- 秋元 才加(あきもと・さやか)
- 1988年7月26日生まれ。千葉県出身。2006年4月よりAKB48のチームKメンバーとして活動。エキゾチックなルックスと、長身を生かしたダイナミックなダンスが人気を集める。07年には映画『伝染歌』に出演した他、AKB歌劇団『∞・Infinity』に参加(09年)。10年4月にはミュージカル『ミンキーモモ~鏡の国のプリンセス~』に単独で出演し、その演技力、表現力を高く評価された。
マライヤ・キャリーとか、クイーンといった洋楽が朝から晩まで流れているような家だったから、歌ったり踊ったりすることは小さいころから自然な遊びでした。特にマイケル・ジャクソンは特別なヒーローで、親の前で『スリラー』のダンスを自己流でコピーして盛り上がったりして。
オーディションを受け始めたのは中学生のころなんですが、なかなか受からず、部活も忙しかったので本格的な活動をすることはありませんでした。高校2年生になったとき、渋谷を歩いていて「AKB48オーディション」のチラシをもらったときも、ピンと来るものはなかったんです。当時、AKB48はチームAが秋葉原の「AKB48劇場」で活動を始めてはいたものの、テレビに出るようなメジャーな存在ではなかったし、私もアイドルに特別な興味を持っていたわけではありませんでしたから。
でも、ダメもとで応募したのがすべての始まり。それまで受けたオーディションでは、いろいろ対策を練って着るものにも気を遣ったりしましたが、このときは受かりたいという気持ちがそれほどなかったから普段着で行ったんです。秋元(康)さんに「なんでジャージなんですか?」って聞かれて、「受かるときは、何を着ていても受かると思うから」と答えたことを覚えています。だから、そのとき着ていたTシャツとジャージは、穴があいても捨てられないんです(笑)。
これが私にとって、大変な決断だと気づいたのは、「AKB48劇場」のステージに立つようになってから。最初のうち、新たに結成されたチームKを観てみようと、多くのお客さんが来てくれたんですが、その後、ガクッと減ってしまったんです。できるだけ多くのお客さんを呼びたいと、必死に努力する日々が始まりました。
自分なりのアイドル像に目覚めたのは、2回目に行ったチームKの『青春ガールズ』公演から。AKB48としても、初めてロック調の曲を手掛ける公演だったんですが、ここで評価されたことはすごい励みになりました。
それまでの私は、アイドルというからには、とにかくかわいくしてなきゃいけない、みたいに思っていたんですけど、ここでは部活で鍛えた割れた腹筋や、弾けた演技が役にたったんです(笑)。「かわいい」だけじゃなくて、「カッコいい」とか、いろいろなスタイルを持ったアイドルがいてもいいじゃないかということをお客さんに教えてもらったんですね。
AKB48は「劇場発のアイドル」ですから、目の前のお客さんを楽しませることをつねに求められます。劇場にお客さんが半分しか集まらないときは本当に落ち込んだし、逆に拍手や声援をもらったときはすごくうれしかった。振りを間違えたり、ガチガチに緊張してMCで固まったり、いろんな失敗もあったけど、お客さんに育てられた、鍛えられたという感じはありますね。
その後、映画『伝染歌』に大島(優子)と前田(敦子)とともに出演したときも、学ぶことは多かったです。共演した松田龍平さんは当時の私にとって、雲の上の存在に見えて緊張したけど、俳優にとって大切なものは何か、できる限り盗んでみようと思って目を皿のようにして観察していました。監督の原田眞人さんからも、カメラの前で演技をするときの気持ちの作り方、共演者とのコミュニケーションの取り方をみっちり教わりました。
ミュージカルに目覚めたのは、AKB歌劇団の一員として参加した『∞・Infinity』。AKB48では大勢で歌うけど、ミュージカルだとソロで歌うシーンがあるんです。責任が重い反面、それがすごく楽しかった。お客さんもクチコミでだんだんと増えていって、満員の千秋楽を迎えられたときは、本当にうれしかったです。
でもその後、『ミンキーモモ~鏡の国のプリンセス~』に起用されたときは大きなプレッシャーがありました。AKB48の仲間がいない外部出演だったので、私を知らないお客さんを相手にしなければなりませんでしたから。しかも、私が起用されたのは男性が演じるはずの敵役だったんですが、プロデューサーの竹澤(寿之)さんがAKB歌劇団の公演を観て、私を指名してくださったんです。
だから、終演後にお客さんのひとりから「あなたは『レ・ミゼラブル』の舞台に立つべき人よ」なんて声をかけられるほどの評価をいただいたのは、とてもうれしいことでした。同時に、これまで自己流の技術でやってきただけに、俳優としての基礎的な訓練をしなければいけないなと強く感じたりもしました。その後、AKB歌劇団の構成・台本・演出を手掛ける広井(王子)さんに『レ・ミゼラブル』に連れて行ってもらったんですが、帝国劇場の大きな舞台を前にして「このステージに立ちたい」と思っている自分に気づいたときは、ちょっとビックリしました。
今回の音楽劇『ACT泉鏡花』も、私には大きな挑戦です。アイドルの制服と違って、着物での演技はかなりハードルが高いし、男性に恋いこがれるシーンがあるのもAKB48のキャラと正反対だけにドキドキです。でも、それがやり甲斐でもあります。「しょせんアイドル」という目で見られることも多いけど、最後には「アイドルってすごい」と思われることが私の最大の喜びなんです。
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アトリエ・ダンカンプロデュース
音楽劇『ACT泉鏡花』~妖しのポップファンタジー~ 泉鏡花と芸者すゞの物語を縦軸に、鏡花の代表作「天守物語」、「海神別荘」、「湯島の境内」、「絵本の春」などの幻想の世界を、AKB48とスタジオライフが演じる音楽劇。木の実ナナ(芸者すゞ)と近藤正臣(泉鏡花)というふたりの名優と、アイドルユニットとして不動の人気を誇るAKB48、男優だけで構成された人気急上昇中のスタジオライフとの不思議な共鳴は、観る人にいまだかつて経験したことの感動を与えるに違いない!
東京公演 仙台公演 2010年10月1日(金)~10日(日) 2010年10月12日(火) 東京グローブ座 仙台電力ホール 名古屋公演 長崎公演 2010年10月15日(金) 2010年10月17日(日) 名古屋名鉄ホール 長崎市公会堂 京都公演 金沢公演 2010年10月20日(水) 2010年10月23日(土)~24日(日) 京都芸術劇場 春秋座 北國新聞赤羽ホール
取材・文/ボブ内藤 撮影/清水真帆呂(TFK)