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放射線 放射性物質 Q&A 「慢性甲状腺炎」原発事故との関連は

 健診で「甲状腺が腫れている」と言われたため、病院で検査を受けると、「慢性甲状腺炎」と診断され、治療が必要と言われました。東京電力福島第一原発事故に伴う放射線被ばくとの関連はあるのでしょうか。

【回答者】県放射線健康リスク管理アドバイザー・長崎大大学院教授(放射線医療科学専攻) 高村昇さん

■中年層以降の女性に多い 「被ばく」原因考えにくい

 慢性甲状腺炎は一般的に中年層以降の女性によく見られる病気です。典型的な症例では甲状腺のびまん性の腫大、つまり甲状腺全体が腫れ上がってくる現象が起きます。慢性甲状腺炎の患者は特に症状もなく経過することも多いですが、中には甲状腺ホルモンの低下、つまり甲状腺機能低下症を呈する方が出てきます。
 甲状腺ホルモンは、エネルギーの代謝や自律神経系の調節、つまり人間の活動のバランスを保つという非常に大切な働きをしています。このため甲状腺ホルモンが低下し過ぎると、甲状腺の腫大に加えて皮膚の乾燥や便秘、体重増加といった症状が見られます。
 このような症状はいわゆる更年期障害でもしばしば見られます。このため甲状腺機能低下症が更年期障害と誤診され、見過ごされている場合があり、注意が必要です。甲状腺機能低下症の治療の基本は甲状腺ホルモン剤を内服することです。きちんと内服すればホルモンレベルをコントロールできます。
 頭頸部(けいぶ)のがんを放射線で治療することによって甲状腺が極めて高い線量(30シーベルト以上)を被ばくすると、甲状腺機能低下症が起きることが知られています。一方で、原爆被爆者やチェルノブイリ原発事故の被災者においても、これまでのところ、被ばく線量と甲状腺機能低下症の関連は示されておらず、現在の県内の状況であれば、放射線被ばくによる甲状腺機能低下症の発症は考えにくいと思われます。

カテゴリー:放射線 放射性物質 Q&A

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