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遙か3(ヒロイン、有川姉)

 ←墓場にようこそ →特に感動しなかった再会
タイトル:未定
原作:遙かなる時空の中で3運命の迷宮
ヒロイン:有川姉
名前:まさかの名無し!
職業:花屋
年齢:20代
ナンバリング:①







とんでもないトラブルに巻き込まれ、とりあえず帰宅。

冷蔵庫を開けたとたん、携帯電話が鳴った。着信元は公衆電話。

「はい?」
少しつっけんどんに電話に出ると・・・聞き覚えのありすぎる声。

「悪ぃ! 姉貴の服2セットとオレらが置いている服全部もって鶴岡八幡宮まで・・・」

ブチン、と切れた。
上の弟の将臣だ。
無視したいところだけど、公衆電話からかけてくるほどの用事だ。しかも洋服?
面倒だな、と思いつつ紙袋に服を突っ込んで再び車に乗った。
「適当に食って、寝ろ」
と言い捨てて・・・。


「銀髪の中華と金髪のマントは車に乗りなさい」

まったく。

帰れないくらい恥ずかしいならコスプレなんかしなけりゃいいのよ。いい迷惑だわ。
私が持ってきた服ではサイズが合わない金髪マントと、地毛なのか?と疑う銀髪中華は車に収容してあげることにした。
そしたら銀髪中華が「神子も一緒じゃないとイヤだ」とダダ!をこねやがったので、「じゃ、神子も乗って」
と言ったら望美ちゃんが乗りこんできた。「神子」ってHN(ハンドルネーム)かしら?
となれば、もう一人の女の子もご乗車ね。

残る野郎たちには洋服を与え、金を持っていないらしく(なんで!)電車賃を渡す。


「悪ぃな、姉貴」
「すいません、姉さん」
「悪いと思うなら身体で返せv」

悪びれない上の弟と恐縮する下の弟に笑顔でメンチを切ると私の愛車フェアレディZは鎌倉の町を疾走した。

「すごい! 早いね神子!」
「これはなんという乗り物なの?」
「く、車だよ?」
「・・・以前譲に聴いたことがある」

な に こ い つ ら 。

私はすごく胡散臭い顔をしていたんだろう、望美ちゃんが謝ってきた。

「ごめんなさい、お姉ちゃん。あとでちゃんと説明するから」
「・・・・・いや、説明いらない。ノーサンキュー」
「え!? なんで!」
「ん~。面倒?」

ただでさえ面倒を拾ったんだ。これ以上の面倒は入らない、ぶっちゃけ。

「3人がコスプレに目覚めて、初対面の同行の志と意気投合したってことでいいじゃん。で、マサオははしゃぎすぎてフケたってことで」

「なにそれ!? すごいイヤ!」




「・・・・とうわけなんです」
「・・・・・・・・・・」

下の弟・譲の説明を受けて私は黙り込んだ。
これは・・・もしかして。

「信じられないと思うけど、本当なんだ、姉さん」
「いや、信じる」
「だから・・・っええぇ!?」
「うん、信じるわ。色々納得いくし」

「どうしてですか? 我々もあちらで望美さんに会ったとき、すぐには信じられなかったというのに?
ご兄弟だから、というわけでもないようですが?」

未亡人臭のする美人系弁慶(うわぁ)が突っ込んできた。
このタイプは苦手だ。絶対黒いだろ、性格。

「私さぁ、すっごい疲れているのよマサオにユズ」

私はソファで足を組んで言った。ミニスカートだったので何人かが赤面する。純情じゃのう。

「はあ・・・」
「悪いと思ってるよ。あとマサオって言うな」
「あんたら薔薇から人間生まれると思う? しかも成人。さらにはフェロモン系」

「「・・・・・・」」

「今日薔薇が大量に入荷されてきたわけよ。で、ダンボール開けたら白薔薇ん中に銀髪の男が埋もれてた。赤薔薇の箱も開けてみたら、やっぱり銀髪の男が入ってた」

「「「「「「「・・・・・・・・」」」」」」」」

「しかも片方は包帯グルグルコスプレで、もう片方はマサオっぽい鎧来たやつでさ。しかもどっちも口開けばヤバイことしか言わないし」


「「「「「「「「・・・・(もしやそれは)・・・・・・」」」」」」」」


「こっちは薔薇が必要なんであって、薔薇の化身みたいな色男はいらねぇって仕入先に電話したら『男なんか詰めるか!』って言われてさぁ。白薔薇赤薔薇全部で各10万円したんだけど、あたし20万で男二人買った?みたいな」


