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タカ派政策、自公に距離

 自民党が衆院選の公約に改憲による「国防軍」の保持や、政府が憲法解釈で禁じている集団的自衛権の行使容認を明記したことで、公明党との間にさざ波が立ち始めている。タカ派色の強い政策に「平和の党」を掲げる公明党が警戒感を示しているのだ。自公両党は、連立による政権奪還という青写真を描くが、政策面では距離が広がっている。

 自民党の安倍晋三総裁にとって、改憲と集団的自衛権の行使容認は首相在任中に積み残した思い入れの強い政策。ともに総裁就任前の政権公約原案に盛り込んだが、安倍氏が「できることしか書かない」と断言した衆院選公約にも入り、本気度の高さを示した。

 これに対し、公明党の山口那津男代表は二十二日、国防軍創設を「今の憲法を基本的に尊重したい。長年定着した自衛隊という名称を変える必要はない」とけん制。集団的自衛権行使も「今の憲法の下で認めることはできない、という政府の見解は妥当だ」と解釈変更に否定的な考えを強調した。

 自公関係にくさびを打ち込みたい民主党は早くも反応。野田佳彦首相は二十三日、川崎市で記者団に「安倍氏はできることを盛り込んだと言うが、公明党も含め理解されないのではないか。簡単にできるとは思えない」と自民党を批判した。

 安倍氏は二十三日、岐阜市での記者会見で、改憲の優先順位に関し、まずは改憲発議要件を衆参それぞれの三分の二以上から過半数に緩和する九六条に取り組むと説明。いきなり国防軍創設には動きださない姿勢を示すことで、公明党への配慮をみせると、山口氏も松山市で記者団に「党として独自の主張を掲げるのは当然だ」と自民党に一定の理解を示した。

 安倍、山口両氏は、他党に攻撃材料を与えるのは得策でないと判断し、歩み寄ったとみられるが、これから両党とも衆院選本番へ主張を強めていく。火種は消えそうもない。

(岩田仲弘)

 <自衛隊と国防軍> 日本国憲法9条は戦争放棄と戦力不保持、交戦権の否認を定めているが、自衛隊は「専守防衛」の理念の下で「自衛のための必要最小限度の実力組織」として位置付けられている。ただ、諸外国からは軍隊とみなされる。自民党は4月に発表した改憲案で自衛隊を国の独立を守る組織である「国防軍」に改組すると規定。次期衆院選政権公約では憲法に「平和主義を継承しつつ、自衛権の発動を妨げないこと、国防軍を保持することを明記」とした。