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2011年1月13日 (木)

アルビノ・ドーナツの会

取材先:アルビノ・ドーナツの会 ヤブモトマイさん

「違い」を越えて生きやすい社会へ

 全身の色素が少なく、髪も肌も白い人のことをアルビノという。目の色素も少ないため弱視でもある。ヤブモトさんもその一人。アルビノ・ドーナツの会設立以前にはアルビノの当事者団体はなく、設立にはヤブモトさん自身の体験が深く根ざしている。
 高校生のとき、初めて大きな挫折を経験した。それまでは努力次第でほかの人と同じようにやってこれたが、同級生がバイクの教習所に通い始める中、自分は視力の問題で免許を取れないという、努力ではどうにもならない壁が立ちはだかった。級友たちがアルバイトを始める中、自分も面接に応募するが、面接以前の段階で断られることが相次いだ。レジのバイトの採用担当者は「事情はわかるが、あなたの髪のことをお客さん一人一人に説明するわけにもいかない」という。大学のときの就活担当者には、通常の職業には就けないと断言され、障害者雇用の求人から仕事を探すようにと促された。
 弱視でも全然見えないわけではない。髪が白いことで仕事に実質的な支障が出ることなどないはず。アルビノの人はみんな不本意な仕事を強いられているのだろうか。ほかの当事者に会ってみたい——切実な思いから、ヤブモトさんは同じ当事者を探して渡り歩いた。「初めて会えたときの感動は忘れられません。自分が鏡に映し出されたようで最初から通じ合うものがありました。悩んできたことが多く共通していたのですが、でも解決してきた方法はそれぞれ違っていたんです」——体験を語らう中で、お互いに知らなかった情報を共有できることに大きな意義を感じたヤブモトさんは、当事者同士が気軽に集まれる場の必要を強く感じ、会を立ち上げた。
 多くの医師はアルビノの知識が浅く、当事者やその親は誤った情報に振り回され、また一般の認知度も低く誤解もある。活動の一環として、より正しい理解に向けた啓発活動も行おうとしている。さらに先の目標として、同じ生きにくさを抱えた人への就労支援も視野に入れている。「百年後二百年後にまたアルビノとして生まれてみたい。その頃にはアルビノでも何の壁もなく暮らせていたらいいですよね。今はその基盤を作っているところです」と夢を語る。
 髪が白いとできない仕事などあるだろうか? 誰もそれで困らないはずであり、色が違うというだけで訝しく思ってしまう世の価値観の方に問題があるのではないか。一体「普通」とは何なのか。私たちは常に慣習的な見方を疑いにかけてみる必要があるように思う。

(2011/1/13 文責:堤野瑛一)

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