“親の苦情で不眠”裁判 教諭の訴え棄却2月28日 18時46分
埼玉県行田市の小学校の教諭が、児童の親からたび重なる苦情などを受けて不眠症になったとして慰謝料を求めていた裁判で、さいたま地方裁判所熊谷支部は、親の行為は教諭の社会的評価を下げるものだが名誉棄損とまでは言えないとして訴えを退けました。
訴えを起こしていたのは、行田市立の小学校に勤める47歳の女性教諭です。
訴えによりますと、教諭は、3年前に担任を務めていたクラスの児童の親からおよそ3か月にわたって連絡帳などに苦情を書かれたり教師として不適格だとする文書を教育委員会に送られたりしたことで、不眠症になったうえ名誉を毀損されたとして児童の両親に500万円の慰謝料を支払うよう求めていました。
これに対して、親側は苦情は名誉毀損には当たらないと争ってきました。
28日の判決で、さいたま地方裁判所熊谷支部の堀禎男裁判官は、児童の親が連絡帳に「教諭が児童のテストの答えを改ざんするなどの行為をした」などと繰り返し書いた行為について、「配慮を欠いており教諭の社会的評価を下げるものだ」としました。
その一方で「連絡帳を学校の教職員や教育委員会が見たとしても守秘義務があるため公然と名誉を毀損する行為とまでは言えない」として、教諭の訴えを退けました。
判決について原告の教諭の弁護士は「意外な判決であり、不法行為に当たらないというのは納得いかない。今後の対応は原告と相談して決めたい」と話していました。
一方、児童の父親は判決後、記者会見し「教育委員会などを通じて問題解決をお願いしてきたが、教諭が提訴したら対応も止まってしまった。今後、このようなことがないように第三者機関を設置するなどして保護者と学校とのトラブルに対応してもらいたい」と話していました。
女性教諭と親のトラブルの経緯
女性教諭と親のトラブルは、3年前の6月、教諭が担任をしていたクラスの児童が同級生と言い争いになったのがきっかけでした。
児童の親は学校を訪れたり電話をかけたりして教諭の対応に不満を訴え、2週間余りの間に8回にわたって連絡帳に抗議文を書きました。
親は、テストで児童が書いた正解を教諭が消したとして、「最低な先生」「人間関係を円滑にする能力も著しく劣っている」と苦情を書いていました。
8月には教諭が教師として不適格だとする文書を埼玉県教育委員会に提出したということです。
これまでの裁判で教諭はこうしたトラブルが原因で不眠症になったとしたうえで、「連絡帳は第三者に見られるかもしれず、侮辱する内容を書いたのは名誉毀損に当たる」と主張していました。
これに対して親側は「連絡帳は両親と教諭だけが見るもので、内容も必要に応じて苦情を書いたもので、名誉毀損には当たらない」と反論していました。
[関連ニュース] 自動検索 |
[関連リンク] |
|