写真提供/時事通信社
OECDが調査したデータに興味深いものがある。各国の“正社員”の「解雇の難しさ」だ。数字が大きいほど難しくなる指数だが、デンマーク1・20、イギリス1・40、アメリカ1・67に対して、日本は3・80と倍以上になっている。またOECDは、「日本はOECD諸国の中で実質的に最も解雇規制が厳しい国のひとつ」「正規雇用への保護が手厚すぎる」と指摘している。
景気が悪くなれば、非正規社員が大量解雇され、社会問題化したのが、この10年だった。だが、経営が悪化しても正規社員の大量解雇は耳にしない。一度、正規社員として採用されれば、よほどのことがない限り解雇はされないのが、日本企業の正規社員なのだ。なぜなら日本では、正規社員を解雇することは、極めて難しいからである。
なぜ難しいのか。解雇するには、企業にとってかなりハードルの高い4つの要件をクリアしなければならないからだ。これが「整理解雇の4要件」(左表参照)。戦後の様々な労働裁判の判例が次第にまとめられ、4つの要件に絞り込まれた。この要件を満たしていなければ、解雇しても裁判では負けてしまうのである。どうしてこんな厳しい要件があるのか。社会保険労務士の園田雅江さんはその背景を語る。
「日本の労働法は、労働者から搾取する使用者が多かった時代に、工場労働者を守る目的で整備されたんです。だから、基本的に労働者に極めてやさしい。労働者は弱い立場なので、その権利を守る形になっているんです」
さらに戦後、多くの労働争議が起こり、昭和30年代には解雇権を乱用できない方向性が確立した。解雇できないとなると、企業は採用に慎重にならざるを得ない。それが、解雇しにくい正規社員ではなく、解雇しやすい非正規雇用の増加につながった。
アメリカでは正規社員の解雇が容易な分、非正規雇用比率は主要国で最も低い。また、失業期間も短い。どちらがいいか、なかなか難しい問題なのである。
(上阪 徹)
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