天才TVゲーム少年・石野あらしが、摩擦熱で火が出るほどレバーをはじいて敵の弾をよける「炎のコマ」など奇想天外な必殺技を駆使し、ライバルを倒していく。特訓、必殺技といった熱血スポーツマンガのパターンを用いて、ブームだったスペースインベーダーなどのゲームをマンガにとり入れた。
すがやみつるは、当時「マイコン」と呼ばれた草創期の家庭用コンピューターをいち早く趣味にしていた点が買われ、コロコロコミック編集部から起用された。同誌は後に、ミニ四駆やベイブレードなど最新のホビーが登場するマンガで新たな流行を作り出すが、その手法のさきがけだった。
TVゲーム、ラジコンカーのように操作者はあまり動かず、地味でドラマになりにくいはずのホビーの世界が、スポーツマンガの手法で“熱く”動いた。「最後は宙返りさせたいね」。この手法、実は担当編集者のこんな何げない一言がきっかけだった、とすがやは語っている。宙返りなど、ゲーム操作にはまったく必要ないが、プレーヤーの気持ちの高揚を表すようなそのド迫力が、コロコロコミックが的にした小学生男子を熱狂させた。
少年たちの心をコロコロと宙返りさせ、ゲームブームのあらしを巻き起こしたのは、編集部とすがやの絶妙な連係プレーの成果だったのだろう。
(京都国際マンガミュージアム 研究員 表智之)
●ゲームセンターあらし
すがやみつる作。月刊コロコロコミックに読み切りで2回掲載の後、79年〜83年連載。小学館漫画賞受賞。テレビアニメ化も。
●1979年
米スリーマイル島で原発事故/中越戦争/大学入試の共通1次試験始まる/ソニー「ウォークマン」発売