「・・・で、どうしたんだよ?」

「行くとこないから置いてくれって白薔薇野郎は縋りつくし、赤薔薇野郎は腹へってんのか、花食って『まずい』とか言うし。あたしのマンションにおいてきた」

「それはキケンだよ、お姉ちゃん!」

「分かってるってば。あいつらをどうにかするまで実家に居るつもりだったもん。でも・・・ここも満員御礼なんだねぇ」

私はチラリ、とメンバーを見た。

銀髪中華、金髪マント、ヘソだしマッチョ、未亡人系フェロ男、赤毛フェロ少年、ポニーテール武士、儚げ美少年、清楚系美少女・・・か。


「こっちにあいつら持ってくるから、金髪マントとヘソ出しマッチョと儚げ美少年,清楚系美少女とトレードね」


「「「なんでその4人!?」」」


「店の手伝い出来そうじゃん」

「そこですか」
「なるほどな(好みってわけじゃないのか)」


「どう? あたしの家に来て、店の手伝いしてくれたら頑張り具合によって給料だすよ? あんたたちもおんぶに抱っこじゃ肩身狭いし、悪い話じゃないでしょ?」

「あの・・・。どういう店なのだ?」
「花屋よ。バイトが止めたばっかりでね。植木の移動とか水汲み、お花の世話をしてくれればいいわ」
「力仕事ならば、得意だ」
「あっ、オレも結構花とか好きだし! 頑張るよ!」
「私もお手伝いできます」

よし、バイトゲット!

「ヒノエや弁慶さんも接客は得意だと思いますよ?」
「いや、あーゆーのはいらない。ホストクラブじゃないし」
「・・・・・」
「それじゃ、帰るわ。赤薔薇と白薔薇野郎はタクシーで送りつけるからシクヨロ☆」


帰宅してその旨教えたらすごく嫌がられたけど、金髪マントと儚げ美少年が二人を縄でふんじばってくれた。美少年の力技には驚いたけど、嬉しい誤算。腹出しマッチョはヘタレだったみたいで、オロオロしてた。美少女はヘタレ兄を持った宿命かしっかりした子っぽい。


「こいつらストーカーなんです。この住所まで送り届けてください。玄関に関係者待たせてますからっ」

ウルウルした目でタクシーの運ちゃんに言ったら「まかしとけ!」って請負ってくれた。いい運ちゃんだ。
2人で20万円もしたし、勿体ないと思うかな?と予想していたんだけど、タクシーが動いて視界から消えると、嘘みたいにスッキリした。今度から薔薇は持ち帰りしよう。配達はダメだ。



「男部屋はこっち。布団は押入れね。朔ちゃんは私と同じ部屋でいいわよね?」

部屋に戻るとまず部屋割り。
無難に決定。反論は許さん。

「まず風呂の説明。これでお湯が出るから、これで洗って。石鹸はこれ。髪はこれで洗ってキッチリ濯いで。これで拭いて、これを着て出てくること。男性の下着はコレ。この穴に足を通して履いてね。
朔ちゃんは私と一緒に入って。教えるから」

まず衛生から、と風呂を教える。あ、トイレもだな。

「喉が渇いたらコレ飲んで。なくなったら、道路向かいの店で同じものを買って補充しておくこと。その時のお金はコレ出して。お釣りを貰うのを忘れないで。・・・夕飯は食べたの?」

