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怪盗ダークムーンの優雅なお仕事 10 -第5章-

第10話

その報告からさらに数日後、こんどはソルシエールさんから呼び出された。

何でもリアーナ・エイベルがまた訪ねてきたそうだ。

「父を助けてほしい」。そう言ったそうだ。

本当に今度こそ、ネックレスを売ってしまうかもしれない。

トーマス・ホワイトと会う度に、彼女のお父さんからそんな気配がするらしい。

「やっぱり……洗脳されているんじゃないですか?だって、トーマス・ホワイトと会う時、お互い秘書か誰かを連れているでしょ?トーマス・ホワイトの秘書のフリをして実はファントムバトーのメンバーだったりして。」

なるほど……。

「まぁ、助けを求められたのはこの私だ。何とかするのも私だ。───しかし一人ではどうしようもない。ぜひお前たちに手伝ってもらいたいのだが。」

私とウィルは顔を見合わせる。

「もちろんタダでとは言わないが。」

「そりゃあー……」

「いいわよ。何もいらない。そのくらい、タダで引き受けるわ。」

私がきっぱりとそう言うと、二人とも私を見た。

ウィルは何か言いたげだが、何も言わない。

「ほぅ。ブラック・リボンは器が大きいときたか。」

「……。」

別に……器が大きい小さいとか、そんなのじゃなくてただ、リアーナ・エイベルを助けてあげたいだけ。

それに彼女、この間ミルキー・ホワイトを追っ払ってくれたしね。

「こんなことで見返りを求めるほど、私はケチくさくないわ。」

「───……。」

さらにウィルが何か言いたそうな顔になる。

「───で?私たちは具体的に何をすればいいのかしら?」

ウィルを視界に入れないようにして、私は聞いた。

ベールのせいで彼女の表情はわからないはずなのに、ニヤリと笑った気がした。



「……って、何なのよ!これは!!」

翌日、また彼女のもとを訪れたら、私は妙な格好をさせられた。

ソルシエールさんと似た格好。

黒いベールをかぶせられ、視界が少し悪い。

「メロちゃん、占い師さんみたいですよー。」

「……そういうあんたは、胡散臭いセールスマンみたいね。」

「それ……ひどくないですか?」

スーツ姿のウィルはどう見てもそんな感じだった。

「お前、目立つな。その髪、黒くしろ。」

「無茶を言いますね!」

そうか。金髪なのがいけないのね。

「私がやってやるから黒髪にするぞ。」

「え!?本気ですか!?ちょっ……ま、待って……!」

──しばらくお待ち下さい──

数分後、ウィルの髪は見事に真っ黒になった。

「ふーん。黒でもいいんじゃない?もういっそのこと金髪やめたら?」

「やめるも何も地毛ですから……」

何だか元気がない。

「でもどうして私たちにこんな格好をさせたの?」

コスプレに少しはしゃいでいたせいで、理由を聞くのを忘れていた。

「じきわかる。そろそろ客が来るからな。お前たちは黙って適当に頭でも下げておけばいい。言葉を発するな。」

何じゃそら。
喋るなってか。

どうせこれ以上聞いても教えてくれないだろう。

私は茫然としているウィルを見る。

「ウィル、髪くくってあげるわ!」

と言って、私は自分のピンクのリボンでウィルの髪を一つに結った。

いつもの三つ編みにはしない。

「メロちゃんのリボンですか?──男のくせにピンクってどうでしょう…」

「うっさいわね。黙って付けてればいいのよ。」

文句を垂れるウィルの背中を思いっきりたたく。

ゴホゴホとむせるウィル。

「お前たち、客が来たら大人しくしろよ。」

そんなことをしていたら怒られてしまった。

「はいはい。」

「はいは一回!」


残り30話~

→11話へ(準備中)

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CATEGORY:怪盗ダークムーンの優雅なお仕事

THEME:自作小説 | GENRE:小説・文学

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