■中澤大祐さん 「アメリカで No.1 の寿司シェフを目指す」
ミシュラン三ツ星の寿司屋 『すきやばし次郎』 の経営者で世界最高の寿司職人とも言われる小野二郎さんの仕事ぶりと弟子たちとの関係を追ったドキュメンタリー 『Jiro Dreams of Sushi』 がシアトルで公開されたのは昨年3月。アメリカ人のデビッド・ゲルブ監督によるこの作品は全米で大好評を得、シアトルでも当初予定されていた公開期間が大幅に延長されたが、この作品に弟子の一人として出演していた中澤大祐さんがベルタウンの 『Shiro's』 で寿司を握るようになって、もうすぐ1年がたとうとしている。

中澤さんが寿司職人を志したのは、中学時代からの親友が高校を中退して寿司屋に弟子入りしたのがきっかけ。「その友達がとても輝いて仕事をしているように見えたので、自分も寿司職人になって、将来一緒にやろうと決心しました。」 高校を卒業してから調理師専門学校で学び、埼玉県蕨市にある 『よし寿司』 に就職して「修行とは何か」ということを知るが、「サラリーマンも経験してみよう」と、IT 企業の営業職に転職する。しかし、想像以上に過酷な仕事であることを身をもって体験し、約1年後に退職。結婚を控えていたことから、築地市場でマグロを運搬する仕事で結婚資金を稼ぎ、3ヵ月後に挙式と新婚旅行を終えて帰宅したところで何気なしに手に取った体を使う仕事向けの就職情報誌で 『すきやばし次郎』 が職人を募集していることを知った。「よし寿司での修行時代に、二郎さんの著書は読んでいました。"こんな店があるのか、自分とはかけ離れた世界だけれど、いつかこんなところで働けたら" と頭の隅で考えていたので、募集広告を見た時は体が震えました。」 おそるおそる電話をして面接を受け、合格したのは23歳の時だった。
覚悟の上で始まった修行。最初に "今までの経験はゼロと考えて" と言われ、掃除から返事の仕方から何から何まできっちりと教えこまれた。「名前を呼んでもらえたのは就職してから2年後だったと思います。そして、『Jiro Dreams of Sushi』 でもお話しましたが、何年後かに "職人さん" と呼ばれた時はもう嬉しくて。その日は一日中ハッピーでした。」 そんな厳しい修行を通して学んだことは、「人として何が大事なのか」ということ。「要は社会人として大事なことです。そして、我慢するということと、義理人情。これに尽きます。たまに失敗することはありますが、物事の順序は間違わないようにしています。もうそれが自分の一部となり、それをやらないと自分じゃないような気もします。」
そして、『すきやばし次郎』 に勤めるようになってから11年が過ぎた2011年、「そろそろ独立を」と考えていた矢先に東日本大震災が発生。その後の日本政府の対応に失望し、また、30〜40年先の日本は市場として厳しいのではと考えるようになっていたことから、外に目を向けた。その第一歩として寿司職人を日本国外に送り出すエージェントに登録したところ、「シアトルの寿司屋で一番有名なところが職人を募集している」との知らせが入る。「"それは(加柴)司郎さんのところですか?" と聞きました。『すきやばし次郎』 の二郎さんと 『Shiro's』 の司郎さんは昔、京橋の 『与志乃』 で一緒に働いていたことがあり、司郎さんは日本に来られるたびに 『すきやばし次郎』 に来てくださっていたので、次に来られたらアメリカで働くことについて相談してみたいと思っていました。」 そんなふうに浮上した米国移住の可能性について夫婦で話し合った際、「アメリカならもっと家族の時間が持てる」というのが大切な説得材料になった。中澤さんには4人の子供がいるが、それまでは休日返上も当たり前という勤務体制だったため親子で過ごす時間が確保できるというのは家族全員にとって大きな魅力となったのである。
そして、交渉や手続きを終えて渡米したのは昨年4月。『Shiro's』 で初めて寿司を握った日について、お客さんが楽しんでいることに気づいたと振り返る。「『すきやばし次郎』 の場合は、お客さんを楽しませるというより、お客さんに寿司を食べてもらう、つまり "俺の寿司はどうだ" という感じで、お客さんがくつろいで食べるとか、楽しんで食べるといった感じではなかったと思います。でも、『Shiro's』 では、お客さんにどうやって楽しんでもらうかが先。また、ここでは寿司について教えることが大切なのだと知りました。司郎さんとお客さんとのやり取りも面白く、勉強になることが多いです。」 今は笑顔でお客さんとやり取りをする中澤さんも、最初の3ヶ月は英語に苦労した。「お客さんの顔を見ることもできませんでしたよ。でも、コミュニティ・カレッジの英語のクラスを取り、"なんとかなるな" と思うと、急に自信がつきました。」 オーナーシェフの加柴司郎さんが昨年著書を出版したことも重なって、開店前からできる行列が、時には店の周りをぐるりと囲み、その大部分が寿司カウンターを希望する。記念写真の撮影を求められることも1週間に何度かあり、「噂を聞いて来た」と州外から来る人もいれば、「『Jiro Dreams of Sushi』 を観ていたら寿司が食べたくなって」と言て来る近所の人もいる。想像以上の反響に驚かされる日々だという。
