調査が行われる上川町白水沢地区は
現地調査が行われるのは、大雪山国立公園の中の上川町白水沢地区です。この地区では、昭和40年代に道が地熱発電所の建設を計画し、その際に行われた掘削調査で4万キロワットの発電が可能な熱源があることが確認されました。
しかし、自然環境への影響を心配する当時の環境庁の開発許可が得られず、計画が頓挫しました。
その後、上川町では、原発事故を受けて自然エネルギー導入の必要性が高まっていることなどから、去年11月、地元の温泉組合などと地熱発電の開発について話し合う協議会を発足させ、議論を進めてきました。
地元協議会で調査を“了承”
2月26日に開かれた協議会には、町や地元の温泉組合、それに大雪山国立公園内で地熱発電事業を計画している大手総合商社「丸紅」の担当者など、およそ20人が出席し、地熱発電所の設置に向けた現地調査の実施について話し合いました。
このなかで「丸紅」の担当者は、地面に測定機器を設置し、電磁波を使って熱源の位置や規模などを調べる「地表調査」を行う計画を示しました。地表調査は、地熱発電所の設置に向けて現地で最初に行われる調査で、発電が可能な熱源が確認されれば、実際に地面に穴を掘る掘削調査が行われます。この計画に対し、出席者から、特に異論は出ず、了承されました。
これを受けて丸紅では環境省の許可を得たうえで、雪どけを待って、ことし6月にも地表調査を行うことにしています。
国立公園での地熱調査は全国初
地熱発電を巡っては、原発事故を受けて、去年3月、環境省が国立公園での開発規制を緩和しています。
現在、国立公園での地熱発電の開発計画は大雪山国立公園のほか、同じ北海道の阿寒国立公園と福島県の磐梯朝日国立公園で出ていますが、開発に向けた動きが具体化するのは全国で初めてです。
上川町の佐藤芳治町長は「地熱開発は町の長い間の夢だった。ほかの地域のモデルケースになるよう進めていきたい」と話していました。
事業化に向け課題も
一方で、地熱発電の事業化に向けては課題は少なくありません。
今回、地熱発電所の設置が計画されている場所は、国立公園の中でも保護が必要な「特別地域」になっています。実際に掘削などを行う場合、事業者は自然保護団体を含め、改めて地元での合意を得なければなりません。また、近くには道内でも有数の温泉地、層雲峡温泉があり、温泉組合は、お湯の量や泉質に影響が出るおそれがある場合、開発は認めないとしています。
層雲峡温泉旅館組合の西野目信雄組合長は「温泉の枯渇をいちばん懸念している。調査の結果をみて影響がある場合には、即、中止をお願することになる」と話していました。
地表調査の結果は、1年程度で明らかになる見込みです。自然エネルギーへの関心が高まるなか、地熱発電の開発をどのように進めるのか、事業者や町には今後も慎重に議論を進めることが求められます。