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越境汚染を正しく恐れよ

2013/3/1付
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 中国の大気汚染の原因である微小な粒子状物質(PM2.5)が日本に飛来し、住民の不安が高まっている。環境省は大気中の濃度が環境基準の2倍を超えそうな日には、外出などを控えるよう呼び掛ける暫定指針を決めた。

 PM2.5は工場や車から排出され、直径2.5マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルと、スギ花粉の10分の1以下の微粒子だ。吸い込むとぜんそくや脳梗塞などを悪化させやすく、持病のある人や子どもはとりわけ注意が要る。

 ただ健康な大人なら、環境基準(1立方メートル当たり35マイクログラム)を多少超える場所に数時間いて健康被害が出たという科学的証拠はなく、いたずらに恐れるのは禁物だ。国や自治体がまず汚染の実態を正確につかんで迅速に情報公開し、濃度に応じてどんな対応が必要かを丁寧に説明することが大事だ。

 暫定指針では環境基準の2倍を超えそうな場合、自治体が注意情報を出し、外出や換気を控えるよう求める。住民の不安を考えれば指針は必要であり、海外の基準を参考にした数値も妥当といえる。

 だが注意情報の出し方には課題が多い。市民が必要な外出や屋外作業まで自粛すれば、経済活動が萎縮しかねない。屋外の仕事が多い建設や農業、宅配業者らはどう対応したらよいか、学校の遠足は控えるべきか。指針はそれらを示していない。住民の参考になるように環境省が例示すべきだ。

 全国で550地点しかない測定点を増やし、データを迅速に公開する体制整備も急務だ。自治体が環境予算を優先的に振り向け、必要なら国が財政支援してもよい。

 PM2.5は中国の大気汚染で注目されたが、もとから国内の発生量も多く、環境基準の達成率は3割に満たない。環境省の対応が遅れたことは否めない。これを機に、工場などからの発生抑制策を真剣に考えるべきだ。

 春には中国からの黄砂が増え、指針を超える地域が出るだろう。行政と市民が連携し、越境汚染を正しく恐れる姿勢が欠かせない。

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