お父さんなら誰でも見たことのあるNHK・Eテレ(教育テレビ)の工作番組「つくってあそぼ」が、3月30日で終了する。1990年から23年間、熊の男の子「ゴロリ」とともに出演してきた「わくわくさん」ことタレント久保田雅人(51)は、あのテレビ時代劇「暴れん坊将軍」を26年演じた松平健(59)に次ぐ長い間、同じ役を演じ切った男だ。そんなわくわくさんが、はらはら、どきどきした“とっておき秘話”から、知られざる番組の“裏設定”まで語り尽くした。
「つくって――」に起用された久保田には運があった。当時、所属劇団の副座長、声優田中真弓(58)が、NHKの「おーい!はに丸」で仕事をしていた縁で、オーディションを紹介された。番組ディレクターは久保田だけを審査して「何人も見るのは面倒。1人目にしゃべらせたら面白かった」(久保田)として採用されたという。
それまでは「初めて映画に出たのはVシネマの死体役。しかもいっぱい死んでる中の一人」。そのため最初はNGを連発し、局の上層部から「下手だから降板させろ」との声が出たほどだった。わくわくさんならぬ、はらはらさんだった。
それでもスタッフが何とか上層部を説得。その後、23年間も続いたのだから分からないものだ。
今でこそ講演、工作ショーに引っ張りダコだが、当初は自ら幼稚園などに「ほぼノーギャラ」で売り込んだ。すべては前番組の「できるかな」のノッポさんに対抗するためだった。
「視聴者から『ノッポさんと違ってしゃべるから面白くない』『しゃべりすぎ』なんて投書がNHKに届いてた」
私生活も番組一色だ。起用された28歳のころは「知り合って半年で入籍したカミさんのおなかの中に長女がいて、所属してた事務所も辞めてわくわくさん一本に決めた。イチかバチかだった」。
これはもう「どきどきさん」という他ない。だが、ハラをくくって以後、同じキャラクターを演じ続けた。「わくわくさんの年齢はずっと20代後半だけど、今の俺は白髪も染めてるし、メガネも老眼鏡だよ」と笑う。
番組には“裏設定”があり「わくわくさんの本職は、世界で活躍するデザイナー。『今日はお仕事いいの?』というゴロリのセリフもあった。画面の後ろに映るわくわくさんの家は、ゴロリのお父さんが建てたバンガロー。ゴロリは大家の息子。でも23年間居候で家賃を払った記憶もない」。
ゴロリは相棒のような存在だが、私生活での付き合いは全くない。共演の新鮮味を損なわないためで「移動の飛行機は並んで座らない。新幹線の車両も別。仕事の用件以外にメールしない」。
出演中に3人の子供に恵まれ、長女は今年成人式を迎えた。「子供が幼稚園や小学校のときは、同級生のお母さんからサインを頼まれて全部書いた。担任の先生まで『自分の子供のために』なんて言ってきた。職権乱用(笑い)。でも、買ったマンションのローンは73歳まで。今度高校生になる息子に払わせようと思う」と笑わせる姿は円熟味さえある。
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