今後の目標を伺ってみると、「シアトルには豊富な食材がありますね。ウィッビー・アイランドの本ミル貝やトリガイなど、今は流通していないけれど良いものを発掘できるようにしていきたいです」という答えが返ってきたが、その後、笑いながら、「いろいろなところで言っているのですが、アメリカで No.1 の寿司シェフになるために来ました」と付け加えた。「言わなくては、なることはない。このように言うことで、自分にプレッシャーをかけています。それを目指してがんばります。」
Shiro's
2401 2nd Avenue, Seattle, WA 98121
(206) 443-9844
www.shiros.com
(掲載: 2013年2月26日)
【2013年のコミュニティ・ニュース】
■ 第9回女性ジャズ・ボーカリスト・オーディション開催
■ 中澤大祐さん 「アメリカで No.1 の寿司シェフを目指す」
■ 日本復興支援イベント 『Shout Out to Japan!』 3月10日開催
■ 在米日系人リーダー訪日プログラムにケリー・オギルビー氏が参加
■ 太田総領事 送別会
■ 関西北米線利用促進シアトル調査団 意見交換会
■ シアトル安全対策連絡協議会
■ 人気作曲家・菅野祐悟さん、アキュセラ社の窪田良社長と懇談
■ 辻井伸行氏、シアトル公演を大盛況のうちに終了
■ 日中共同制作映画 『純愛』 シアトル上映会
■ 『キズナ強化プロジェクト』、シアトルを訪問
【2012年のコミュニティ・ニュース】
■ JCCCW 主催 『文化の日』 イベント 約1,000人が参加
■ Common Grains & 全国米関連食品輸出促進会(JRE)主催、おにぎりコンテスト
■ ギタリスト・黒沢豪さん率いる 『SHARP THREE』、米西海岸ツアー開催
■ 米日カウンシル 年次総会開催
■ 米日カウンシル 年次総会レセプション開催
■ 「Social Media: For Your Business?」セミナー
■ 「世界を動かす米国発イノベーション − 市場の先を「創造」する力」セミナー
■ ANA、シアトル-成田路線にボーイング787型機(ドリームライナー)導入
■ シアトル美術館の日本・韓国美術担当に新アソシエイト・キュレーター着任
■ 第15回秋祭り、盛況のうちに閉幕
■ 東日本大震災による洋上漂流物処理 野田首相、「米国とカナダに合計600万ドルを供与」
■ ワ州日米協会 『Japan in the Schools』 ボランティア・ワークショップ
■ 熊本県知事一行歓迎会
■ 日本復興支援イベントに数百人が参加
■ Acucela 社の窪田良氏、『Entrepreneur of 2012』 ファイナリストに
■ 国際基督教大学生の松下さん、被災地復興支援に向け米西海岸を自転車で単独縦断
■ NPO 『Jolkona』、日本復興支援募金キャンペーンを展開
■ シアトル神戸姉妹都市提携55周年記念行事
■ ANA、シアトル-成田直行便を就航
■ ANA、シアトル-成田 新規就航記念式典開催
■ 日系人が強制収容所で作った家具や日用品の展示会 『Art Behind Barbed Wire』
■ バスケットボール・チーム 『Nippon Tornadoes』、IBL に参戦
■ 日系マナー、新しい庭園 『一期一会』 を公開
■ PNB 公演 『コッペリア』 中村かおりさんが初日に主演
■ 元シアトル留学生の沼越康則さん、英会話本シリーズを出版
■ Acucela 社の窪田良氏、AERA 誌 『現代の肖像』 に登場
■ ANA、今年7月にシアトル-成田 新規路線の運航開始
■ 第37回桜祭 盛況のうちに閉幕
■ 第15回 『Sakura-Con』 開催
■ ピアニストの Hiromi、ジャズ・アレーで演奏
■ 日本航空、ボーイング最新鋭機「787」の初号機受領
■ 菅原朋子さん、アジア美術館のレクチャー・コンサートで箜篌演奏
■ 「米国生活への適応術」「安全対策」セミナー
■ 東日本大震災から1年 - 追悼・復興支援イベントに参加者多数
■ 被災地へ楽器を 『Winds for Hope』
■ Peace Winds America 被災地活動報告
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【在シアトル日本国総領事館からのお知らせ】
■ 女性を狙う性的暴行・誘拐事件に対する注意喚起
■ ベルビュー市での領事出張サービス実施について
■ 国費留学生申請用紙を使用した不審な奨学案内に対する注意喚起
■ 日本文化紹介行事「お正月 in オリンピア」の開催について
■ 車上狙いに対する注意喚起
■ 冬の訪れへの準備について
■ 最近の日中関係の動きに係る注意喚起
■ 防犯対策:警察ホームページ活用の勧め 〜 5分でできる防犯対策の第一歩
■ シアトル市近郊において確認されている住宅強盗の手口に関する注意喚起
■ シアトル市内において多発するけん銃発砲事件に対する注意喚起
■ 百日咳(Whooping Cough)の流行に関する注意喚起
■ 安全情報
■ ワシントン州経済概況
■ 海外居住者のための国民年金加入に関する問い合わせ先
■ 厚生年金・健康保険に関する問い合わせ先
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■ 日本の運転免許証に係わる諸手続について
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