漢字を知らない韓国の教師たち

成均館大の全広鎮教授、学生用の漢字本に続き『先生の漢字本』を出版

 ハングルを覚えたばかりの小学生が教師に尋ねた。「先生、『愛国歌(韓国の国歌)を斉唱いたします』の『斉唱』とはどういう意味ですか」

 教師は正確な意味を説明しようとして言葉に詰まった。「斉唱」が、そろっているという意味の「斉」の字と歌うという意味の「唱」が合わさり「多くの人が一緒に(斉)歌を歌う(唱)」ということを知っていればうまく説明できたはずだ。今回、漢字語をこのように正しく解説する教師用の漢字辞典が出版された。

 1999年から12年にわたり、朝鮮日報の「生活漢字」コーナーの連載を3300回以上担当してきた成均館大中文学科の全広鎮教授がこのほど『先生の漢字本』(LBH教育出版社、全1392ページ)を出版した。2007年から『韓国語の漢字語・本当の意味辞典』など、漢字を知らず韓国語の漢字語彙(ごい)を容易に理解できない児童・生徒のための本を出してきたが、このほど初めて教師用の漢字本を出版した。

 全教授は「改定された教育課程に従い、小学校の教師たちは今年から『創意力体験活動』の時間に義務的に漢字を教えなければならなくなったが、教育大学でも漢字を必修科目として教えておらず、採用試験にも漢字科目がない状況だ。漢字の知識がほとんどなく、厳しい状況にさらされた先生たちを助けようと、この本を書いた」と話した。

 この本は韓国語文教育研究会で定めた2‐8級の漢字2355字を中心に、漢字語彙と漢字の意味を掲載した。最初の字を中心とした昇順語彙と、最後の字を中心とした逆順語彙を共に列挙し、該当の漢字を利用した熟語を完璧に把握できるようにした。漢字に対応する英単語も併記し、英語の学習効果も狙った。

 全教授は2006年、漢字という文字がそれ自体で意味を表す「ヒント」を含んでいるという点に着眼し、「LBH(Learning by Hint)学習法」を開発した。全教授の本はもちろん、朝鮮日報の「生活漢字」コーナーも、全てこの学習法に基づいて書かれた。』『先生の漢字本』の見出し語は他の国語辞典と変わりないが、漢字本来の意味の解説を前面に出したという点で独特なものとなった。例えば「万歳」を探すと「(一万の万に年の歳) (1)長い(万)歳月(歳)、(2)末永く生きる、永遠に生きて繁栄すること、(3)『永遠に!』という意味で大声で叫ぶ掛け声」と解説している。全教授は「『わが国万歳』の意味を尋ねる児童に『わが国ファイト』と誤った説明をする教師もいる」と漢字語彙の意味の重要性を強調した。

 今回の本の出版より前にも、全教授は08年10月から5年にわたり、小学校の教師や保護者を対象に無償の特別講座の開催を続けてきた。今まで1万人以上が100回以上の特別講座に参加した。

 全教授は、説明していた本を閉じると「この数年間、漫画形式の漢字本などの影響で漢字に親しむ子どもたちが増えているが、むしろ教師たちは漢字を知らず、教える上で困難を感じている。教師たちがハングルだけでなく漢字も理解すれば、読書指導だけでなく読解指導も可能になる」と話した。全教授が手にしていた『先生の漢字本』のカバーには「真竹の畑に真竹が生える(正しい原因によって正しい結果が生じるという意)」ということわざが大きく書かれていた。

ホ・ジャギョン記者
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) The Chosun Ilbo & Chosunonline.com>
関連フォト
関連ニュース