まだだというので、軽く作ってやることにした。乾麺のうどん。
作り方を見せて、イザと言うときは作れるように教え込む。
うどんじゃ栄養ないな・・・と思ったので卵にお揚げとネギ。あと野菜ジュース。


「おいしいねぇ! これ」

ヘタレ腹出し(ネーミング格下げ)が感動してくれた。たかがうどんですが・・・。明日はもう少しいいものを食べさせてやろう。

「食べたら洗う。道具はコレ」

そういったら美少年が請負ってくれた。いい子だな。

「この世界では食後は歯磨きと決まっていてね、道具はコレ。コレか・・・塩でもつけて磨いて。間違っても人の歯ブラシ使わないでよ」

衛生その2。虫歯になったら保険利かないから高いもんね。

「そしたら寝ますか。明日、この時計がこの形になるまで私を起こしたら許さないよ。先に起きててもいいけど外に出るのは近所だけ。出るときはこのカードっていうのを持って出ないと部屋に入れないからね」


とりあえずこんなもんか。
明日も仕事だ。明日こそバラを!!!




6時起床。
ちくしょう、バイオリズムが狂った。眠い。
見れば布団で寝ていた朔ちゃんは居ない。
・・・起きるか。

キッチンに行くと昨日教えた手順で朔ちゃんがお茶を入れて飲んでいた。あとのメンバーは居ない。
聞けば外に散歩に出たらしい。そろそろ戻るというので、朝食の準備だ。
面倒だからパンでいいや。米は昼に食べさせてやろう。

「コレをね、ここに入れて、この文字のところまで動かして、チンっていったら出来上がり。好きなのを塗って食べるの。卵はね・・・こうやって火をつけて、落として・・・コレですくって皿に載せる。ハムとベーコンも炒めておこっか。あと野菜・・・トマトとブロッコリしかないなぁ。あと牛乳。紅茶はお茶と似ているけど、ちょっと蒸らさないといけないわけ」

朔ちゃんに教えていたら3人戻ってきた。
コーヒー淹れようとしたらヘタレ腹出しが興味津々だったんでさせてやった。
以外にパン食でもイケたらしいメンバー。金髪マントが苺ジャムを好んだのは以外。


「さてと、貴方達にも用事があるだろうし、私も一日中つきっきりって訳にはいかないけど、今日は特別に一日つれまわすから。慣れたら午前午後の当番制にするからね。まず花を仕入れに行くわよ」

食後に歯磨きとトイレをさせたあと、車に全員乗せて店に向かう。
朔ちゃんと美少年には店の掃除をさせることにして、大人二人とワゴン車で市へ。


「白薔薇と赤薔薇各100本に百合50本、カスミソウにアンスリウムの白、そろってる?」
「よぉ。何か手違いあったんだって?」
「薔薇のように麗しい男が二人届いたのよ」
「はっはっは! 薔薇なら美女二人のほうがよくねぇか?」
「・・・・・・・・・」

いや、マジなんだけど。

「後ろのイケメンがその薔薇の妖精かい?」
「妖精とトレードした肉体派よ」
「力ありそうだねぇ。ほらよっ!」

全部運ばせてワゴンに詰め込むと店へ発進。

「花でもアレだけあると重いんだねぇ~」
「今まで一人でやっていたのか? 今日からは我々に任せてくれていい」

金髪マントはフェニミストでした。腹出しはやはりヘタレか?



「あ、おかえりなさい」
「掃除はこれでいいだろうか?」
「バッチリよ。ありがと。さ、乗って」

店で二人を回収すると次はホテルへ。


「はよございまーーーっす!」
「お、来たね。宜しく」
「任せてくださいよ」

フロントのでっかい花瓶の水の入れ替えを大人二人に任せようとしたら、美少年が買って出た。

「大丈夫?」
「このくらいなんともない」
「・・・・・・・・・」

うわ、マジっすか。結構重いよ?アレ(水入りだし)


大人二人にはトゲを取り、同じ長さに花をカットしてもらい、朔ちゃんには茎を焼いてもらった(バラだし)

