2003年3月14日(金) 東奥日報 特集

断面2003

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■ 国連中心主義は砂上の楼閣/イラク対応で日米同盟優先

 米国が国連安全保障理事会の新決議なしで対イラク武力行使に踏み切る情勢が強まる中、一貫して「米国を支持しない選択肢はない」(田中均外務審議官)という日本の「対米追随」ぶりが際立ってきた。「日米同盟」最優先の前に、日本外交のもう一つの柱だった「国連中心主義」は大きな岐路を迎えつつある。

 ▽両立は建前論

 土井たか子社民党党首「国連中心主義を放棄しないでしょうね」

 小泉純一郎首相「米国との同盟関係と国連中心主義を両立させる」

 十三日の与野党党首会談。イラク攻撃を容認する米英など提出の修正決議案は、フランスなどの反対に加え米英間の溝も表面化し、採択困難な情勢となっている。それでも首相はあくまで採択による「両立」を目指す「建前論」を繰り返した。

 しかし政府部内では早々から、新決議なしでも米国のイラク攻撃を「支持」するのが既定方針。ただ国連中心主義を取る以上、「国連の一致した意思」(外務省幹部)としての新決議があった方が、八割近くがイラク攻撃反対の国内世論に対し「説明しやすい」(同)という事情があった。

 昨年八月、東京で開かれた「日米戦略対話」で竹内行夫外務事務次官がアーミテージ米国務副長官に「米国対イラクではなく国際社会対イラクの構図にしてほしい」と要請。これを受け同十一月、安保理でイラクに対する大量破壊兵器査察・廃棄の決議一四四一が採択。後にアーミテージ氏は竹内氏に「約束を守ったよ」と伝え、日米同盟と国連中心主義は「両立」するかに見えた。

 ▽落としどころ模索

 しかし今年二月、米英がイラク攻撃を容認する新決議案を提出したものの、査察継続・強化を求めるフランスなどが予想外に抵抗。採択への道は一向に見えず、イラク攻撃支持の「大義名分」に暗雲が垂れ込めてきた。このころ外務省は米英の決議案支持の理由を「国際協調」から「大量破壊兵器の拡散防止」へと微妙にシフトさせ始める。

 「ここで断固たる姿勢を取らなければ第二、第三のイラクが出現し、大量破壊兵器の恐怖が世界を脅かし続ける」(竹内次官)と国際社会の「自衛」を強調する言葉の裏には、今から新決議なしのイラク攻撃に「正当性」を与え、それへの支持表明に布石を打とうという意図があった。

 ただ政府は、米国の新決議なしでのイラク攻撃に「国連の権威失墜のみならず、米国の国連離れに歯止めが利かなくなる」(外務省幹部)との懸念も持った。このため政府は「戦闘終了後のイラク復興なら国連でまとまることができる」と米国、フランスを巻き込んで復興支援のための安保理決議採択という安保理正常化の落としどころも探り始めている。

 ▽問われる説明責任

 英国提案の「武装解除の六条件」の妥協案もフランスなどに拒否され、新決議案採択がいよいよ厳しくなった現状にも、日本の米国支持姿勢は一層固くなっている。

 外務省幹部は「北朝鮮が日本にミサイルを撃ってきたとき国連は守ってくれるのか。いざとなったら米国に泣きつくしかないんだ」と、日米同盟優先こそが日本の国益と強調。「国連中心主義なんてもともと砂上の楼閣だ。国連なんて実体は何もないんだから」とつぶやく。

 小泉首相は十三日、直前に田中外務審議官が「米国支持」を明快に言い切っているにもかかわらず、小沢一郎自由党党首との会談でイラク攻撃の場合の対応を「その場の雰囲気だ」と逃げた。何よりも首相の説明責任が問われている。



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