衆院代表質問:首相と距離、悩む公明 井上幹事長、改憲触れず
毎日新聞 2013年02月01日 東京朝刊
公明党の井上義久幹事長は31日の衆院本会議で、消費増税時の軽減税率導入など党の「持論」を展開したが、自民党と隔たりが大きい憲法や自衛隊法の改正には触れなかった。安倍晋三首相と日本維新の会は政策面で近く、将来的な連携がうわさされる中、与党の公明党は逆に首相との距離感に悩む構図になっている。
「10年間の連立政権を経て、共に野党を経験した。多様な民意を重く受け止める謙虚な姿勢を貫かねばならない」。井上氏が冒頭に力説したのは、自公両党の信頼関係だった。
外交・安全保障政策をめぐっては、タカ派色の強い首相と「平和の党」を自任する公明党との差は小さくない。首相は30日の衆院代表質問で、維新の平沼赳夫国会議員団代表の質問に、憲法改正の発議要件を定めた憲法96条改正に取り組む考えを表明したが、公明党は慎重な立場だ。
井上氏が憲法などへの言及を避けたことについて、党幹部は「元々、意見が違う問題にあえて触れる必要はない」と、与党内のぎくしゃくぶりを表面化させないためだと説明。党関係者は「質問をして逆に首相から検討すると言われたら、反論しないと支持者から猛反発を受ける」と苦しい胸の内を明かした。
先の衆院選で躍進した維新やみんなの党の存在も対応を難しくしている。公明党内には「首相は今は我慢しているが、参院選後は維新やみんなの党との連携に動きかねない」(幹部)との警戒感が強い。憲法問題で自公両党の溝が広がれば、維新やみんなとの距離感が縮まった印象を与えかねない。
井上氏は質問後、記者団に「特に他意はない。憲法96条の問題は国会の憲法調査会で議論を深めればいい」と説明した。公明側の懸念を感じたのか、首相は31日夜、山口那津男代表ら党幹部を公邸に招き、蜜月をアピールした。【福岡静哉】