特集ワイド:集団的自衛権行使 本当に国益にかなうのか 首相が意欲、憲法解釈の見直し

毎日新聞 2013年01月23日 東京夕刊

2011年の日米共同演習で、艦尾に星条旗を掲げた掃海艇と並んで着岸した海上自衛隊の艦船=鹿児島市の鹿児島港で、安達一成撮影
2011年の日米共同演習で、艦尾に星条旗を掲げた掃海艇と並んで着岸した海上自衛隊の艦船=鹿児島市の鹿児島港で、安達一成撮影

 ◇ギブ&テークの幻想、米国を意識した容認論

 安倍晋三首相が「集団的自衛権」の行使を禁じる憲法解釈の見直しに意欲を見せている。行使を容認することが米国との同盟関係強化につながり、ひいては安全保障上のプラスになる、ということらしい。与党内部にさえ慎重論があるこの議論、周辺諸国との緊張が続く今、根っこから考えてみたい。【井田純】

 「集団的自衛権とは、簡単に言えば“人のけんかを買って出る権利”のことです」。こうかみ砕いてくれたのは思想家の内田樹(たつる)さん(神戸女学院大名誉教授)だ。自身のブログでは、安倍首相や橋下徹・日本維新の会共同代表らの行使容認論の背景に、米国と心中したいという「抑圧された欲望」があるのでは、とやゆしている。

 硬い言葉で説明すると「自国と密接な関係にある国が武力攻撃を受けた際、自国が直接攻撃されていなくても実力で阻止する権利」。国連憲章51条が「安全保障理事会が必要な措置を取るまでの間」との留保付きで加盟国に認めている。日本の内閣法制局は「我が国にも権利はあるが、憲法9条が認める必要最小限の範囲を超え、行使はできない」との解釈を取る。

 第1次安倍内閣が設置した有識者懇談会が08年に出した報告書は、憲法解釈の見直しが必要なケースとして(1)公海上で攻撃された米軍艦船の防護(2)米国を狙った弾道ミサイルの迎撃(3)国連平和維持活動(PKO)に参加中に攻撃された他国軍の救援(4)戦闘地域での他国軍への後方支援−−を挙げた。安倍首相は、自らの辞任で「お蔵入り」になったこの報告書をベースに議論を進めたい意向だ。

 「容認すべし」派が特に強調するのが「米国が攻撃されるのを同盟国の日本が座視していていいのか」という議論だ。自民党の石破茂幹事長は「米国に向けて発射されたミサイルを日本が落とさなかったら、日米同盟はどうなるのか」としばしば言及している。

 だが、元外務省国際情報局長の孫崎享(うける)さんは「日本が北朝鮮のミサイルを迎撃するのは不可能」と指摘する。「仮に北朝鮮が米国めがけて大陸間弾道ミサイルを撃てば、高度1000キロ以上の上空を飛びます。自衛隊に配備されているミサイルは高度100〜200キロ程度までしか届かない。そもそも米国に向かうミサイルは北極を通りますから、日本上空を飛びません」

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