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着ぐるみに風船… “愛される”デモ行進が定着

2013.2.24 20:29更新

スタートした日の丸行進=大阪市内

 新しい「デモ」が芽生えている。政治団体や労働組合が参加者を動員して党派色を打ち出し、政府批判や主義・主張を声高に訴えるのが従来のスタイルだが、新しいデモはインターネットで参加を募り、硬いテーマでも“緩い雰囲気”が特徴。大阪で定着してきた「日の丸行進」もその一つだ。現場を取材すると、過激なシュプレヒコールなどはなく、「ありがとう」の連呼が響くユニークなデモだった。(細田裕也)

「わあ、かわいい!」と手を振る沿道の子供

 「祝祭日には日の丸を掲げましょう」「海上保安庁の皆さん、尖閣諸島巡視、ありがとうございます」

 17日の日曜日、大阪・御堂筋。カラフルな風船を絡ませた国旗を掲げる約70人が整然と練り歩いた。先頭付近にはピンクのウサギの着ぐるみ。「わあ、かわいい」。沿道の子供が笑顔で手を振った。

 何かのパレードに見えるが、開催趣旨は国旗の大切さを訴え、国民の命を守る自衛隊や警察官らに感謝の心を伝えるのが狙いだ。

 「沿道の人も気軽に加われる集いがいい。新しいデモの形を提示したい」。主催団体代表、石黒大圓(だいえん)さん(65)は語る。

 外国人参政権反対などを訴える多くのデモに参加してきた石黒さん。「日本からたたき出せ」。ときに飛び交う過激な掛け声に沿道の人々が目を背けるなど“拒否反応”を感じた。

 北朝鮮による拉致、中国が挑発を繰り返す沖縄・尖閣諸島の問題などを通じ、国民の間で愛国心が高まっているのは明白。だが、どうすれば一般の人に受け入れられるデモを演出できるか。熟慮の末、考案したのが日の丸行進だった。

「ありがとう」連呼、「ふるさと」を合唱

 イメージは五輪の入場行進。愛国心を訴えるテーマでありながら、家族連れの目を引くため着ぐるみを用意し、風船は革新系団体のデモからヒントを得た。外国人への排他的な掛け声を禁じ、感謝の言葉や「ふるさと」など日本の唱歌を歌いながら歩く形にした。

 平成23年6月からほぼ毎月1回のペースで開始。インターネットでも告知し、毎回100人前後の参加がある。今月17日で19回目。初回から参加する女性(51)は「行進では感謝の言葉も多く、私たちが穏やかな気持ちになれる珍しいデモ。参加しやすいし、活動のたびに沿道の反応も良くなっている」と話す。

 「思いは確実に広がっている」。石黒さんは国民運動と位置づけ、全国に波及させるのが目標という。

 従来のスタイルに縛られないデモは近年急増している。多くはネットで告知、幅広い層に参加を募る手法をとる。その代表が脱原発デモだ。家族連れやカップルも参加し、楽器を持ち込んだり踊ったりとイベント的な雰囲気すら漂う。

 こうしたデモが流行する背景について、新潟青陵大学大学院の碓井(うすい)真史教授(社会心理学)は「今の人は深い人間関係を避け、『緩やかなつながり』を求める傾向が強い。旧来型デモは息苦しさを感じるのだろう。それでも『意見を発信したい』という思いはあり、それを容易に実現できるのがイベント感覚のデモへの参加なのではないか」と分析している。

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