マイナンバー法案閣議決定 米ではトラブルもあるようです。
政府は、国民1人ひとりに、社会保障と税の共通番号を割り当てるマイナンバー法案を閣議決定しました。
アメリカでは、連邦政府が管理する社会保障番号が市民に広く定着していますが、行政のミスで死亡扱いされるなど、思わぬトラブルもあるようです。
甘利経済再生相は「社会保障・税番号制(マイナンバー)は、一言でいえばですね、情報化社会のインフラです。これがないと、情報化社会は事実上、限界があります」と述べた。
1日、政府は、国民1人ひとりに社会保障と税の共通番号を割り当てる、マイナンバー法案を閣議決定した。
これまでバラバラだった年金など、社会保障の受給や納税実績などの情報を、1つの番号で管理するもので、2016年1月からの利用を目指している。
行政事務の効率化や、手続きの簡素化が期待できる反面、プライバシーの保護や情報の流出などが懸念材料となっている。
アメリカでは、1935年にソーシャルセキュリティーナンバー制度が成立した。
日本と異なり、戸籍や住民票といった制度がないため、9桁の数字が連邦政府が発行する唯一の身分証明だが、トラブルも絶えないという。
コンスタンス・S・スミスさんは「どうやって生きていると証明していいかわからなくて絶望したわ」と話した。
フロリダ州に住むスミスさんは、過去に2度、死んだことにされた経験を持っている。
1度目は2008年の大統領選挙前。
スミスさんは「民主党の選挙管理委員会から『死亡を受けて有権者リストから削除する』という手紙を受け取り、最初は冗談かと思ったわ」と話した。
スミスさんは、電気・水道などの明細や、給与明細などを州政府に提出し、実に4カ月をかけ、間違いを直してもらった。
しかし、2012年の選挙前に、また同じことが起こった。
調べたところ、同じフロリダ州に住む同じ生年月日で、同姓同名の女性が亡くなっていたことがわかった。
その女性と間違えて、スミスさんのナンバーが「死亡扱い」とされてしまい、スミスさんは、運転免許証を取り直さなければならなかった。
ソーシャルセキュリティーナンバーをめぐっては、不法移民が職を得るために盗んだり、死んだ家族に成り済ましてナンバーを使い続け、年金を受け取るなど、いわゆるID詐欺も多く起きている。
全米で年間1,000万人が被害に遭い、過去5年間、全米で最も多い犯罪はID詐欺となっている。
ID詐欺の件数が全米1位のフロリダ州では、被害の相談にあたるヘルパー資格を得るための講習会も開かれている。
講習会の会場には、早朝にもかかわらず、30人以上の参加者が集まっていた。
講師は「犯罪者はあなたのお金ではなく、ソーシャルセキュリティーナンバーが欲しいのです。名前、ソーシャルセキュリティーナンバー、生年月日があれば新たな人間がつくり上げられるのです」と述べた。
フロリダ州コーリアー郡警察経済詐欺対策課のチャド・パーカー警部補は「最大の問題は、アメリカがソーシャルセキュリティーナンバーを導入した時に、情報をリンクさせすぎたことです。ソーシャルセキュリティーナンバーは国民の身分証明書になってしまい、あまりにも権限を持ちすぎた。そして犯罪者にとって、魅力的になりすぎたんです。日本は各国の状況を調べて、われわれの失敗から学んでくれると信じています」と話した。
アメリカの制度を、他山の石とすることができるのか。
情報流出などへの対応が今後の課題となる。