秋田新幹線脱線:救助まで6時間 乗客「対応遅すぎる」
毎日新聞 2013年03月03日 東京朝刊
北国を駆け抜け、風雪に強いはずの秋田新幹線が2日、猛烈な吹雪の中で立ち往生した。秋田県大仙市のJR奥羽線を走行中に脱線した「こまち」25号。幸い乗客約130人にけがはなかったが、現場は一時「吹雪で前が見えず、息もできない状態」だったという。記録的な豪雪の中、乗客たちは午後10時過ぎにバスに乗り換えるまで、車内で救助を待ち続けた。【田原翔一、水戸健一、仲田力行、池田一生】
脱線したのは午後4時5分ごろ。東京から観光に来たという自営業の男性(38)は、「ガガッ」という音を聞いた。その後、間もなく「異音がしたため、確認のため停車します」「雪に乗り上げました」などの車内放送が響いた。こまちは当時、時速20キロに減速して運転しており、止まるまで異常に気づかない乗客も多かったが、車体が一瞬浮いたように感じた乗客もいた。
4両目に乗っていた東京都在住の男性会社員(27)は、音や揺れを感じることはなく、脱線はインターネットの報道で知ったという。秋田市の男性会社員(75)によると、車内放送で「脱線した」というアナウンスがあったのは、事故から1時間以上たってからで「対応が遅い」と憤りを感じた。乗務員が飲料水と乾パンを配ったが、長時間の拘束にいらだつ乗客もいた。
乗客らが大型バス3台などへの乗り換えを始めたのは、脱線から約6時間経過した午後10時5分ごろ。
60代女性は「車両の中は暖房が利いていた。座っているだけだったので、疲れた」とぐったりした様子。神奈川県秦野市から家族4人で法事に来た男性会社員(61)は「もっと早く手を打ってほしかった。対応が遅すぎる」と言い、妻(61)も「もっと明るいうちに判断してほしかった」。秋田県内の友人に会う予定だったという神奈川県の葭谷(よしたに)秀哉さん(46)も「長い間閉じ込められ、おなかがすいたよ」とうんざりしたように話した。
◇息もできぬ猛吹雪
脱線現場近くは猛吹雪に見舞われていた。近くの会社員、今野裕美さん(34)は事故が気になり、午後6時ごろ約100メートル離れた踏切まで様子を見に行った。「息もできないほどの吹雪だった。踏切に行くのにも苦労した」。踏切周辺にはパトカーが3台止まり、続々とJR関係の車両が集まってきた。警察官が一般車両の通行を規制し「この先で脱線している。救助には除雪がまず必要で、除雪車を優先して通行させる」と言われたという。