢献に関する休職制度を利用。津波の被害が大きかった宮城で活動するため、居住地を福島市から仙台に移し、情報提供による復興支援を目指す。
◎津波被災地のガイドブック出版へ
<15市町を網羅> 「3月中にはガイドブックを出版できるよう、情報の収集と編集の追い込み作業中。被災地の現実を多くの人たちに伝えたい」 ガイドブックは沿岸部の15市町を網羅。震災前と直後の写真、仮設商店街の場所、宿泊できる施設、仮設住宅に住む人たちが作る復興商品などを掲載する予定だ。 国の被災地での雇用創造事業に認定され、出版経費は200万円を上限に事業費から支出される。 事業認定を受けた直後の昨年11月から、毎日のように津波被災地を訪問。商店主に客足の回復具合をインタビューしたり、商店街の写真を撮ったりして取材を重ねる。 「間もなく丸2年になるのに、多くの被災者は元の生活を取り戻せない。支援はまだまだ必要だ」。ガイドブックを参考に、被災地を訪れる人が増えてほしいと願う。
<訪問の手助け> きっかけは、宮城県災害ボランティアセンターに登録して活動する中で、全国から訪れる支援者らから「被災地のどこに行けば何があるのかが分かる冊子が欲しい」との声を聞いたことだった。 自分のスキルに即した活動場所を探したいが、現地の状況が分からず悩んでいる人がいた。買い物を通じて支援しようと沿岸部を訪ねても、仮設商店街の場所が分からず道に迷ってしまった人もいた。 「もどかしい気持ちは自分の中にもあった」と滝沢さんは振り返る。 今後の防災のため視察に訪れるのは東北以外の団体が多く、今は更地になってしまった南三陸町や女川町などの街並みを知る人は少ない。 滝沢さんは30代のころ、仕事で気仙沼市など沿岸部に行くことが多く、被災前の風景をしっかり覚えている。海と山の間のわずかに広がる平地に家や商店、水産加工場が張り付いていたことは、いくら説明しても伝えきれないと感じていた。生活の記憶と現在を記録したいと思った。 ボランティア活動を始めたのは、福島支店に勤務していたおととし5月。電力復旧業務にめどが立ったため、休日に南相馬市で泥かきをした。 痛感したのは被災地の惨状だった。「復興は長期戦になる」。ボランティアに打ち込むことを決め、7月に休職し夫婦で仙台に移り住んだ。期間中は無給となるのに、妻は活動に理解を示してくれた。 「福島は原発事故のため活動が限られていた上、宮城や岩手の情報が入ってこなかった。幅広く情報を得るため、仙台を活動拠点にした」
<進む風化懸念> 出身は東京。山形大に進学して東北と縁ができた。東京の知人に被災地の今を伝え、ボランティアの必要性を訴えると「まだそんな状況なの」と驚かれる。「震災は既に風化している」と唇をかむ。 「被災地を訪ねれば、新しい『気付き』が生まれるはず。もっと多くの人たちが被災地を訪ね、この国で起きた現実を見据えてほしい」。ガイドブックはインターネット上などで販売する。 休職制度は最大2年間のため、7月には福島支店に復職する。それでも仙台に住み、ボランティア活動を続けるつもりだという。
2013年03月02日土曜日
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