「綺麗な花ね・・・」
「朔ちゃんの時代には無い花だもんね。海の向こうのずーっと先の国の花なんだよ?」
「このトゲ・・・痛いね~」
「美人で気が強い人のことをこのバラに喩えて『美しい花にはトゲがある』っていうの」
「なるほど」

美少年が戻ってきたので、活け始める。

「その白薔薇とって。次はその百合」

4人は私に花を手渡しながら作業を見守っていた。

「よしっ。完成!」

「すてきだわ」
「ああ、見事だと思う」
「綺麗だねぇ~」
「己を消すことなく主張し合っている」

4人に褒められ、ゴミを片付けるとホテルを後にする。
っつってもあと3件あるんだけどねっ。



「残った花はバケツに入れて、お客様待ちね。ラッピング教えるから見てて」

店に到着したら次はラッピングの説明。ヘタレ腹出しが一番上手かった。
レジは・・・朔ちゃんがいいかな?と思ったので説明。数字さえ打ち込めば計算はレジがしてくれるし、なんとかなりそう?


「お見舞いの人には植木は勧めないでね。『病気が根付く』っていうから。お墓参りの人には匂いのきつい花は咲けて。予算、リボンの色はお客様に聞くように。領収書が必要なときは私に言って」


お昼はお弁当。近くの仕出し屋さんで幕の内5つ。念のためお稲荷さんと太巻きも買った(買っててよかったと思った。よく食べるよな、男は)。


基本としてバイトの時給を説明する。
850円で食事は自腹。無一文もアレなんで日当手渡し。

「ってことで、今日は8時から20時まで。休憩に時間の10時間労働。夜間手当ても付いて10000円ね」

一人に一万万札を配る。

「あなたたちがこのお金でまかなうのは昼食代、衣料、交通費、趣味。朝夕の食事と居住は弟たちが世話になったことだし、私に任せて」
「だが、こちらは大人数だ。負担が違うのではないか?」
「女手一つで店を立ち上げたのよ? 甲斐性はあるつもり。貴方達は仕事手伝ってくれるし、モトカレより全然マシだわ」
「モトカレ?」
「あー、なんつーの? 恋人の軽いやつっていうか?」
「ええ!? 恋人いるの?」
「違う違う。モトっつったでしょ。あんなやつポイっと捨てたよ」
「まあ・・・」
「だってねぇ~『オレと仕事のどっちが大事なんだ?!』とか言い出すんだもん。ヒューっと冷めた。
足蹴りしてやったよ、あはは」
「「「「・・・・・・・・」」」」

いや、よもや自分があんなこと言われるとはねぇ。

「貴女は正しい。そのような女々しい男など貴女にふさわしくない」
「そうだね。がんばっている人に対してその台詞はひどいな。足蹴にして正解だよ」
「うむ。貴女の仕事ぶりを知っていてそのようなことを言える輩など、早々に見切りをつけたほうが良い」
「みんなの言うとおりよ。そんな二択を迫るなんて男らしくないわ」

うう、みんないいやつだなぁ。

私は慰められたことに調子に乗り、ちょっといいお店にみんなを連れて行ってあげた。・・・焼肉屋さんだ。
リズ先生と景時っさんには焼酎をガンガン飲ませ、朔ちゃんと敦盛君には豪華パフェを振舞ってあげた。
いい気分だ。




「いいなー、私もパフェ食べたい」
「とっても美味しかったわ」
「ああ。神子の世界にはあのような食べ物があるのだな。とても綺麗だった」

「飲んでも翌日に残らない酒だったよ~。作り方がわかったらあっちでも試してみたいなー」
「まろやかな味だった」
「へえ。興味深いな」
「・・・俺の家にはねぇぞ」


翌日。離れ離れも寂しいだろうと、四人を実家に連れて行ってあげた。
そしたら焼肉屋に行ったのが速攻バレた。

「姉貴、俺らにはめったにおごらねぇくせによ」
「4人は私の店の従業員だからね。慰労は当然」


そんな私の足元には、薔薇兄弟。
赤薔薇は寝転がったままで足首をつかんできたので、顔を踏みつけてやった。望美ちゃんが『あの知盛を・・・!』と驚いていたけど、トモモリだろうがアワモリだろうが、関係ないわね。

