ロシアのウラル地方を襲った隕石(いんせき)の落下・爆発では、住民が撮影した迫力満点の映像が世界を駆け巡った。携帯電話もさることながら、乗用車に搭載されたドライブレコーダーが、隕石の航跡を鮮明にとらえていて印象的だった。
ロシアでは、ドライブレコーダーの普及がめざましい。報道によれば、昨年の売り上げは前年比5倍の130万~150万台と推計され、世界で最もドライブレコーダーが売れている国の一つなのだという。
全般的な所得水準が決して高いとはいえないロシアで、なぜなのか。
まずは事故の際に自らの正しさを証明するため。この点は先進諸国も同じだろうが、ロシアでは警察に対する不信が大変強い。警官も裁判官も、簡単に権力や賄賂になびく存在だと考えられているのだ。
交通トラブルに起因する暴力沙汰が非常に多いことも背景にある。たとえば、野球のバットが自動車用品店で売られているのだが、これはバットをスポーツ用品でなく、路上での襲撃もしくは防御の道具だと認識しているからにほかならない。
いずれにせよ、わが身を守るには「動かぬ証拠」が何より。隕石をとらえたドライブレコーダーは、ロシア社会に特有のギスギス感も映し出していよう。(遠藤良介)