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国際結婚が失敗した場合、相手に無断で国外に子どもを連れて帰国することを禁じるハーグ条約に、日本が加盟する方針を政府が固めた。夫の家庭内暴力(DV)から逃れる妻や子どもまで対象になりかねない。全国的な課題だが、米兵と結婚する女性が多い県内では、より身近で深刻だ。
「沖縄の女性にとっては心配ばかり」。米国で約10年暮らし、「オキナワ・海を渡った米兵花嫁たち」の著書があるフリーライターの澤岻悦子さんは言う。
沖縄女性が米国の裁判所で親権を争った2件を取材したが、2件とも女性の敗訴だったという。「米兵は数年で転勤を繰り返すため、妻は定職が見つからない。経済的基盤がない、英語も満足に話せないと判断されてしまった」と説明する。
「多くの女性にとって、子どもを連れ帰るのは最後の安全弁。日本政府は米国の言いなりではなく、もっと自国民の権利を守る姿勢で交渉すべきではないか」と指摘する。
米軍人・軍属との交際や結婚のトラブルについて、県内で相談に応じているウーマンズプライドのスミス美咲代表は、「加盟自体は、避けられない国際的な流れ」と捉える。既に80カ国以上が加盟する条約の内容を論議するよりも、これから日本の国会で審議される国内法や、国際離婚した家庭への支援を「実態に合ったものにすることが大事」と強調した。
元夫が養育費を払わない場合も多く、経済的に余裕のない家庭では子どもは日本の公立学校に通わざるを得ない。「子どもには語学などバイリンガルとしての教育が必要。日本から米国へ養育費を請求しやすくする制度を整え、経済的に安定するようにしてほしい」と話した。
一方、元米兵との間に生まれた子を一人で育てる那覇市の女性(43)は、条約加盟を歓迎する。この女性の場合、元米兵が米国に連れ去ろうとする場合も考えられるからだ。ただ、自身は結婚を選ばなかったため、条約の対象外。「籍を入れるかどうかで差が出るのはおかしい」と、政府に対応を求めた。