白薔薇のほうはシラフでクサイことを延々と言い募っていたけどシカトしました。要約すれば『ここはイヤだ。私のマンションがいい』ということみたいだけど、定員オーバーだもんね。

あら、もうこんな時間。時計を見ると17時過ぎ。

「私そろそろ帰るわね」

腰を浮かせると、4人も立ち上がろうとする。それを手で制して『明日はここまで迎えにくるからゆっくりしてなさい』と言ったら・・・。

「なに、いいやつぶってんだよ。どーせ、姉貴の都合だろ?」

マサオめ・・・!

「姉さん、もう合コンは卒業してくれよ。出るたびにストーカー騒ぎじゃないか」
「うーん・・・。私もやめたほうがいいと思う。お姉ちゃんなら合コン行かなくても大丈夫だよ」

ユズと望美ちゃんまで、引きとめてきた。
そしたら他のメンバーが『合コンとは何だ?』と聞いてきて、マサオが『相手を求めて男女が集まる酒盛』と答えた。

「君がそんな場所に行く必要はないよー」
「そういう場に集まる男というのは、大概ケダモノですよ?」
「私も・・・やめたほうがいいと思う」
「うむ」

とか言い出したじゃん!

「イヤよ! 今日は医者なのよ!!」

「医者だったら3人前の恋人も医者だったじゃないか。ひと月も持たなかったけど」
「今度の医者は小児科医なのよ! 子煩悩なのよ!」
「5人前は幼稚園の先生だったろ? 3週間だったけど」
「金&子煩悩のダブルトッピングなのよ!」
「金&顔 金&家族構成 金&スポーツマン 金&理系 金&文系・・・。ほぼ網羅したろ? もう組みあわせはやめろよ・・・」


「望美・・・。姉君は一体どういうお方なの?」
「ええとね。昔からすごくモテるし、たくさんの男の人とお付き合いしているんだけど、長続きしないんだ」
「男運なさすぎだよな」
「なんだか・・・お金持ちの方がお好きみたいだけど・・・」
「姉貴はデート・・・逢引で自分で金出したくねぇ奴だからな。でもって、金を掛けないデートも嫌いなんだよ」
「自分で稼いでいるんだから、そろそろ好みのタイプを変えればいいのにね~」



「とにかく。いい加減男漁りは止めろよな。今日もどうしても行くっていうんなら・・・」

マサオがニヤリと笑った。

「俺も付いていくぜ」

サ・イ・ア・ク!!

「やめてよね! 漁場に身内しかも弟連れて行くなんてマジ有り得ない!」
「漁場とか言うな! 姉貴がそんな態度とるなら絶対付いていくぜ!」
「いやいやいや。マサオ、あんたも姉の『女』の部分とかみたくないでしょ? 私も見せたくないし!」
「見たかねーけどよ。これ以上ヘンな男を転がされても弟として困んだよ」

「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・わかったわよ。キャンセルするわよ」
「! っしゃ!」


くそう。
今日はオシャレなバーで飲みたい気分だったんだよなー。
仕方ないし、この中から見繕って飲みに行こうかな。
リズヴァーンさんと景時さんは昨日焼酎飲ませたし。
あと成人してるっぽいのは・・・ポニーテールか腹黒か薔薇兄弟か。


すっげ究極の選択じゃない??


なんか、この4択有り得ん。
それならマサオのほうがマシ。
今のところ(?)成人してるし。
いずれマサオやユズが成人したら飲みに行こうとは思ってたし。
予定より早いけど、実行してもいいんじゃない?


