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「引きこもり」するオトナたち
【第20回】 2010年5月20日
著者・コラム紹介バックナンバー
池上正樹 [ジャーナリスト]

成績優秀な人ほど要注意!
一度の失敗で“うつ”になるエリートたち

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 「そこで考えるのは、もっと勉強して上がっていこうではない。勉強を断念してしまう。さらに成績が下位のほうに下がってくると、今度は学校に登校できなくなるのです」

 一方で、学校時代をそのまま乗り切ったとしても、会社に就職してから、その葛藤が噴き出る人もいる。

 勝ち負けの世界の中で、常に相手がいて、自分が相対化されて、「あいつよりも優れているのかどうか」を常に意識せざるを得ない。

 「会社に行けば、叱られたり、業績を問われたりします。しかも、最近、企業の業績評価は、厳しくなってきていて、項目別に、仕事の達成度、目標設定、リーダーシップなどをチェックされ、査定の結果が出る。一旦、失敗し始めると、それまで満点近い評価を取り続けてきたような人が、次のトライアルを止めてしまって、ゼロになってしまう。勝ち負けの世界だけでしか生きられないから、自分が目標を達成できそうもないと思った時点で、あきらめてしまうのです」

 会社に入れば、結果を求められる。その中で、プロセスを大事にするとか、プロセスを評価する考え方が希薄になってきた。

 こうして企業は衰弱が起こってくる。しかし、経営者も、そのことに気づかずにいる。

 常に、結果を出し続けなければいけないという強迫観念のもとで育った青年たちが、結果を出せなくなると、自暴自棄になるか、引きこもるかしかない。

 いつ、引きこもる要因がはじけるのかは、早いか遅いかの違いがある。いずれにしても、初めて大きな挫折があったときに、問題が顕在化するという。

会社には行けないのに
海外旅行は行ける!?

 「管理職になる段階で、管理職になれずに、同期に後れをとって、撤退する人もいます。何の気力もなくなって、惰性で仕事しているから、評価はますます悪くなる。そのうち、会社へ行っても、面白くなくなり、眠れない。元気が出ない、といった症状が出る。どんどん否定的な方向へ行く。このタイプは、慢性のうつ症状を訴えるのですが、抗うつ薬を出しても効かないんですね」

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池上正樹 [ジャーナリスト]

1962年生まれ。大学卒業後、通信社の勤務を経て、フリーに。雑誌やネットメディアなどで、主に「心」や「街」をテーマに執筆。1997年から日本の「ひきこもり」現象を追いかけ始める。東日本大震災後は、被災地に入り、震災と「ひきこもり」の関係を調査。最新刊は『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)。他に『ドキュメント ひきこもり~「長期化」と「高年齢化」の実態~』(宝島社新書)、『ふたたび、ここから~東日本大震災、石巻の人たちの50日間~』(ポプラ社)など。


「引きこもり」するオトナたち

「会社に行けない」「働けない」――家に引きこもる大人たちが増加し続けている。彼らはなぜ「引きこもり」するようになってしまったのか。理由とそうさせた社会的背景、そして苦悩を追う。

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