田中栞日記

「日本豆本協会」も3年目になりました。「特製しおりセット」(限定50部)販売中!

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折紙豆本の原作者

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…… 私が折紙豆本を教わった時 ……
………………………………………………
 5月18日のブログで書いた折紙豆本について、その後色々なことがわかった。
「折紙豆本を作ろう!」
http://blogs.yahoo.co.jp/azusa12111/32282354.html
 
 そもそも、私がこの「1枚の紙を糊もハサミも使わずに折るという行為のみで本を作る」という折紙の方法を教わったのは、1985年〜1988年6月までの期間のうちであったと思う。
 というのは、教えてくれたのが前夫の母上だったからだ。彼とは6月に離婚しているので、教わったのがこれより後でないことは確かだ。

 彼女は、知合いの人から教わったと言って、手描きの図解を私にくれた。
 そこに添えられたメモによると、図解をしたのは高濱利恵さんという方で、折り方を考え出した原作者は「デビッド・ブリル」というイギリス人であるということだった。
 私は折紙の世界には不案内だったので、それをそのまま信じて約20年の歳月は過ぎた。

………………………………………
…… 原作者は別人だった ……
………………………………………
 ところがこのたび、よろず情報探索専門官のAra_iyayon氏の調査のおかげで、新事実が判明した。
 折紙本の折り方は、何種類かバリエーションがあるとは知っていたが、そのほぼ全貌が概観できる本を氏が見つけてきてくれたのである。             

 本は笠原邦彦編著『おりがみ新世界』(1989年9月、サンリオ、B5判271頁)で、本書の中に「かわいい本」というタイトルのもと、おりがみで作る本の折り方が9種類掲載されていた。
 9種類とはいっても、バリエーションといえる方法も含まれているので、基本的には次の4種類に分類することができると思う。
 
 A.本文紙が4頁しかない本
 B.正方形の折紙で作る、本文紙が8頁の本……ブリル方式
 C.長方形の折紙で作る、本文紙が8頁の本……ウォール方式
 D.ハサミを使用する方法

 私が折り続けてきた方法は長方形の折紙で作る本文紙が8頁の本で、糊もハサミも使用しない。
 本書に掲載してある図解はかなりの部分が同時進行で描かれているものの、折り方・構造ともに、私が折ってきた方法はCと等しいことがすぐにわかった。考案者はデビッド・ブリルさんではなく、マーチン・ウォールという人であった。
 山口真『暮らしの折り紙雑貨』(ナツメ社、2004年11月)に掲載されている図解が私の折ってきた方法とかなり近いが、構造的にはこれはウォールさんのものと同一である。

……………………………………………
…… 原作者はウォールさん? ……
……………………………………………
 誰が原作者なのかという検証は、門外漢の私にはできないが、次の資料が一つの示唆を与えてくれる。

 桃谷好英『くらしの中のおりがみ』(誠文堂新光社、2006年7月)の中に、「メモ帳(模造)」という項目があり、そこで桃谷氏が「1枚の紙で本を折るというアイディアは、約40年前にイギリスのデビッド・ブリルさんが考えだし、ほぼ同時期にマーチン・オールさんが簡単なノートの折り方を示しました」とコメントしている。
 桃谷氏は、ブリル方式を応用してページを増やした方法を図解し、「考え方は同じなので、模造品としました」と書く。
 この本には「オールさん」の方法は図解されていないが、「オールさん」の折り方がCの方法を指していることは明らかで、つまり「オールさん」がほぼ40年前(1966年頃)に考案したと読みとれる。

 ところで、桃谷氏は同じシリーズで、この本の3年半ほど前に『おりがみバラエティー』(誠文堂新光社、2003年1月)という本も出している。
 この本を見ると、中に「本」という項目があって、そのコメントに「折り紙で小さい本を折るという着想を、25年ほど以前に英国を訪問したときディビッド・ブリルさんが見せてくださいました。若い学生だったマーチン・オールさんも別の折りかたの本を作ってくださいました」とある(ここに掲載されている図解も、ブリル方式のバリエーション)。

 以上2冊の記述を総合すると、次のようになる。
 桃谷さんは、1978年頃に訪問先のイギリスでブリルさんと会い、Bの方法の折り方を披露された。この方法は、ブリルさんが1966年頃考案したものであった。このイギリス訪問では若い学生のマーチン・オールさんとも会うことができ、彼はブリルさんとはまた違う折り方で本を折って見せてくれた(Cの折り方)。オールさんも、ブリルさんとほぼ同じ1966年頃に、この折り方を考案したそうだ。……ということになる。

 この記述で気になる点が一つある。それは、1978年頃に「若い学生」だったオールさんが、Cの折り方を1966年頃に思いついたというエピソードである。
「若い学生」が何歳なのかを特定するのは難しいが、仮に大学4年生(22歳)と仮定しても、1966年といえば12年前のことになるから、オールさんがこの折り方を考え出したのは「10歳の時」ということになる。
 天才少年ならあり得ることなのかも知れないが、ほんの少し心配な気持ちは残る。
……とはいえ、以上の資料から、私が約20年前に教わった「折紙本」の折り方は、デビッド・ブリルさんではなく、マーチン・ウォールさんのほうが原作者なのだという印象を現在の私は抱いている。

 これについて、他に何か明確な資料を発見された方は、ぜひご教示のほどをお願いする。

 ともあれ、こうしてAra_iyayon氏の調査のおかげで様々な資料的裏付けが得られたのは、大変嬉しいことであった。ここに改めて感謝を申し上げたい。

*画像は、笠原邦彦編著『おりがみ新世界』より、1枚目・口絵、2枚目・本文より、3枚目・奥付

`〜〜〜〜〜〜〜・・ご・・案・・内・・〜〜〜〜〜〜〜〜〜
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私も おりがみ新世界 が分厚い本なので
びっくり 削除

2007/5/31(木) 午前 5:27 [ ykom ]

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へ〜いやあ、今回の調査内容はおもしろく読みました。ブリルさんとマーチンさんとの邂逅が興味深いですね。折り紙豆本にはそんな歴史があったのですね・・・しかしいちご新聞のサンリオがこういった本を刊行していたとは!しかもボリュームがある!ISBNコードももうある時代なのですね 削除

2007/5/31(木) 午前 11:41 [ bonnie8471 ]

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『おりがみ新世界』はまるで研究書のような本ですね。版元がサンリオということで、幼児向けキティちゃん本のようなイメージで図書館へ行ったら、とんでもなかったです。

2007/5/31(木) 午前 11:41 [ 田中栞 ]

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