「よし、マサオ。飲みにいくわよ」
「・・・・・・・・は?」

なにその顔。あんたと一緒に合コンに行くっていう意味じゃないわよ。

「飲みたい気分なのよ。せっかく成人しているんだし、アンタと飲むのもまあいいかなって」
「あ、そーゆことかよ。いいぜ」
「革ジャンとジーンズはやめてね。居酒屋に行くわけじゃないから」
「ok」


マサオが居間から出て行くと、周囲からブーイングが。


「アタシも行きたい!」
「未成年はダメ。お土産にたこ焼き買って来てあげるから」
「うー。絶対だからね!」

「なんで僕たちはダメなんですか?」
「未成年の子もいるし、特別扱いはあんまりかな?ってところよ。今度全員まとめてドンチャン騒ぎするから。譲。幹事は任せる」
「なんで俺が・・・」
「欲しがってた電子辞書、いらない?」
「うっ!」


そして私はマサオと夜の街に消えたのだった(オエ)。
そして「俺は強い」と豪語していたマサオがそれほどでもなかったことにガッカリした。
あっち(平安)の酒よりこっち(現代)の酒のほうが強いらしい。

「醸造の違いかしら」
「だと思うぜ。つうか、姉貴強いんだな」
チェイサー代わりのウーロン茶を飲みながらマサオがしみじみと言う。
「酒に飲まれちゃ、色々危ないでしょうが」
「危機管理の意識云々で、酒の強い弱いが決まるわけじゃねぇだろ」
「しかし、あんたとこんな早くに酒が飲めるなんてね・・・」
「スルーかよ。俺はてっきり弁慶や九朗、知盛や銀を誘うと思ってたけどな。妙に平等だからな、姉貴は」
「一応シュミレーションしたんだけど、あの四人の誰であろうとサシで飲むのはねぇ・・・。生臭坊主と白バラはくどきモードでウザそうだし。ポニテは引率気分になりそう。赤バラはもう色々勘弁だわね」
「・・・・・・・・・」

ヒドイいいざまだと将臣は思うが、彼らを知る身としては姉の観察眼に恐れ入った。
「これも星の一族の能力ってヤツなのかねぇ」
「なにそれ?」

姉に尋ねられ将臣は、祖母が時空を超えて現代にやってきたこと、祖母の一族は星見などの占いや予知などの能力者を多く出してきたこと。自分自身夢見で望美と会ったり、譲は未来を予知していたなどと話した。

「・・・ふーん」
「反応薄いなぁ、オイ」
「や、だってもうおばあ様亡くなられたし、私が時空超えた当事者じゃないし、観察眼とか言われても
これが私の普通だし、特殊だとは思えないんだよね。
譲はスペクタクルだとおもうし、マサオはロマンティックだよね。夢で望美ちゃん・・・へぇ~え」
「いやそれは望美が白龍の神子で、俺が八葉な上星の一族の血をだな・・・」
「まあ私はユズかマサオならどっちでもいいんだけどね。1人くらいは気の合う義妹がほしいだけだし」
「俺も気の合う義兄がほしいけどな?」
「じゃ、あのメンバーで誰がいい?」
「・・・・・・・」
「冗談よ」

そう言って、ホワイトレディをバーテンに注文する。

「お二人を噂している方がたくさんいらっしゃいますよ?」
「どう見えるのかしらね、ねぇマサオ」
「マサオ言うな」

「同僚か、ご兄弟という意見が多いようですね。恋人関係にしては色っぽさが無い・・・と。もしそうでしたら大変失礼なことですが」

色っぽさがあってどうする。

「俺たちはきょうだ・・・」
「女王さまと下僕なの」

何言ってんだ、こいつはーーー!

「それはそれは」
「おい! なに納得してんだよ! 俺たちは姉弟!!」
「そう言ったじゃないの、マサオ」
「女王と下僕って言っただろうが!」
「同義語じゃない。姉と弟=女王と下僕」
「ちげえ!」

マサオをからかって飲むお酒が、以外と美味しいことが今回の収穫。
ストレス溜まったらまた行きたいので、それまでにマサオが若返らないことをこっそり祈った。










ストックはあと少々あります。が、コレ終わってませんのでご了承ください。
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